さて、ポールの新譜"Kisses On The Bottom"だが、7日に購入してから本日まで朝に夕に聴き続けている。
何回聴いても飽きない。
と、いうわけではない。
実のところまったく逆で、何回聴いてもしっくりこないのでしっくり来るまで聴いてみようということで聴いている。
別に退屈って訳じゃない。
そりゃあつまんない曲もあるけどMy ValentineとかGet Yourself Another Foolなんかポールの雰囲気によく合っていていい感じだ。
過去のアルバムに収録されていた"pretty Little Head"とか"Ou Est Le Soleil"みたいな曲を延々と聴かされることを思えばサイコーの部類の楽曲かもしれない。
でも、「コレジャナイ・・・」のだ。
いい企画だと思う。
ロッド・スチュワートの先例もあるのである程度の売れ行きは見込めるだろう。
似たようなテイストの自分の曲をこっそり紛れ込ませてあるので印税もバッチリだ。
企画の良し悪しが問題ではないのだ。
たとえば同じ企画を今回ハモニカで参加しているスティービー・ワンダーがやったとしたらどうだろう。
許す、というか拍手喝采だ。
きっと素晴らしいボーカルと演奏が聴けるだろう。
なにより10年ぶりに出した2005年の"Time 2 Love"の後また7年もリリースしてないんだからなんでもいいから出してくれって感じだ。
これがブライアン・ウィルソンだったらどうだろう。
おそらくスティービー以上に素晴らしいアルバムができる。
いまのスタッフならたとえブライアンがいなくても素晴らしいアルバムになるだろう(笑)。
でもポールはこういうのやっちゃダメな気がする。
それが進歩的だったか革新的だったかはともかくとして、ポールのアルバムには必ず何曲かヘンな曲が入っていた。
毎回アルバムが出るたびにかならず入っているヘンな曲を聴きながら「これがなければ名盤なのに」と何度思ったかしれない。
でもそんな数々の爆死例から生まれたのが"Uncle Alber Admiral Halsey" であり"Band on The Run"みたいな
曲になのだ。流麗なメロディにごまかされやすいが、この2曲は実はかなりへんてこで実験的な曲である。
細切れのメロディを無理矢理つなぎ合わせて1曲に仕上げましたみたいな芸当は日頃からやっていないとなかなかできることではないだろう。
でもできれば失敗例はアルバム収録しないで欲しいのだが、どうもできたそばからアルバム収録している節がある。
そして、今回はそういう要素が全くない。
レコード会社の営業は大喜びだろう。
なんたって数字が予測できるもの。
でも30年近く鍛え上げられたぼくたちは逆に物足りないのである。
「えっ、これで終わり?なんかないの?」と感じてしまう。
"Baby's Request"が33年ぶりにリメイクされたくらいじゃなんとも思わないのである。
やっぱりポールには常にチャレンジしていて欲しい。
こういうアルバムを出すということはキャリアとして「一丁上がり」になったしまうようなものなのだから。
手前勝手な望みなのはわかっているけれど常にプログレッシブでアグレッシブでいて欲しい。
これがロックンロールアルバムの"Run Devil Run"の2みたいな企画ならよかったんだけどな。
ただ、並行してオリジナルアルバムを作成しているという噂もあるのでまだまだアグレッシブなのかもしれない。
でもそこに"pretty Little Head"みたいなのが入ってたらやっぱり文句言うんだけどね。
・・・もちろんニヤニヤしながらだけど。
もうこの屈折した感情が治ることはないんだろうな。