大人たちが「王様」を立派だと信じていたら、
そして、小さな子どもの言うことなど
取るに足らないと思っていたら、
子どもは本心を話したりしません。
自分の言うことを、まともに聞いてくれる
親がいない子どもにとって、
自分の見たまま、感じたままを生きることは、
時に「親の愛を失うこと」につながるからです。
「王様は何もきていらっしゃらない」と
最初につぶやいたのは、小さな子どもでした。
養護学校や特殊学級ではなく、
普通学級で、
「みんなといっしょがいい」と、
最初につぶやいたのは、誰だったでしょう。
それが、「子ども」だったのは確かなことです。
そして、「障害のあるふつうの子ども」と、
最初に「ともだち」として出会うのは、
いつも小さな子どもたちでした。
「ぼくもがっこうにいきたい」という車いすの子ども。
「おばちゃんはこなくていいよ。
ぼくが車いすをおしてあげるから」という子ども。
二人の子どもは、「王様は何もきていらっしゃらない」と
つぶやくことを、許された子どもでした。
そうした「子どもたち」は、
ずっと昔からたくさんいました。
でも、その小さな声を
ちゃんと受け止めることのできる大人が
あまりに少なかったのです。
子どもたちの目の前からはいつも、
「障害のあるふつうの子ども」は消えてしまいました。
やがて、子どもたちは、
「障害のあるふつうの子ども」なんて、
初めからいなかったんだと思うようになります。
「もともと、住む世界が違ったんだ。
特別な子には、特別な子たちだけで
幸せになる特別な場所があるんだ。」
そんな、大人の常識にそまりながら、
その子どもも大人になっていくのです。
それが私たちでした。
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