2年ほど前に市内で行われた海津敦子さんの講演会。
色々いいお話を聞けて満足だったのですが
著作を読んでいませんでした。
図書館で偶然見かけて、借りてみたところ
ちょうど最近不安に思っていたことの、解決(?)の糸口をもらえました。
読んで良かった。
「発達に遅れのある子の親になる 子どもの『生きる力』を育むために」
海津敦子著 日本評論社
海津さん自身、障害のあるお子さんの母親で、
お子さんの障害への不安から、いろんな意見や体験を聞きたいと熱望し
本を出版することを決意されています。
そのため、この本には第一線に立って活躍する専門家から
わが子が障害を持つ親御さんまで、多岐に渡る方々のインタビューが載っています。
個人的には脳科学の専門家のお話がとても参考になりました。
以下本文より抜粋して、心に響いた箇所を紹介します。
「得意なものというのは、押しつけらたものでなく、あくまで本人が好奇心をもって育てたものでなくてはいけません。脳は、自分が好ましいと思える情報をもっぱら処理するようにできていて、好きでないことを学ぶようにはできていないのです。つまり、熱中できて、楽しいことをすれば、脳は発達します。好奇心を育ててあげ、その中で見つけた興味があることを、親が見逃さずに環境を整えていってやれば、子どもは熱中し、楽しくなり、子どもなりに夢を育てます。夢の実現のために努力しようとする自発性も育ち、子どもなりに努力を重ね、好きなことが自分の中で得意なものとなってくるのです。そうして得た、得意なものは、自分でやっていて楽しい、これをやっていれば幸せという満ち足りた気持ちにもなれるのです。脳の働きでも希望や充足感をもっていることと、失望感をもっているのでは脳内物質のはたらきにレベルがまったくちがうんです。一流にならなくとも幸せ感があれば、さまざまな社会の障害から自分自身を守り、支えていく力にもつながっていくのです。」
(北海道大学脳科学専攻 澤口敏之教授)
好きなことをしている時、脳は発達する、って驚き。
でも反面、すごく納得です。
私も学生時代、数学や物理はさっぱり頭に入ってこないのに、得意な科目は勉強するの楽しかったもの。
苦手な科目の勉強ってただ苦痛だった。
だってどんなに考えても、わからないんだもん。
わからない、ってそれ自体すごくストレスなんだなぁ。
ミニだって、算数の計算はさっぱり暗記しないのに
電車の名前や路線図はばっちり暗記してるものね。
得意なものが心の支えになる、っていうのは障害のあるなし関係ない
という気がします。
ストレスについてはこんな興味深い記述も。
「ストレスがあると、その後の脳の発達、心の発達、行動の発達に重大な問題が起こるという研究データが、最近は続々と出てきています。特に、今まで考えられていた以上にストレスは発達に良くないことがわかってきているのです。」
「親の価値観を子どもに押しつけてやらせていると、その時は一見良くなって親は安心しますが、ところがどっこい、後々に響きます。結果は何年もたってから、本人にとっても周囲にとってもつらい形で返ってくることが少なくないのです。」
「ストレスのかかるようなことを子どもにやらせなければならないことももちろんあります。そのいい例が勉強ですが、そこには先生の創意工夫が必要になってきます。感情的に怒ったり、子どもに挫折感を味合わせてしまうのでは困りものです。そうなると脳内に分泌する物質が、発達にマイナスに作用することが多いのです。」
「肝心なのは、ストレスをできるだけ避けるためにも、子ども自身が見つけた好きなことをベースにして育てていくことです。脳は好きなことをするようにそもそもできています。押しつけられたりした、つまらないことをするというのは時間の無駄使いです。そうしたことが一見できたところで本当に身につくわけではありません。親や周囲が理想とする成長に近づけるために子どもにプレッシャーをかけてストレスになることもあります。とにかく大人の希望の押しつけは駄目です。そうした思いは捨てることです。」
(北海道大学脳科学専攻 澤口敏之教授)
耳が痛い、です。
子どもに対する時、どうしても親の願望が先走りするなぁ、と自覚があるだけに。
「これができないと大人になった時困るから」なんて言って
困るのは自分自身じゃないの?みたいな。
時々、立ち止まって反省も必要だ、と痛感。
主張としては、佐々木正美先生が著書や講演で言ってらっしゃることと同じなんだよね。
子どもに結果を求めない。結果が自分の思い通りじゃないからと言ってがっかりしない。
「安定した大人になっている方たちは、皆さん、子どもの頃に、できることを増やすために一生懸命に教育を受けさせられた人たちではありません。これは、できるようにするための働きかけをしてこなかったという意味ではなく、できるようになるための働きかけや支援はするけれど、『できるようにならなくてはならない』というような切羽詰った環境の中で育っていないということです。『できるようになってもいいし、できなくてもいい』と肩に力の入っていない大人に囲まれた中で、できないことも認められて育った人たちです。長い人生を考えた時、大人になって文字が書けなければ、書ける人に助けてもらえば良いし、排泄なども助けてもらえばいいけど、大人になってから安定した気持ちで日々を過ごすことができないことほど、本人にとってつらいことはないと思います。」
(筑波大学心身障害科 宮本信也教授)
子どもが小さい頃は指示もよく聞き、おだやかだったけれど
思春期、青年期を迎えて、問題行動が起きて大変、という話を
わりと頻繁に耳にします。
難しいといわれるその時期を安定して過ごすために
今できることって何だろう、と最近悩んでいたんだけど
なんとなく答えらしきものをつかめた気がします。
ミニと信頼関係をつくっていくこと。
ストレスを与えすぎないように心を配ること。
私は今こういう悩みがあったので、この部分が響きましたが
色んな意見やエピソードが載っているので、読む人によって響く場所が違うと思います。
長文、おつかれさまでした