日常

ミチオ・カク「サイエンス・インポッシブル」

2013-04-02 21:00:26 | 
ミチオ カクさんの「サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か」日本放送出版協会 (2008/10/25) を読みました。面白かったー。

原題はPhysics of Impossible。不可能の物理学。


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<内容紹介>
『スター・ウォーズ』の世界はすぐそこにある!
タイムトラベル、テレポーテーション、サイコキネシス......
SF世界のインポッシブル《不可能》な夢のテクノロジーは、まるっきりありえないわけではない。
現在の科学の力では無理のようでも、すでに実現への道は見えている。
いつどのように、SF世界のハイテクは実現可能となるのか、現代物理学の第一人者が真っ向から論じた刺激的な科学書。
<出版社からのコメント>
『超空間』『パラレルワールド』など、数々の最先端科学書を出してきた現代物理学者のミチオ・カクが、
今度は数々のSF作品を通して、物理学の可能性をわかりやすく解説する。
『スター・ウォーズ』のライトセーバー、『スター・トレック』の転送装置、『A.I.』のロボットなど、
おなじみのSFテクノロジーが続々登場。
それら15のテクノロジーを、不可能レベル1(今世紀中もしくは来世紀に実現可能)、
不可能レベル2(数千年~数百万年先に実現可能)、不可能レベル3(既知の物理法則に反するため、実現不可能)に分け、
物理学者ならではの専門的知識を交えつつ、常識を覆す大胆な発想で熱く語る。
ニューヨークタイムズ・ベストセラー。

<著者について>
ミチオ・カク(MICHIO KAKU)
ニューヨーク市立大学理論物理学教授。
超ひも理論の権威であり、現代理論物理学の第一人者。
ハーヴァード大学卒。カリフォルニア大学バークリー校で博士号取得。
『超空間』『サイエンス21』(共に翔泳社)『アインシュタインを超える』(講談社)『パラレルワールド』(NHK出版)
などの著書がベストセラーとなり、『超空間』はニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストで年間ベスト・サイエンス・ブックに選ばれている。
全米ラジオ科学番組の司会者を務めるかたわら、テレビの科学番組にもゲスト出演。
また、SF作品や映画などにも物理学的な面からアドバイスをしている。
最新の科学を一般読者や視聴者に分かりやすく情熱的に伝える著者の力量は高く評価されている。
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ミチオ カクさんは超ひも理論の物理学者。ニューヨーク市立大学理論物理学教授。
ノーベル賞に近い学者と言われていますが、単なるお勉強の世界だけではなくて、UFOや火星やSFなどなど。そんな科学の範疇を超えた領域にも物理学の視点から追及している自由な学者。大ファンです。このブログにHPのブックマークも付けてます(⇒Dr.Michio Kaku)。
文章もクリアカットでとても分かりやすい。本当に知的にすごい科学者は、使う言葉も簡潔で美しい!(寺田寅彦のよう)
(ミチオ・カクさんの「パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ」も物理の勉強になりつつ知的刺激も最高。すごく面白かった本です。村上春樹さんも1Q84書くとき、この本チラ見したのかなぁ。)





目次を読めば、既にこの本の要約が!

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<不可能レベルⅠ>
フォース・フィールド
不可視化
フェイザーとデススター
テレポーテーション
テレパシー
念力
ロボット
地球外生命とUFO
スターシップ
反物質と反宇宙

<不可能レベルⅡ>
光より速く
タイムトラベル
並行宇宙

<不可能レベルⅢ>
永久機関
予知能力
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なんだか、こうして並べてると、どれも数百年後には実現しちゃいそうですね。まあ、きっとそういう時代が来るでしょう。



ミチオ・カクさんも、
『「不可能」ということが、えてして相対的な言葉なのだと知っている。』
『我々のような原始的な文明にとっては不可能、という意味なのだ。』

と述べています。
時代時代によって、「不可能」というのは変わってしまう、ということです。
今のインターネットも携帯も、数百年前は「不可能」だったわけで、時代の常識にとらわれないようにしないといかんですね。




面白いな、と思ったのは
『1914年発売のSF小説「解放された世界」(H・Gウェルズ)で、ウェルズが原子爆弾の開発を予言していた。
ただ、E=mc2(質量(m)に光の速さ(c)の2乗をかけた巨大なエネルギー(E)がどんな物質にも原子にも内蔵されている)の方程式を提唱したアインシュタイン本人でさえも、原子爆弾は「不可能」だと考えていた。

「解放された世界」の中で1933年に物理学者が解き明かすと予言されていた。1932年に物理学者レオ・シラードはその本を読み衝撃を受ける。
そして、原子1個を連鎖反応で増大させれば、1個のウラン原子核を分裂させて生じるエネルギーが何兆倍にも高められるというアイディアを思いつく。
シラードはアインシュタインとルーズベルトに密書を書かせ、原子爆弾のマンハッタン計画を誕生させた(これはドイツに先を越されると地球が破滅する、と思ったから)。
シラードが原子爆弾の連鎖反応のアイディアを思いついたのは、まさしく1914年発売の「解放された世界」(H・Gウェルズ)で予言された通りの1933年のことだった。』
という実話。


事実は小説よりも奇なり、ですね。
SF小説、漫画、霊能者。そういう人たちはやはり未来の断片を見ているのだと思います。その全体像を表現するのは言語的に困難なのでしょう。
だから、創造的な仕事をする人は、いろんな領域から偏見なく情報を集めつつInspirationを受け、人類や地球の未来のために仕事をしているのでしょうね。






別の話。
アインシュタインが夢見た万物理論。宇宙の法則を一つの方程式にまとめてしまうこと。
この万物理論を最初に言い出したのは紀元前500年ごろ。
ピタゴラス学派が、竪琴の「弦の振動」を分析すると、音楽は単純な数学に従っていることを示した。

これは、「超ひも理論」にも通じます。万物をひもの振動として見る世界観。不思議なものです。

目に見える物質や粒子の時代から、目に見えない波動や振動を大切にする時代へ移ると思います。
そんな複数の世界が重なり合っているのを複眼的に見れるようになったとき、人類の知的レベルがひとつステップアップして、面白い時代に突入する気がします。(既にそういう時代がはじまっている?)



・・・・・・

まあそんな感じで。
本物のガチンコの物理学者が、SF世界を馬鹿にせず真面目に誠実に考察しながら描く世界像は本当に面白い。興奮して読みすすめました。
こういう楽しくワクワクするのが、本当の学問だよなーと改めて思います。
(仕事の気分転換にちら読みしようと思ったら、あまりの面白さに最後まで読んでしまった・・・。デスクワークの仕事が、こうして進まない。。。(^^;)



(本書より)
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ウィルアム・ジョニングズ・ブライアン
『運命は偶然の問題ではない。選択の問題だ。
それは待ち受けるものではない。成し遂げるものなのだ。』
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アインシュタイン
『一見したところばかげていないアイディアには、見込みがない。』
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