テーマⅡ
「普通学級に当たり前に居続けるために知っておきたい大切なこと」
(あるいは普通学級を手放さないために知っておきたい大切なこと)
《不確実性への耐性》
不確実性への耐性は、障害児の発達過程を考えたり、評価判定をしたりというやり方はとは、ちょうど正反対の考え方に立脚しています。
ふつう学級という所は、その始まりから、障害児を差別し、排除してきました。
長い間、就学猶予という制度により、自宅や施設に閉じ込められた子どもが何万人もいました。障害児の義務教育が当たり前になったのは、1979年です。
養護学校を断って、子どもと親が「障害があっても地域の子どもたちと一緒に生きたい」と、はっきりと言葉にしはじめて、まだ一世代しかたっていないのです。
そのため、ふつう学級で共に過ごすことが、子どものどんな将来につながっているのかが、まだはっきりとは見えません。いまも、未来も、あいまいさのなかにあります。だから、親はそのたくさんのあいまいさと格闘しなければなりません。
それを可能にするのは対話です。子どものつまづきや、先生の無理解によって生じる不安や恐れを受け止め、かかえていくためには、親ひとりで抱えるには重すぎます。
安心というものは、まず話に耳をかたむけあう、仲間がそこにいること、で初めて確保されるものです。
親の子もそれは同じです。同じを、体感することが必要なのです。
ふつう学級において、「不確実性への耐性」を支えている要素は、何度もミーティングをすることと、対話の質を高めることです。
家族が危機のなかで孤立していると感じないように、おしゃべりできる集まりが継続していることです。
不確実性というものは、ふつう学級にいることが、子どもも親自身も、安全なものと感じられる場合にのみ耐えられるものです。
自らの不安やもやもやした体験をうまく言い表せずにいた親にとって、仲間たちの間で当たり前に行きかっている、不安を表す言葉、それをもたらす「差別」の巧妙なそして膨大なやり口、それが手品のタネのように、目の前にさらけだされるとき、自分自身の体験を、自分の不安の正体を、自分の言葉で話すことができるようになります。
子どもにとっても、親がこうして自分の主体を取り戻しながら、「みんなと一緒の自分の居場所」を守り続けてくれることを、確かに感じていきます。
そうして、子ども自身のなかにも、ふつう学級でこそ育つ本当の自信が育っていくのです。
「答え」はふつう学級か、支援学級か、どちらかにある、というものではありません。どこかの専門家が答えを持っているのでもありません。
「答え」は、子ども自身が人生の主人公になって、人と出会い、歩んでいく、そのさきにあるものです。
親があいまいさに耐えていく先にあるものともいえます。
数は少なくても、先人の歩んだ道が確かにあります。
障害に焦点を当てるのではなく、子どもに焦点をあて、子どもの気持ちを一番に考える親はたくさんいます。
親自身がその仲間と一緒に歩いて行く道が子どもたちの道と重なるときに、「分けない」社会があらわれてきます。
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