ワニなつノート

先週の相談会の感想と、来週の相談会のためのメモ

あれもできない、これもできないと、
この子のできなさを数える前に、
親のできることを数えたい。

生まれてたった数年の小さな人の、
できなさ未熟さを嘆くよりは、
まるごとこの子を受けとめたい。

あれもできない、これもできないと言うけれど、
いま・ここに・いる、ことができる。
ここに・ともに・いる、ことができる。
なにより、そのことを喜びたい。

個の能力を何とかしてあげようとする前に、
いま・ここ・での「関係の肯定」という土台をしっかり築きたい。

親の本心は、こっちに近いように思う。


でも「障害」や「医療」「療育」の言葉は、できなさを数える。比べる。
未熟さを際立たせる。
遅れを、「取り戻す」ものと思わせる。

ゆっくり、その子のいのちが拓いている
と、親と喜びを分かちあおうとはしない。


多動で落ち着きがない、指示が入らない、
聴覚処理に問題がある、などという。

見るもの聞くものが初めてで、好奇心いっぱいで、
自分の興味を抑えきれない活発な子ども、とはいわない。

「問題行動」が、誰にとっての「問題」なのか。
「困った行動」で、誰がどんなふうに「困っている」のか。
ていねいに話されることはない。
「障害児の問題行動」という単語で終わり。

その先に、「分からない授業はかわいそう」、
「マイナスの経験だけを重ねないように」、
「自己肯定感が育ちません」
「二次障害が心配ですから…」
と、業界の言葉が、親を不安にさせる。


「問題行動」と言われることのほとんどは、
子どもが社会に適応しようとがんばっている姿だ。

親や先生に対して、「問題行動」をしているのではなく、
子どもは、自分の課題を伝えている。

「問題行動」というよりは、「適応行動」と見る方が課題がみえる。
「問題行動」というよりは、「課題提供」と捉えたほうが、子どもと話せる。


問題は…、いや課題は、できない体験、失敗する体験をして、落ち込んだり傷ついてしまう、ことではない。
失敗体験をさせないように、「分けて・その子のできるテストで100点を取らせてあげることを、「成功体験」とよんでごまかすことでもない。

課題は、そうした「目に見える」カタチの種類の話ではない。


子どもが、ある体験を、誰といっしょに体験したか。
どのような大人や仲間と体験したか。
自分一人の体験と、大人や仲間との関係の中での体験と、
その兼ね合いのなかで、どのような「感情体験」として味わい、受け止めるか。

「わたしの体験」と、「わたしたちの体験」が、同時にある、体験をすること。

そこでは、関係の肯定から生じる自己存在肯定感、
生きる喜び、共にある喜びを体験することが、「できる」。

「できる」「できない」とは、個人の能力だけで、人生体験としてあるのではない。

むしろ、関係は、できるできない、以上に、感情体験に影響を与える。

もしもイチローが、アフリカや北欧の野球のない国に生まれていたら、
「野球ができる」能力は、誰も認めてはくれない。
そして、いまほどの「生きる喜び」を彼に与えてはくれない。

野球を愛する人たちとの関係の中でこそ、その能力と魅力は「肯定」され、イチローの「自己肯定感」の豊かさにつながる。

「できる・できない」こと以上に、どのように感情を味わうか、
その「関係の肯定」こそが、生きる喜びにつながる。



就学・相談とは、どうしたらこの子に文字を覚えさせることができるか、どうしたらこの子に数を理解させられるか、を問われているんじゃない。

この子を、この子の存在を、この子の現在を、
肯定してくれる・学校はどこですか?

障害を否定したうえで、克服しようというのではなく、
この子をまるごと「肯定」しながら、
この子の成長に寄り添い育ててくれる「関係の肯定」はどこにありますか?

その「関係の肯定」の先にある、
この子の「生きる喜び」につながる「教育」のために、
親ができることは何ですか?

そんなふうに、問われているような気がする。

コメント一覧

小西千尋
ご返信をありがとうございます!
「シェアしてくれてありがとう」と言ってくれた方もいます
。一人でも何か感じていただけたら嬉しいです。
本当にありがとうございました!
yo
小西さま。
はじめまして。

このブログの私の書いたものは、自由に使ってください。
ここにあるのは、わたしの言葉であるよりは、
わたしが、子どもたちに託されたことばであるようにと、願いながら綴っているものです。

北村小夜さんや石川憲彦さんの言葉もいっぱいパクってますし…。

ことばのない子どもの思いが、わたしの翻訳で、少しでも、その言葉を探している子どもに届いたら、これ以上幸せなことはないです。
小西千尋
はじめまして。2年ほど拝見させていただいております。3
年前まで16年間、北海道の公立高校の養護教諭をしており、
最後の7年は定時制高校に勤務しておりました。
40歳で退職後すぐに特別支援学校一年、現在は中学校の特
別支援学級でお手伝いさせていただいて二年目のものです。

ワニなつノートさんを読んで欲しいと時々勝手にFacebookや
Blogなどでシェアさせていただいたりしていました。大変申
し訳ございません。
10/2の記事もたくさんの方に読んでもらいたい!と思ったの
ですが、急に了解を得てからと思い、コメントさせていただ
きました。
今更ながらシェアさせていただいて構わないでしょうか。お
忙しいと思いますので、ダメですというご返信がなければそ
うさせていただきます。

私の目の前のあの子の存在がなんとも尊く、一緒がいいねっ
て本当に思います。いつもありがとうございます。これからも
拝読させていただきます。
失礼いたします。
小西千尋
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