この子のできなさを数える前に、
親のできることを数えたい。
生まれてたった数年の小さな人の、
できなさ未熟さを嘆くよりは、
まるごとこの子を受けとめたい。
あれもできない、これもできないと言うけれど、
いま・ここに・いる、ことができる。
ここに・ともに・いる、ことができる。
なにより、そのことを喜びたい。
個の能力を何とかしてあげようとする前に、
いま・ここ・での「関係の肯定」という土台をしっかり築きたい。
親の本心は、こっちに近いように思う。
でも「障害」や「医療」「療育」の言葉は、できなさを数える。比べる。
未熟さを際立たせる。
遅れを、「取り戻す」ものと思わせる。
ゆっくり、その子のいのちが拓いている
と、親と喜びを分かちあおうとはしない。
多動で落ち着きがない、指示が入らない、
聴覚処理に問題がある、などという。
見るもの聞くものが初めてで、好奇心いっぱいで、
自分の興味を抑えきれない活発な子ども、とはいわない。
「問題行動」が、誰にとっての「問題」なのか。
「困った行動」で、誰がどんなふうに「困っている」のか。
ていねいに話されることはない。
「障害児の問題行動」という単語で終わり。
その先に、「分からない授業はかわいそう」、
「マイナスの経験だけを重ねないように」、
「自己肯定感が育ちません」
「二次障害が心配ですから…」
と、業界の言葉が、親を不安にさせる。
「問題行動」と言われることのほとんどは、
子どもが社会に適応しようとがんばっている姿だ。
親や先生に対して、「問題行動」をしているのではなく、
子どもは、自分の課題を伝えている。
「問題行動」というよりは、「適応行動」と見る方が課題がみえる。
「問題行動」というよりは、「課題提供」と捉えたほうが、子どもと話せる。
問題は…、いや課題は、できない体験、失敗する体験をして、落ち込んだり傷ついてしまう、ことではない。
失敗体験をさせないように、「分けて・その子のできるテストで100点を取らせてあげることを、「成功体験」とよんでごまかすことでもない。
課題は、そうした「目に見える」カタチの種類の話ではない。
子どもが、ある体験を、誰といっしょに体験したか。
どのような大人や仲間と体験したか。
自分一人の体験と、大人や仲間との関係の中での体験と、
その兼ね合いのなかで、どのような「感情体験」として味わい、受け止めるか。
「わたしの体験」と、「わたしたちの体験」が、同時にある、体験をすること。
そこでは、関係の肯定から生じる自己存在肯定感、
生きる喜び、共にある喜びを体験することが、「できる」。
「できる」「できない」とは、個人の能力だけで、人生体験としてあるのではない。
むしろ、関係は、できるできない、以上に、感情体験に影響を与える。
もしもイチローが、アフリカや北欧の野球のない国に生まれていたら、
「野球ができる」能力は、誰も認めてはくれない。
そして、いまほどの「生きる喜び」を彼に与えてはくれない。
野球を愛する人たちとの関係の中でこそ、その能力と魅力は「肯定」され、イチローの「自己肯定感」の豊かさにつながる。
「できる・できない」こと以上に、どのように感情を味わうか、
その「関係の肯定」こそが、生きる喜びにつながる。
就学・相談とは、どうしたらこの子に文字を覚えさせることができるか、どうしたらこの子に数を理解させられるか、を問われているんじゃない。
この子を、この子の存在を、この子の現在を、
肯定してくれる・学校はどこですか?
障害を否定したうえで、克服しようというのではなく、
この子をまるごと「肯定」しながら、
この子の成長に寄り添い育ててくれる「関係の肯定」はどこにありますか?
その「関係の肯定」の先にある、
この子の「生きる喜び」につながる「教育」のために、
親ができることは何ですか?
そんなふうに、問われているような気がする。
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小西千尋
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