ワニなつノート

『やっちゃんがいく!』と『こだわりの溶ける時間』(1)




はじめは「やっちゃん」の予定ではなかった。

編集の人から「女の子を」という話を聞いたときは、Nちゃんがいいなと思った。
Nちゃんなら、ぜったいかわいい写真絵本になると思った。

ところが3月の定例会は、Nちゃんがお休みで、
その代わりに好き放題してたのがやっちゃんだった。
それで、「あの男の子も、かわいいね」という話になった…。

「写真絵本」を作るのに、
「自閉症」という分類とタイトルはやはり気になった。

でも、「障害児」が紹介される場所が、養護学校や特殊学級ではなく、
普通学級に当たり前にいる姿を伝えるチャンスだからと思うことにした。

で、本の表紙には『自閉症』という文字がある。
やっちゃんにすれば不本意だろうなと思う。
ただ、少なくとも本文のどこにも『自閉症』という言葉は使わなかった。


取材が始まってから約半年の間、
やっちゃん本人が読んでOKなものを作りたいと思っていた。

また、Yさんからも、
「今までKと一緒に読みたいと思う自閉症の本はなかった。
Kと読める「自閉症」の本がほしい。弟も一緒に読める本がいい」
とプレッシャーをかけられた。

それを聞いたやっちゃんママも、
「そうね、やっちゃんと一緒に読めるもの、
妹とも一緒に読めるものがいいわね」と、プレッシャーを増やした。 

もし、そういう本ができれば、
その本を手にしてくれる子どもたちにも
きっと大事なものが伝わるような気がした。

できあがった本を、やっちゃんも妹も楽しんでくれた。

Kちゃんも、やっちゃんのいたずらやテストの落書きをみて、
「どうしてこんなことするんですか」と楽しんでくれた。

Kちゃんが、やっちゃんの本を読んであきれている様子を聞いて、
ふとコピーが浮かんだ。
「《自閉症の大人》もあきれる、《自閉症の子ども》の絵本」

「自閉症」などという「分類」が、一緒に絵本を読んで楽しむ場面では、
何の意味もないと改めて思う。

大人になったKちゃんが、
やっちゃんという面白い男の子の絵本を読んで楽しんでくれただけなのだ。
そんなことが、子どもたちに伝わるとうれしい。


本当は、本を作り始めることを考えた当初から、
絵本の最後のページにはやっちゃんと妹の寝顔が欲しいと思っていた。
でも、学校生活を中心にページを進めたので、その場面はなくなった。

確かに、学校生活と直接はつながらないし…と思ってあきらめたのだが、
校正が出来上がるころ、北村小夜さんと電話で話しているときに、
「それも大事な生活の一部だよね」と言ってもらって、とてもうれしかった。

そう、解説が石川先生になったのも、幸運な偶然だった。
せっかく「自閉症のやっちゃん」ではなく、
ただの小学校3年生の男の子のやっちゃんを描いても、
解説でやっちゃんをお決まりの「自閉症」にされたら、
せっかくの苦労が水の泡になる。

私が、「石川先生だといいんだけどなぁ」と話したところ、
うまく話がまとまった。

北村小夜さんと石川憲彦さんと一緒に絵本が創れるなんて、
かなりぜいたくな夢のひとつがかなったことになる。
やっちゃんに感謝しなくちゃ。

やっちゃんの本を作りながら、3年生のやっちゃんと、
就職したKちゃんのことを同時に考えることが多くなった。

Kちゃんが3年生の時には、
今のKちゃんのイメージはまったく持てなかった。
将来ちゃんと就職して、働いている「やっちゃん」も、
いまは全くイメージできない。
でも、そういう形も十分にあるかもしれない。

そんなことを思っているときに、ふと、
「こだわりの溶ける時間」という言葉が浮かんだ。



コメント一覧

やすハハ
なつかし~ですね。あの頃は、まだあどけない顔だったのに...(=^・^=)
今は坊主で男らしくなりましたよ~(*^_^*)
妹があの当時のお兄ちゃんの学年になりました。最近、「うちのお兄ちゃんってショウガイなの~」って聞かれました(>_<)
今頃、何いってんの!!って感じですうう(・。・;
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