ワニなつノート

一月の集会の準備(その8)


《生徒の言葉》(1)



二日続けて校長の文書を紹介しましたが、やはり公的な文書では高校の雰囲気までは伝わらない気がします。

なので、当時の生徒の言葉を探してみました。


            ◇


【私が生きてきたこの十九年間のうち、かかさず聞いてきた「声」はない。いつもどこかで、切れてしまう。たった一年間でもいい、毎日、同じ「声」の中で生活してみたい。………
父の声、最後に聞いたのはもう三年前になる。でも、忘れられない声がある。熊本弁なまりの「いつでも戻ってこい」。
この声は、まだ忘れられない。他の「声」はとうに忘れているのに、何故か、忘れられない。………】



            ◇


【母親の手がすごく好きだった。白くて冷たくて、でもやわらかい。冬はカサカサしてるけど、その手が好きだった。そんな母の手をもう五年も見ていない。
母がいなくなって自炊するようになって気づいた。いつのまにかその母の手に似てきているのだ。トモダチは「主婦の手」と笑うけれど、私はじまんしたいくらいだった。だって、自分の大尊敬している母親の手に似てきてるってことはとてもうれしいことだから。
そこで私は思った。自分が母親となった時に、自分の子供がこの手を好きになってくれたらいいな…と。私は言いそびれてしまったけど。いつか自分の子供が、白くて冷たくて、でもやわらかいその手が好きと言ってくれたら…幸せかな。………】



            ◇


【私が今このA高校に通っている理由は、まず一番に部活に入っているから。私にとってバレーボールはすごくすごく大切な大好きな事だから、学校にも楽しく通えると思います。
理由の二番目は、この学校の先生や友達がとてもシンセツでおもしろい。先生は生徒と同じ立場になっていっしょうけんめい考えてくれるし、友達はしんらいできる友達ばかりで、今の学校生活はとってもとってもジュージツしてます。
私はこの高校に入って本当に本当に良かったと思っています。4年と言わず「もっとこの高校で楽しみたいなーぁ」なんて思っています。………】



            ◇


【私は実はイジメられてました。って言ったら先生は「嘘だ~」って言うと思うけど本当です。小2~中3まで、イジメを受けてました。だからあんまり話したくないから、良かった出来事だけ書くね。小学校時代はあんまりいい思い出はなかったけど唯一良い思い出だったのは、小6の時かな。その時はイジメてた男の子とクラスが別になって少し楽な時期だったから………】


            ◇


【この学校で5年間近い年月をすごしてきました。この間に、「人間の価値」「生きてゆくこと」をたびたび考えることがありました。
特に先生の現代文の授業ではそれを強く感じました。体に障害のある人、常に死に向き合っている人などの話は、僕自身が、自分の生き方と比べたり、あるいは今の社会のことについて考えたりと、大きな影響を受けたように思います。
もうすぐこの学校を卒業しますが、世の中のこと、自分の知らない所で必死に生きている人達のことを勉強していきたいと思います。………】



            ◇


【死について、私はいろいろ考えたことがあります。それは私が小学生の時、若年性糖尿病だということを、医師から告げられてからでした。一生治らないと、はっきりと面と向かって言われてから、私は二週間、誰とも口をきかずに過ごしながら、病院の屋上へ行っては、ここから飛び降りたら楽になれるんじゃないかと、子供ながらに泣きながら考えたことがあるのです。(中略)
病気への偏見が完全になくなったのは、この学校に入ってからだったと思います。………】



             ◇



生徒たちの声のほんの一部ですが、あの高校には、いろんな生徒がいたのだと、改めて思います。

15歳からの数年間、一人ひとりが、いろんな思いを抱きながら、自分の生き方そのものを学び、体験しているのだったと思います。

あの学校の一番の良さは、先生たちが、子どもを誰も見捨てないところ、生徒の手を放さないことでした。

生徒の言葉を読みながら、私にとっても、その学校にいた時間がとても幸せな時間だったことを思い出しました。


ついでに、こんな言葉も。


【先生と出会えて2年がたちます。陽ちゃんの授業はいつも楽しみにしています。だから、陽ちゃん、私たちが卒業するまでいて下さい。陽ちゃんの授業は私に勇気をくれる授業でした。一年間、いや二年間ありがとうございました。陽ちゃんと授業やれてよかった。またいつか私に勇気を下さい。………】


今まで気に留めてこなかったけれど、この「勇気をくれる授業」っていったい何だろう?

ゆうきをくれるじゅぎょう。
ぜんぜん見当もつかない。

この言葉の意味も、1月の集会まで考えてみようとおもう。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「誰かのまなざしを通して人をみること」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事