県民の信頼を損ないかねない憂慮すべき事態《3》
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千葉県は、全国初の「千葉県不登校児童生徒の教育機会の確保を支援する条例」を作り、高校の「医療的ケアガイドライン」も作っている。支援員や加配教員だけでなく、看護師派遣の体制も作った上で、「定員内不合格は県民の信頼を損ないかねない憂慮すべき事態」だと、毎年繰り返し「通知」している。
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さらに今年は、「募集人員に満たない県立高等学校のみに適用」される「入学者選抜における専門家委員への意見聴取制度」を作った。
その上で、「学ぶ意欲のある生徒の学びの場を確保する観点から、学ぶ意欲があると判断できる受検者を定員内不合格とすることのないよう」に通知している。
校長の「基準」に達しているかでなく、「学ぶ意欲のある生徒の学びの場を確保する観点」から、「学ぶ意欲があるかどうか」を判断するように求めたのだ。
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校長の「基準」に、中学卒業時点ではまだ達していない場合でも、子どもの「学ぶ意欲」を尊重し、「教育の機会を保障をしていこう」という、千葉県の基本的な姿勢を表している。
しかし、「基準に達しない」と見捨てた、その子の15年の人生にどんな困難や苦労があったか、高校の校長は知ろうともしない。
だが、校長が見捨てた子どもも、千葉県に生まれ、地域に見守られ、市町村立小中学校で大切に育てられた、ひとりの人格をもった子どもなのだ。
その証拠に、千葉市の教育委員会の人は、「市で9年間、大切に育てた子どもに、県はなんてことをしてくれるんだ」と憤ってくれた。その言葉が、定員内不合格にされた被害者である子どもと両親をどれほど勇気づけたことか。
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子どもの貧困防止法が作られ、虐待された子どもや、ヤングケアラーなど、社会が今まで見落としてきた「より多くのケア・サポート・調整」が必要な子ども・若者への支援が語られる時代にも、高校だけが、頑なに「適格者主義」を維持しようとする。
文部科学大臣が、「障害を理由にした定員内不合格はあってはならない」といい、県教育委員会が「県民の信頼を損ないかねない憂慮すべき事態」だと何年も重ねて通知しているのに、聞く耳を持たない。
その頑なな姿勢は、たとえばセクハラやパワハラを指摘されても「何が問題になっているのか」に気づけない人と同じで、哀れな姿でもある。
そんな校長に、「あなたの基準」ではなく、「子どもの人権」の問題なのだということが理解できる日が来るだろうか。
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【写真:仲村伊織】