ワニなつノート

Hideとyuくんの「事件」のこと(その4)

Hideとyuくんの「事件」のこと(その4)


前置きが長くなってしまいますが、yu君の記事を読んで、自分が「立ち止まり、考え始める記憶」をもう一つだけ記しておきます。

それは顔にあざのある人たちの言葉です。
藤井輝明さんは、『あなたは顔で差別しますか・・「容貌障害」と闘った五十年』という著書の中で、「容貌障害」という言葉を使われています。

『顔面漂流記』の著者、石井政之さんは、次のように書いています。

          

《「石井さんぐらいのアザなら、気にすることはないんじゃない?」
顔の全面ではなく右側だけにアザがあるせいか、人からそう言われることがある。
そのたび、じゃあ、アナタは右頬をマジックで赤く塗って、外出できますか?と聞き返したくなる。

……街を歩いていれば、子どもの手を引く母親は、すれ違いざまにこう言う。
「お父さんの言うことを聞かないと、ああなっちゃうのよ」と。
自転車に乗った女の子たちが、「私があの顔なら自殺しちゃ~う!」と大声で言いながら、私の前を通り過ぎていったこともあった。……》 

『ジロジロ見ないで』扶桑社

          


この本を読んでいるとき、私は自分の子ども時代を思い出していました。
顔に大きなアザのあることで、子どもの頃から「気持ち悪い」「バケモノ」といじめられ差別される体験を読みながら、私が近くにいたら、きっとこの人たちを傷つける側にいたに違いないと思いました。

そんな私でも、信じられない思いをしたのが、「見知らぬ人につばを吐きかけられる」という藤井輝明さんの話でした。

          

《ぼくが電車に乗って、椅子に座って本を読んでるときのことです。ふと、頭に何かがかかった気がしました。

手で触ってみると、ベタベタとした感触で、生温かく、すぐにそれが人のツバだと分かりました。

顔を上げると、つり革につかまっている中年の男の人がぼくをにらみつけていました。

男の人はぼくのほうを見下げたまま、チッと舌打ちをしたのです。
まるで「お前がそばにいて、不愉快だ」とでも言いたそうな顔をして。
その直後、電車のとびらが開き、男の人は降りていきました。

ぼくは怒ることもできず、ぼう然と男の人の後ろ姿を見ていました。

周りにいた人たちも見て見ぬふりといった様子で、仕方なくぼくはポケットからハンカチを取り出し、頭についたツバを何度もぬぐっていました。

 ぼくが人につばをかけられたのは、実はこのときだけではありません。
信じてもらえないかもしれませんが、たぶん100回ぐらいはあったと思います。
知らないうちに、背中にツバがベッタリついていたことも何度かありました。

相手はなぜか中年の男の人が多かったように思います。
いい大人が、人にツバをかける。
いったい、どんな気持ちがするのでしょうか。
ツバをかけられた人がどれだけ傷つくか、考えたこともないのでしょうか。
ぼくは、彼らに腹が立つというより、かわいそうな人たちに思えてなりません。》

『ジロジロ見ないで』扶桑社

          

私は子どもの頃から、外見や障害がある人への差別を、する側にいました。
子どもだった私は、偏見や差別や嫌悪感をたくさん持っていました。
いまも、自分が変わった、もう差別なんかしない人間になれたとは言えません。

でも、たくさんの子どもたちとつきあう中で、そして多くの当時者の人の声を聞かせてもらえたおかげで、自分が踏み止まる場所を確認することができました。

自分のやり方が間違っていようと、世間で通用しなくても、「この子の味方である」ことはどういうことかを、私は考えたいと思います。

(つづく)



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