日常

こころの自由

2010-10-19 20:33:17 | 考え
イマヌエル・カント(1724-1804年)。
『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の三批判書を書いた大哲学者といわれる。 


理性の極限を追い求めて、とことんまで考えた人だから、その内容は当然難しい。 
ただ、「理性の限界を、理性そのものが認識できるのか」っていう問いは、今の脳科学で言えば「脳は脳自体を理解できるのか」っていう問いと似てると思う。
古くて新しい問題だし、なんでも限界を知るというのは大事だと思う。


他にも、二律背反(アンチノミー)の問題とか。
言語で考える以上、その言語自体の制限を受けるから、矛盾や限界がある。
ヴィトゲンシュタインとか現代の考えにもつながるし、すごく新しい事をひとりでやっていたんだろう。 

カントは、いまだにわかんないとこは分かんないけど、自分なりに理解したいと思う存在。
すごいと言われて歴史と共に消えてない人は、どんな方面からでも、そこに学ぶべき何かしらがある。




カントがカントになった瞬間、そのはじまりを感じた事がある。
その話を聞いて、自分は深い感動を覚えたのを思い出す。それ以降カントが好きになった。  

カントは、人間の在り方としての壮大な例示のようなものだと思う。
人間はひとりでここまで考える事ができるのだという現実の例。


カントの伝記によると、カントの胸の真ん中辺りにはコブのような奇形があって、ひどい喘息で病弱だったらしい。
17年間、毎日喘息で突発的に呼吸ができなきなって、苦しい苦しいとのたうちまわりながら、かろうじて生きていた。 


カントはそんな運命を呪っていたらしいけれど、17歳のカントはある医者との出会いで変わる。
それまでは、生まれてきたことを呪い、恨みつらみを訴えるだけの青年だったらしい。



その出会いで、カントはカントになった。

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「体が悪くて、苦しいのも辛いのもよく分かる。
ただ、体が苦しくても、よくよく観察してみると、自分の心はどうもないはずだ。

苦しいと何度言ったところで、きっと苦しさはよくならない。
他人を恨んでも、周りもあなたもさらに苦しくなる。

苦しいと言う余裕があれば、心は健康であることを喜び、感謝すればいいではないか。
苦しいと言える同じ口で、心は自由であることを喜び、感謝すればいいではないか。
もし、わたしが言っていることが分からないならば、それは確かに不幸だと思う。」
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(記憶は定かではないけど)自伝によると確かこういうことをカントは言われたらしい。 


カントは、試しにそう思いながら日々生活してみた。

苦しさは、考え方次第でいかようにも相対的なものへと変容したことを実体験した。
心が自由で健康であること。その喜びと感謝を、心の深い部分で感じた。


そういう心の自律性や生命に目覚めたことが、カントを巨大な学問をひとりで作り上げる、精神の強靭さや自由さの源になったのだと思う。



カントは、外的な現実がいかに内的な世界によってゆがめられているか、そしてそのゆがめているものが、ほかでもないこの自分自身であるということを、深いレベルで体感したのだろう。
頭や脳だけで理解するのではなくて、たましいも含め、自分の全てで理解した。  



からだは、容貌や体型や、いろんな不自由を受けるかもしれない。
ただ、こころは、たましいは、自由だ。
それは、誰の支配も、受けるものではない。 

その思いを深い場所で常に持ち続けさえすれば、ひとはどんな環境でも、どんな状況でも、尊く生きることができるのだと思う。

人生は一度しかないのだから、気付いたことを少しでも早く実践しないと、日々はあっという間に過ぎていく。



「考えること」、それは自由の象徴でもあると思う。
こころやたましいを支配されず、その自由さと独立さを守ること。



哲学というものは、何かの結論を知ることではなくて、考え続けるプロセスの動きの中にあるだと思う。

偉大な人たちが一回しかない人生をかけて何かを考え続けた。
そのことを追体験しながら、その人たちが行こうとした深い場所にいざなわれながら、心の自由や独立を感じるために、僕らは考えるのだと思う。


2 コメント

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先験的>>経験的 (imura)
2011-01-03 20:42:13
カントについて、全く知らなかったので、ネット社会らしくwiki読んでみましたが、いっちょんわかりませんね。汗
ただ、僕は経験的で判断することばかりなので、ちゃんとした数学も出来ませんでしたし、先験的な考えが出来る方はうらやましいなぁと思います。

なぜならば、
The first step is always the hardest.
だと思うからです。経験的ももちろん大事ですけれども。

サラリーマンなので、ついつい少ない経験で判断しそうになりますが、出来るだけ思い切ったことが出来るよう、より一般的に広範に考えて行きたいなぁと思ってます。
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むずかしかー (いなば)
2011-01-04 21:05:03
>Imuraくん
僕もカントのことはいっちょんわからんよ。笑

でも、竹田青嗣『完全解読 カント『純粋理性批判』』(講談社選書メチエ)っていう本も最近出てたりして、買ってはみたものの全然読んでなかったりするのだけど笑、なんとか自分なりに噛み砕いて理解したいなぁとは思うのよね。過去の古典と言われて残っている物には、何かしらのメッセージがあるのだろうと、信じてるのです。それは、時を信じてるってことでもあるのかもしれない。
時と共に朽ち果てずに残ったもの、それはすでにそれだけで偉大だと思うから。


まあ、お互いコツコツと勉強していきましょう。
プラトン、デカルト、カントとかは、なんか基本みたいな感じだからねぇ。
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