107:『和歌山県立博物館所蔵 熊野権現縁起絵巻』
勉誠出版(6枚)柳川家蔵絵巻(断簡)
『和歌山県立博物館所蔵 熊野権現縁起絵巻』
江戸時代前期/1637
和歌山県立博物館 編
川崎剛志 解題・翻刻
高橋修 附説
勉誠出版
1999年2月
98 頁 定価 13,650円 (本体13,000円)
勉誠出版 データーベース ▼
『熊野権現縁起絵巻』は中世に成立し広範に伝えられた寺社縁起絵巻の雄編であり、特定の信仰の枠を超えた重要な文化遺産である。
特に和歌山県立博物館蔵絵巻は、修験道の祖、役行者が登場する特異な伝本群の、現存する唯一の完本で、国文学・宗教史・美術史など諸分野から注目されている。
全三巻の全巻を鮮明なカラーで影印し、絵画の場面は日英語併記で図像解説を試みた。
同系絵巻断簡の翻刻、解題を付して提供する。
外国人を含むより多くの人々に絵巻を楽しんで頂けるようにわかりやすく解説することを試みたものである。
和歌山県立博物館 公式HP 24年度展覧会のご案内
JR和歌山駅からバス;西口・2番のりばから約10分、「県庁前」下車、徒歩約2分
南海電鉄和歌山市駅からバス;9番・10番のりばから約7分、「県庁前」下車、徒歩2分
『和歌山県立博物館所蔵 熊野権現縁起絵巻』を読む。
面白かったのと難しかったので,繰り返し楽しませていただいた。
善財王にはなかなか男の子ができない
牛1000匹あれば牛玉ありといった具合で、1000人の后
ひとり懐妊
999人の嫉妬
全王子といった占いを曲げさせ,悪王子と…
それでも善財王は喜ぶ
999人の嫉妬はふくれあがり、能楽の鉄輪さながら,鬼の女たちを屋敷に
屋敷をおわれる、懐妊した后
悲しむ山に連れ行く男たち
お腹に子がいる間は名刀でも首を切ることができない
この誕生後の母の死
いわば死と引き換えの異常な誕生
子を生み、言い聞かせ、
髪結いを七つにわけ
元結いを切り
穏やかなお顔で首を切られる。
この元結いを切り死に望むと言った部分が,歌舞伎でも常である。
嘆き悲しみ、むせび泣く男たち
子は山の中で首の無い母の乳を飲んで
牛虎兎猿狐馬鹿象獅子などと遊び育つ。
迎えあり
母の頭の無い体を火葬
万行法印が王子を肩に乗せ地獄山を下る
王子 寺に入る
けんちん上人と万行法印を従え,王子は善財王と再開
善財王、999人の后たちに王子の母の首を刺そ出す用に命じる
母の頭を抱き、むせび泣く王子
善財王、王子ともにけんちん上人と対面
あらあら
あらあら あら…
その後
熊野、那智の滝などの穏やかな景色、栄えた暮らし
付録
柳川家蔵絵巻(断簡)
『柳川家蔵絵巻(断簡)』
『和歌山県立博物館所蔵 熊野権現縁起絵巻』
『柳川家蔵絵巻(断簡)』では999人の后から血は出ておらず、『和歌山県立博物館所蔵 熊野権現縁起絵巻』では血しぶきが見られる。
『和歌山県立博物館所蔵 熊野権現縁起絵巻』全体
歌舞伎を真正面前列で楽しんでいるような錯覚をした。
また、歌舞伎の回り舞台などと絵巻物が共通して,絵巻物は二次元空間ではなく時間が流れていると感じられた。
歌舞伎の大舞台など,絵巻物との共通部分が多い。
絵詞共に楽しむことのできるレベルの高い『和歌山県立博物館所蔵 熊野権現縁起絵巻』『柳川家蔵絵巻(断簡)』に魅了され,繰り返し楽しんだ。
和歌山や和歌山県立博物館に行ってみたい。
勉誠出版はすばらしい!