ワニなつノート

Hideとyuくんの「事件」のこと(その7)

Hideとyuくんの「事件」のこと(その7)


yu君の件で、一番言いたかったことを書きます。
Kさんも、警察も、そのことを確認しないで、終わりにしています。
(少なくとも報告の中には書かれていません)
私の中でずっと引っかかったままなのは、そのことです。


     ◇


警察は初めから「追いかけた」ことを問題にしています。
だから、kさんも最初は、「中学生の女の子を10回くらい追いかけたことがあるか・・・と、警察の方に聞かれたまま」、yu君に尋ねています。

Yu 「追いかけた?…走ったことはあるけれど。」
k 「走ってる中学生の後ろを走ったの?」
yu 「…?俺が走って、中学生が走っているときもあった。でも走っていないときもある。」
k 「10回?」
yu 「…?(首をかしげて指を折って数えながら)…5回くらいかな?」
k 「中学生の女の子が追いかけられて怖かったって、警察に相談したんだって。なんで走ったの?」
yu 「…さあ?わからん。」
k 「yuが走っただけと思っても、恐いと思う人もいるということだからね」

    ◇     ◇     ◇

kさんは、この聞き方をしたことを、後から後悔しています。
《「警察の方から聞いたときは、「追いかけた」とは思わなかったのに、yuに聞くときは「中学生を追いかけた?」という聞き方をしたこと、警察の方の言葉、私の聞き方、yuの話したことが頭の中でグルグルと何度も巡り、その夜は寝られませんでした。》と。

だから、Kさんは、「追いかけた」という警察の「誤解」を解くために、必死だったのだと思います。Kさんの中では、「追いかけた」のではなく、ただ「走っただけ」であることを警察に分かってもらおうとします。

すると警察は、「…あれでしょ、中学生の子と少し遊びたかったってことでしょう?」と、また差別的な思い込みで決めつけます。
kさんは必死で抵抗します。
「それは全く違います。そんな認識で、息子を一緒には連れていけません。ちゃんと話しを聞いて理解をしてほしいと思います。」
「でも何度も来てもらうのは悪いので、一緒に…」
「10回でも100回でも、伺うのは構いません。とにかく話しを聞いてください。」

こうして、Kさんの努力の結果、「一定の理解をしていただけたようで」、警察はこう言います。

「今回のことは、意図的に追いかけたのではないことはわかりました。そのことを文書にして出してもらえますか? それで終わりになります。書き方は、わからなければ手本を書きますのでそれを見てください。yuくんにもここに来てもらって書いてほしいのですが来れますか?」

 こうして、yu君は、警察に行きます。
でも、やっぱり警察の人が、全く理解などしていないのは、次の言葉から分かります。

「yuくん、わざとじゃないことはわかったから、今度からちょっと気を付けてね。」
県警本部の方が親しげに話しかけ、yuは「はい」と返事をしていました。

私は思います。
Yu君は、何に気をつければいいんだろう? 
そもそも、なんで警察に行かなければいけなかったのか。


何より、kさんも警察も、一番肝心なことをyu君に確かめていません。
もし、私がyu君に聞くとしたら、まずは通勤途中に「顔見知りの女の子がいるかどうか」「好きな女の子がいるかどうか」ということです。若い男の子なんだから、そのことを確認するのはごくふつうのことだと思うのです。

「走ったかどうか」は、ただの現象です。
Yu君の妹が言うように、走って駅に向かうことは珍しいことでもなんでもありません。
「お兄ちゃん、よく走っているよ。…駅までの道を走っているのを時々見かけたよ。マンションの前からでも走って行くときもあるよ。」
「お兄ちゃんにはいつものことなんだよ。」

だから、確かめなければいけないのは、yu君がその中学生の女の子を知っているかどうか、ということです。
yu君の中で、自分が「走った時」に、同じように「走っていた」中学生が、本当にその女の子一人と特定できているのだろうか。
登校している中学生はほかにもたくさんいるんじゃないか。

もしもyu君が、その子の顔も存在もまったく意識していないのだとしたら、本当にただの「いいがかり」です。その中学生の方が、意識過剰か、yu君の外見から差別しているのかもしれません。

でも、もしもyu君が、その子に好意を持っていたり、意識しているのだとしたら、中学生が警戒心を持つのは自然なことです。

どちらにしろ、「走ったかどうか」、「追いかけたのではなく、ただ走っただけ」という話は、意味のないことに、私には思えます。

そして、警察もkさんも、yu君をそういうことがあってもおかしくはない、年頃の男性、だという発想も対応もないことが、私には気になります。

もしかしたら、yu君がその中学生の女の子の顔も思い浮かばないでいるのだとしたら、「追いかけたという気持ちはないようですが、自分が走った時に中学生も走っていた。…でもそれが怖がらせたのなら、申し訳なかったと思います」と、親が謝るのもなんだかおかしなことです。

そして、警察が「yuくん、わざとじゃないことはわかったから、今度からちょっと気を付けてね。」というのも、まったく意味がないことになります。

yu君にとっての、駅までの通勤途中の人の流れの中の複数いるはずの中学生のイメージと、yu君を怖い人と訴えた一人の中学生との関係を、誰もきちんと聞いていないように思うのです。

もしも、yu君がその女の子に好意を持っていて、その子が走るときに、つい走ってしまったということがあっても不思議なことではありません。
その場合には、「走るな、ちょっと気を付けて」という話ではなく、yu君の気持ちと相手の気持ちを含めて、丁寧に話をしなければいけないはずです。

今回の警察のyu君への対応を読んでいると、yu君が駅までの道を歩くとき、なんにも考えず、なんにも感じず、意味もなく走ったり、歩いたりする「障害」があるようだから、「気をつけて」と言っているだけのような気がします。


kさんが警察に理解してもらうとしたら、「追いかけたのではなく、ただ走った」ということよりは、yu君が今まで、どんなふうに小学校、中学校、浪人、高校、そして今、どんな生活をし、どんな人間関係を生きてきたか、友だちや先生や職場の人と、どんなふうに関係を築いているのか、野球が好きで、ドラゴンズが好きで、いま自立生活に向かって戸惑いながらも一歩一歩がんばっていること。
そうして二十数年暮らしてきたこの地域で、近所の中学生から、「怖い」と訴えられたことを、中学生の目線からだけでなく、yu君の目線で聞き、yu君の気持ちを聞いてもらうことだと思います。

こうして、言葉でいうことは簡単です。
現実には簡単なことではないと、わたしにも分かります。

でも、kさんは、いままでそれをやってきたのだと、私は思っています。
小学校でも、中学校でも、そして浪人しながら高校を目指す時にも、一番大切にしてきたのは、yu君の内面からの思いだったはずです。
「追いかけたのか、走ったのか」、そんなことは、入試で「点が取れるか、取れないか」だけを問題にすることと同じレベルの話です。

私は、警察や学校に、この子たちを「理解してもらう」話をする前に、子どもの立場・子どもが生活している目線での実感を理解することを、忘れないようにしたいと思います。

コメント一覧

kawa
yoさん、(その7)ありがとうございました。
初日の夜、走った中学生の女の子を知っているのか聞きました。
「・・・中学生はいたけど、走る子も走らない子もいた」
また、女の子だけの後ろを走ったかとも聞いてみましたが
「そうでもない」
ただ走った子がいたのがyuが数えて5回くらいというような答えでした。
「特定の子」としては、認識していないように取れました。
なので「この中学生に好意があるか」というところには、発想がいきませんでした。

今回yoさんから指摘を受けて、改めてyuに聞いて見ました。
「事件」として「中学生の女の子」と覚えていましたが、
「走っていた中学生の子のことが好きだったのか」は、
しばらく考えて首をひねって「違うと思う」
好意をもっていたとは思えませんでした。

yuは高校のときに担任が「たぶん、クラスの子で好きな子がいる」と話してくれたことがありました。
担任からの話しでは、そっと見ているだけだったようでした。
ジョブトレーニングセンターに通っている時、最後の方で女の子と地下鉄の駅まで
いつも一緒に帰っていたようで、それもうれしそうでした。

yuの中で「好き」という気持ちは自分でもわかると思います。
だから、今回中学生の女の子を特に意識していたという感じではなかったように思います。

多くの時間をさいて取り上げていただき、ありがとうございました。
そして多く学ぶことができました。
改めて「無条件で子どもの側にたつ」
心したいと思います。
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