日常

美輪明宏「人生ノート」

2011-05-24 21:23:21 | 
美輪明宏「人生ノート」(PARCO出版:1998)を読んだ。

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<本の解説>
世の中どこかおかしい。みんな何かに追いつめられている。でもそれも、ひとつずつ処理しなくては…。
その特効薬は、多角的にものを見ること。
辛口だが、愛にあふれた美輪明宏のエッセイ。
「獅子の座布団」の改題改訂。
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実家に帰った時、美輪さんの「乙女の教室」(集英社(2008/8/26))が実家に置いてあった。この本は、女性雑誌『MORE』で10年間も超人気連載されていたコーナーを本にしたものらしい。
乙女ではないにも関わらずこっそりそれを読んだら、改めて美輪さんの凄さにはまった。気高くて気品高くて上品で美意識に溢れていて、素直にすごい!って思ったのです。
それで、いろいろ美輪さんの本を集めて読んでいます。(思いつきの衝動や本の縁に誘われて自由に読めるのが読書のいいところ。)





「人生ノート」美輪明宏(PARCO出版)の感想を。

この本は曼荼羅のような万華鏡のような美輪さんワールド全開だった。遠慮もキレイごともない本音の言葉。

とにかく強い美意識に裏打ちされた美輪さんの文章が続く。
(ほんとうは<美輪サマ>と呼ばないといけないかもだけど、<美輪さん>で行きます。)

『とにかくあなた、美意識を持ちなさい。そうすれば、どうとでもなります。』
と何度も言われているような感覚になる。
そして、実際そうだなぁと思いながら読み進めていく。


何事もものごとの感じ方は人さまざま。
ただ、それをどのように捉えるかという方向性(正なのか負なのか)は、人によって大きく違っていて、それは美意識そのものによって大きく方向づけらているんじゃないかと思う。





お釈迦さまの言葉で『天上天下唯我独尊』というものがある。
生まれた時、こう言って指差して一人で歩いた、っていう話し。
これは、「自分が一番えらいという意味」ではなくて、「自分はこの宇宙でただひとりの存在だ。だからこそ、尊いのだ。そして、ただひとりの存在だというのはわたしだけではなくて、あなたもそうで、生きとし生けるもの平等なのだ。」
と書かれていた。とてもいい表現だと思った。
(それまでは、暴走族の旗に記されているイメージがなんとなく強すぎて・・・)


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『人間というものは、自己の定まる場所がないということが、いちばんいけないことなのです。
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ふらふらとした浮遊霊のような幽霊人間にならないためにも、ぜひ、獅子の座をお持ちになることをお薦めします。』

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この本は「獅子の座布団」という以前出た本の改題らしく、そういう「自己の定まる場所」を持ちなさい、と。



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『死んだ時に泣いてもらえる人になりなさい。
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「この人は自分が死んだ時に泣いてくれるだろうか。
果たして自分は、この人に泣いてもらえるだけのことをしてきただろうか」と、じっくり考えなさい。』

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いつも心を動揺させないよう平静を保つようにする時、気持ちを楽にさせる場合に、まず最初に口にするおまじないの言葉は
「えい、命まで持っていかれやしないんだから」
という開き直りの言葉です。
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「自分とは違う人間ですもの」と割り切るしかありません。万事解決します。終ります。
いつもスッキリと、ノンシャランとして、気楽に明るくポヨンとして、人生を送ることができるのです。
「こだわらない、こだわらない」とテレビCMのメロディでもつけた、おまじないの言葉を唄うようにすることです。

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そして、一大事の時は、何がなんだかわからなくなる感情を吹き飛ばすために、「だいじょうぶ、死にやしないんだから」と、きっぱり自分に言い聞かせる事です。
すると、興奮のためにどこかへ吹っ飛ばされていた理性が、ハーイと舞い戻ってくるのです。

何事にもよらず、悩み事が生じた時にそれを解決するのは理知の力です。
理に走れば角が立つなどということはありません。
真の理であれば、心情もちゃんと計算するゆとりもあるはずですから。

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そういえば、文章の合間にサブリミナル効果として入ってくる美輪さんの毒も面白い。
「ただの人糞製造器」「お味噌も糞も一緒くたにしてしまってる」・・・とか。

(若さや美しさだけを誇り、思いやりを持たなかった人間が年を取ると)
「古くなったしわだらけの皮と骨だけをひきずった、人の形をした物体がむなしくぼーっとあるだけ」
・・・とか。(笑)

とにかく、表現が直線で強烈です。




『人生はプラス・マイナス・ゼロ』

このことを、美輪さんは「正負の法則」と読んでいる。
これは、いろんなところで感じます。その通りだと思います。
「人生、山あり谷あり」「人生、いろいろ」とか、いろんなひとがいろんな言葉を変えて表現してますよね。
光があれば影がある。影があれば光がある。



『(美輪様のパワーをください、と握手を求められる時)
「私はパワーはあげません」ときっぱりいいます。
逆に、「なぜ人にパワーをあげましょう」と言わないのですか、と言います。
一生もらい乞食でなきゃいけないでしょう。
・・・・・・・
人からパワーをもらうのではなくて、人にパワーをあげようと思うと、
泉のようにだんだん湧いてくるものなんです。』






怒涛のように美輪さんの格言が続き、うんうんうならされるし、ストンと自分の中に入ってくる。
そして、最後はあの世の話し、霊的な世界の話になっていって終わる。驚く。


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『原子のかたまりである人間が、原子のかたまりである人間を好きになる。
その「好きになる」はどこから来るのか。
それは魂です。
では、その魂はどこから来るのかと申しますと、それは未発見の素子だろうと言われています。

スウェーデンボルグの本にも書いてあるように、あの世が私たちのメインの世界なんです。
あの世というのはつまりミクロの世界で、肉眼で見えない世界なんです。

でも、肉眼で見えないぐらいの微細な原子や中性子でも、何十万の人を一度に殺してしまうだけのエネルギーを持っているわけでしょう。それを超能力とか念力とかいっているわけです。

・・・・・・・
あの世というのは、魂といわれる素子が純粋エネルギーになる作業をしているわけです。

水準以下の魂、素子は、精神的に成長するために何か道具がいる。その道具は何かというと、肉体なんです。
肉体を使う事によって喜怒哀楽を精神に伝えるわけで、そこで鍛えるわけです。』

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『生まれ変わりの回数の少ない人は、経験がないから思いやりがないわけです。
思いやりのない人を見た時に、
「この人は生まれ変わりの回数が少ないんだろうな。
前世はきっと灰皿か何かだったんだろうな。」
と思えばいいわけです。』

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『迷っている幽霊とか呪縛霊というのは、まだ自分は肉体があると思いこんで、錯覚しているわけです。
・・・
ところが、肉体がなくて素子だけになっているんだから、想念だけなんです。
想念で自分は痛いんだと思い込んでいる。
つまり、思い込みの世界なのです。
・・・
だから、想念次第なのです。
想念が汚れていると霊は汚れたままだし、想念が美しく清ければ美しいところに住むことができるんです。
自分の気持ちが変わると、即その気持ちが、心象風景がそのまま投影されて、自分の住んでいる世界になるんです。
それが霊界のしかけなのです。』

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まあ、こんな感じで最後の辺りは霊界の話が怒涛のように現れてきて本は終わっていくのです。
おぉ!っと、驚いて、終わり。

霊とか死後の話は、自分の周りにも好きな人がいるので、よく聞く話だし、あまり偏見はないです。
ただ、自分の中では未だになんというか「あると言えばあるし、ないと言えばない」としか表現できない感じ。(→榎本俊二さんのマンガ「ムーたち」みたいな言い回しですが(笑)) まだ未消化です。胃や腸の中でグジュグジュ言ってます。



まあそういう話も全部ひっくるめて、とても面白い本です。
美輪さんワールドを堪能してください。みっちり怒られ、説教され、襟を正されてください。

美輪さんからは適切に怒られ、適切に諭される感じ。決して悪い気分にはなりません。
それこそ、美輪さんの人格や人柄、まさに魂そのものから来るのだろうと感じます。


他にも、美輪さんの「紫の履歴書」(水書坊)「愛の話 幸福の話」(集英社)「霊ナァンテコワクナイヨー」(PARCO出版)とか、もろもろ同時に購入してるので、読んでみようと思ってます。


美輪さんのように、何事もウジウジこだわらず、他人を自分と同一視しないようにして、いつもスッキリと、ノンシャランとして、気楽に明るくポヨンとして、人生を送れるといいものです。
美輪さんがおっしゃるように、この世はあの世の修行だと思って、日々精進します。



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『理想的人間とは、頭は冷たく、心は暖かく情熱に燃えている、バランスの人を言います。
・・・・
常日頃、ふと気がついたときに自己を確かめ反省する。
自分の頭はいま現在どうなっているだろうか、熱いだろうか、冷たいだろうか。
心は冷たいだろうか、あたたかいだろうかと、いつも点検する習慣をつけることです。』


美輪明宏「人生ノート」より
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2 コメント

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Unknown (安藤明美)
2014-01-28 20:44:59
美輪さんの本は私も何冊か読ませていただきました。
先生のブログいいお話でした。自分は唯一の存在という言葉にハットさせられました。感謝いたします。
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Unknown (いなば)
2014-01-30 09:49:17
>安藤さま
美輪さん、素晴らしいですよねー。理性と直観のバランスがすごく取れている人だと感じます。 あの世界のパイオニアで、道なき道の荒野を歩いてきた人だからこそ到達できる世界を感じます。
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