乱鳥の書きなぐり

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『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 13  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

2020年12月20日 | 近松門左衛門

 

『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 13  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

 

早稲田大学デジタルライブラリー

13

さやばしつて。血を見れバ、殿の御代参 叶ハず。帰らねバ

ならぬ。下かう迄ハ、ずいぶんさや口に心を付て森右衛門供を、せい/\。ハア

はつと、お詞恭しく、おのれ、下かうにハ、討。しバしの命と、つきをなし。随分

おぢがめにかゝるなと いひたけれ共、侍気。声せぬなつの手ふりうぐひを

はい/\/\/\。ぶけのいきかた、なづまぬ御馬。あしをはやめて、いそがるゝ与兵衛。

うつとり夢かうつゝか、ゑひたるこゝ、なむ三、おちの下かうに切らるはづ。

きられたら、死ふ(ママ)。しんだら、どうしよ と 心ハしづみ、気ハうハもり。通てくれう

 

とうけ出。ハア、かういけバ、野ざき大坂ハ、どちらやら方がくがない。こちハ京の

方、あの山ハくらがりか。但ひえい山かどこへにてハ、のがれうと。眼を迷ひ

うろたへ、ア、どうかせう。何と かゞ笠お吉と見るより、地ごくの地ざう。ヤア、お

吉様下かうか。わしや、きらるゝ、たすけて下され。大坂へつれてゐて

下され。後生でござると、泣おがむ。イヤ、こちや、まだ、下こうじや ないわいの。

七、八町いたれど、あんまり人ぜり。こちの人、待ち合せに、爰迄帰つた。エヽ。けう

となげな、身も顔も、どろだらけ。気がちがふたる、与兵衛様、尤ゝ けんくハ

 

さやばしつて

 鞘走って

鞘走る [動ラ五(四)]  

 1 刀身が自然に鞘から抜け出る。  

 「下人はそこで、腰にさげた聖柄 (ひじりづか) の太刀が―・らないように気をつけながら」〈芥川・羅生門〉  

 2 出過ぎたことをする。さきばしる。

 「まだ―・った事を言ふ」〈鷺流狂・末広がり〉

鷺流狂(鷺流狂言)

 室町時代から能とともに発展してきた狂言。

 現在に伝わる大蔵流と和泉流の二大流派とともに、明治〜大正時代に中央から姿を消した鷺流(さぎりゅう)という流派があった。

  鷺流は、徳川家康のお抱え狂言師であった鷺仁衛門宗玄が創設した流派。

 江戸時代には観世流の座付となり「幕府お抱え」として勢力を持っていた。

 ところが明治時代に入り、他の流派のように家元制を確立することができず、大正期には絶えてしまった。

 鷺流狂言は、山口県山口市、新潟県佐渡市、佐賀県などで素人の狂言師たちによって伝承される。

 

 叶ハず。(かなわず)

 叶う

 願いが現実になる。思い通りになるという意味がある。

 

下かう迄ハ

 下向迄は

下向(名)

  高い所から低い所へおりていくこと。

 2 都から地方へ行くこと。

 

恭しく(うやうやしく)[形]

 《「礼 (うや) 」を重ねて形容詞化した語》

 相手を敬って、礼儀正しく丁寧である。「神前で―・く頭を下げる」

 

なむ三、おちの下かうに切らるはづ。

 南無三、叔父の下向に切らるる筈。

 

きられたら、死ふ。しんだら、どうしよ と 心ハしづみ、気ハうハもり。通てくれうとうけ出。

 斬られたら、死のう(ぬ?)

 死んだらどうしょ(どうしょ は関西弁)

 と、心は沈み、気は上盛り。

 通うてくりょう、

 峠、いで。

 

あの山ハくらがりか。

 あの山は、暗(峠)か。

 暗峠は、大阪と大和の境にある山。

 

但ひえい山かどこへにてハ、のがれうと

 ただし、比叡山かどこかに、のがりょう(のがれよう 関西弁)と

 

かゞ笠

 加賀笠

 加賀国から産出した菅笠(すげがさ)。

 町家の女房、比丘尼(びくに)などが用いた。

 加賀菅笠。

 

吉様下かうか。

 お吉様、下向か。

 

大坂へつれてゐて

 大坂へ連れて行て(行って いて は、関西弁)

 

イヤ、こちや、まだ、下こうじや ないわいの。

 イヤ、こちゃ、まだ、下向じゃ 無いわいの。

 

  出演 役柄  

   花車お杉

   芸者小菊

   小姓頭小栗八弥

   与兵衛叔父山本森右衛門

   河内屋与兵衛

   七左衛門女房お吉

   娘お光

 

『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作

 近松門左衛門 1653-1724

 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門, [出版年不明]

 22cm

 竹本筑後掾正本
 共同刊行:山本九兵衛(大坂高麗橋)
 題簽の一部を欠く 虫損あり
 和装
 印記:文楽蔵,渡邉蔵書
 渡辺霞亭旧蔵

 早稲田大学デジタルライブラリー ヘ07 04334

 

『女殺油地獄』 1 上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門  早稲田大学所蔵と東洋文庫所蔵は、同じ。

『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 2  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 3  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 4  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 5  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

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『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 12  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

『女殺油地獄』上,中,下巻 / 近松門左衛門 作 13  高麗橋(大坂) : 正本屋山本九右衛門

 

 

 

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