事件があったのが5月2日。
Hideのいる『自立生活センター』というところはおかしなところで、そのヘルパーを一日も謹慎させることも、処分することもなく、そのまま働かせ続けました。
事故の数日後には、事業所の理事長自らが、そのヘルパーがいなくなると自分の生活が困るのでこのまま雇用を継続したいと、被害者であるhideの親に電話してきました。
結局、「事故報告」を受けた市の指導で、当のヘルパーは5月末で退職しましたが、虐待事故を起こしたヘルパーへの処分は、今のところ「不明」です。
5月末に開かれた自立センターの総会では、「事故を起こしたAさんは、hideさんの父親のように接していたいい人だった」という説明が、hideのお母さんの前でなされたそうです。
事件後、きちんとした調査とこうした虐待への事業所としての評価、今後の対応策をきちんとまとめて、hideと保護者への謝罪を求めていますが、いまだに「謝罪」はありません。
Hideときちんとつきあってくれる人もいるのでしょうが、事業所としてのあまりの誠意のなさに、疲れています。
しかも、話のなかでは、一方的に箒の柄で殴られ、背中にも手の甲にもあざや傷を負ったhideの話ではなく、「たたく」「つねる」という「問題行動」がある「障害者」に対してヘルパーがどうつきあえばいいのか、という話しになってしまいます。
こういう時、思い出す「障害者」の本はあまりなく、「認知症」に関する本を思い出します。
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【認知症の「困った!」にどう対応すればいいの?】
年齢を問わず誰でも、知力が衰えてくると楽しく気ままな生活をすることがとても難しくなります。世界は以前よりもおそろしい場所のように思えます。まわりの人も自分のことを理解してくれずに離れていき、誰なのかすらもわからなくなっていきます。
ですから、混乱した人はときにすごく不安になるので、安心し、支えてもらうことを強く求めるのです。
また彼らは失敗するとすぐにくじけてしまいます。お年寄りは、これらの困難に加えて、その年齢層に共通する病気や障害も抱えているので、生きていくうえでのあらゆる問題によって打ちのめされてしまうことは想像に難くないでしょう。
混乱した人の行動が介護する側にとって問題になっているときは、このことを心に留めて対応してください。彼らの行動がどんなに不都合で面倒でも、理解しようとしてください。彼らの直面している喪失や障害を抱えて生きるとしたら、うまくやっていける人なんているでしょうか?
もう一つ、考えてほしいことがあります。単に「彼ら」が問題で、「わたしたち」が解決策なのではなく、実際にはわたしたちの想像力や思いやり、やさしさ、注意が足りないために、「わたしたち」も問題の一部であることが往々にしてあるのです。
ですから、問題が起きたときは、「彼ら」が引き起こしたものではなく、わたしたち皆が共有するものだと捉えるようにしてみましょう。
◆それは本当に問題なのでしょうか?どれくらいの頻度で起きていますか?
◆どうしてそれが問題なのですか?
◆誰にとって問題なのですか?わたしたち介護者が変化や適応、受け入れを拒むことで問題にしたのではありませんか?
◆「問題行動」をする人は、わたしたちに何かを伝えようとしているのでしょうか?
◆どうすればその人の生活の質を高めるような方法でこの問題を解決できるでしょうか?
介護者がこの5つの質問に答えていくだけで、「問題」は消えてなくなってしまうものです。
『認知症介護のために知っておきたい大切なこと』
トム・キッドウッド著 筒井書房1500円



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