ワニなつノート

怠惰ややる気の欠如ではない

チェックリスト (メモ01)


怠惰ややる気の欠如ではない



1979年。
私が大学に入学した年。
養護学校義務化の年。

あのころ、わたしは絶対に自分が正しいと信じていた。
子どもの気持ちを無視して分ける学校が正しいなんて、絶対にありえないと思っていた。

わたしの根拠と確信は、自分一人の体験と、当時目にし、耳にした子どもたちの言葉だけだった。
それでも、こんなにも明らかな間違いは、いつか正されるのだろうと思った。
まだ少数の人しか間違いに気づいていないだけで、やがて間違いが広く知られていくにつれ、状況は変わっていくと信じていた。


あれから36年。
2015年。

私が正しいと信じたことは、やっぱり正しかった。
それは間違いない。
わたしが生きてきた中で、出会ってきた子どもたちとのつきあいのなかで、疑う材料はただのひとつもなかった。

ただ、わたしの計算は、間違っていた。

明らかな間違いは、「いつか正される」。
そのいつかは、20年か、30年か、50年かと思っていた。

私が死ぬまでには状況はずいぶん変わっていると思っていたのだが、「いつか」は私の人生では短すぎるらしい。

いつかは、まだ来ない。


「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」という本のなかに、その理由が書いてあった。


         ◇


大抵の分野では、大失敗が起きてもそれを調査すること自体、ほとんどない。
医療、教育、法律、ビジネスなど、失敗が一面記事にならない分野は、ほぼすべてがそうだ。

大抵の場合、ある一種類の失敗は一度に一人にしか被害を与えないので、たとえ累計で数千人に影響を与えていても、しっかりと調査されない。

時には調査がなされ、解決策や改善策が見つかることもある。
だが、そこからがまた問題だ。

それらがクラスやセミナーで紹介され、学術雑誌や教科書に載るかもしれない。
運が良ければガイドラインや規則としてまとめられ、公布される。
だが、そのように広まっていく保証は全くない。

仮に広められたとしても、実際に使われるまでには何年もかかることが多い。


治療法に関する重要な新発見がされた後の経過をたどった研究がある。

例えば、肺炎は主要な死因の一つだが、肺炎球菌のワクチンが子供だけでなく大人の肺炎予防にも有効だということがある研究でわかった。

そのような九つの重要な発見がされた後を調べてみると、医者がアメリカの患者の半数以上に新しい治療法を適用し始めるのに、なんと平均17年間もかかっていることがわかったのだ。

ダン・ブアマン氏のような専門家は、それが決して怠惰ややる気の欠如ではないことを理解している。

多くの場合、重要な知識がわかりやすく使いやすい形に変換されていないのが原因なのだ。


『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』
アトゥール・ガワンテ  晋遊舎


          ◇


地域の普通学級に通うということがどういうことなのか。
きょうだいや、同世代の地域のこどもたちと同じ学校生活を暮らすことが、どういうことなのか。

子どもにとって、普通学級で子ども時代を過ごすことの意味や中身という、『重要な知識がわかりやすく使いやすい形に変換されていない』らしい。

さてと。

わかりやすい形。
使いやすい形。
変換とは、どうすることなんだろう。
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