日常

「ブッダの真理のことば、感興のことば」(中村元:訳)

2012-09-17 10:11:41 | 
中村元さん訳の「ブッダの真理のことば、感興のことば」岩波文庫(1978/1/16)を再読。
リズミカルで深い。ううぅん、と、うなってしまう。これが945円の文庫で買えてしまうとは・・。


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『ブッダの真理のことば(ダンマパダ)』
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ものごとは心にもとづき、心を主とし、
心によってつくりだされる。
もしも清らかな心で話したり行ったりするならば、
福楽はその人につき従う。
 -影がそのからだから離れないように。
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実にこの世においては、怨みに報いるに怨みをもってしたならば、ついに怨みの止むことがない。
怨みを捨ててこそ止む。これは永遠の真理である。
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まことであるものをまことであると知り、まことではないものをまことではないと見なす人は、
正しき思いにしたがって、ついに真実(まこと)に達する。
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他人の過失を見るなかれ。他人のしたこととしなかったことを見るな。
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ただ自分のしたこととしなかったことだけを見よ。
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うず高い花を集めて多くの花飾りをつくるように、
人として生れまた死ぬべきであるならば、多くの善いことをなせ。
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眠れない人に夜は長く、疲れた人には一里の道は遠い。
正しい真理を知らない者には、生死の道のりは長い。
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賢者は欲楽をすてて、無一物となり、心の汚れを去って、おのれを浄めよ。
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戦場において百万人に勝つよりも、
唯だ一つの自己に克つものこそ、じつに最上の勝利者である。
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みずから悪をなすならば、みずから汚れ、
みずから悪をなさないならば、みずから清まる。
清いのも清くないのも、各自のことがらである。
人は他人を清めることはできない。
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怒りを捨てよ。慢心を除き去れ。いかなる束縛をも超越せよ。
名称と形態にこだわらず、無一物となった者は、
苦悩に追われることがない。
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怒らないことによって怒りにうち勝て。
善いことによって悪いことにうち勝て。
わかり合うことによって物惜しみにうち勝て。
真実によって虚言の人にうち勝て。
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真実を語れ。怒るな。請われたならば、乏しいなかから与えよ。
これらの三つの事によって死後には天の神々のもとに至り得るであろう。
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ただ誹られるだけの人、またただ褒められるだけの人は、
過去にもいなかったし、未来にもいないであろう、現在にもいない。
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その行いが親切であれ。何ものでも分かち合え。善いことを実行せよ。
そうすれば、喜びに満ち、苦悩を滅すであろう。
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実に自己は自分の主である。
自己は自分の帰趨(よるべ)である。
故に自分をととのえよ。
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ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。
もしも汚れた心で話したり行ったりするならば、
苦しみはその人につき従う。
車をひく(牛)の足跡に車輪がついて行くように。
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ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。
もしも清らかな心で話したり行ったりするならば、
福楽はその人につき従う。
影がそのからだから離れないように。
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『ブッダの感興のことば(ウダーナヴャルガ)』
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つとめ励むのは不死の境地である。
怠りなまけるのは死の足跡である。
つとめ励む人々は死ぬことがない。
怠りなまける人々は、つねに死んでいる。
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起てよ。つとめよ。
平安を得るために、ひたすらに学べ。
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他人に愛される人は、また自分のためにもよいことをするのである。
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執着から解放されて、こだわりなく、完き(まったき)智慧あり、
煩悩のさまたげなく、悪魔の領域を超えて、太陽のように輝く。
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覆われたものに、雨が降り注ぐ。
開きあらわされたものには、雨は降らない。
それ故に、覆われたものを開けよ。
そうしたならば、それに雨は降り注がない。
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花の香りは風に逆らっては香らない。
しかし、徳のある人々の香りは、風に逆らっても薫る。
徳のある人は、すべての方向に薫るのである。
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人が生まれたときには、実に口の中に斧が生じている。
ひとは悪口を語って、その斧によって自分を斬るのである。
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善い教えは最上のものである、と聖者は説く。これが第一である。
理法を語れ。理法にかなわぬことを語るな。これが第二である。
好ましい言葉を語れ。好ましからぬことばを語るな。これが第三である。
真実を語れ、虚偽を語るな。これが第四である。
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自分を苦しめず、また他人を害しないようなことばのみを語れ。
これこそ実に善く説かれた言葉なのである。
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信仰のない人と付き合うな。水の乾からびた池のようなものである。
もしもそこを掘るならば、泥くさいにおいのする水が出てくるであろう。
しかし、信仰心あり明らかな智慧のある人と付き合え。
水を求めている人が湖に近づくように。
そこには、透明で清く澄み、冷ややかで、濁りのない水がある。
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風によって吹き上げられた塵が雨によって静まるように、
ひとが明らかな智慧によって見るときに、諸の欲望の思いが静まる。
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もしもつねに正しくこの世を歩んでいくときに、明敏な同伴者を得ることができたならば、
あらゆる危険困難に打ち克って、こころ喜び、思いをおちつけて、かれとともに歩め。
旅に出て、もしも自分にひとしいものに出会わなかったら、むしろきっぱりと独りで行け。
愚かなものを道連れとすることなかれ。独りで行くほうがよい。
孤独で歩め。悪いことをするな。求めるところは少なくあれ。
林の中にいる象のように。
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他人の過去を見るなかれ。他人のなしたこととなさなかったことを見るなかれ。
ただ自分のそれが正しかったか正しくなかったかを、よく反省せよ。
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