うさとmother-pearl

目指せ道楽三昧高等遊民的日常

ええじゃないか 麻吉

2009年04月14日 | お出かけ
なぜか、いけない街には、小暗い急な坂がある。遊蕩の街への坂である。坂は曲りくねっていて、人を誘うが如き名を持つ。

そう。泉鏡花が育った金沢の主計町にあるのは、「暗がり暗闇坂」寺の裏を抜けて茶屋町に下る坂である。男が通る。女が通る。子が通る。皆違うことを考えながら、坂を通る。

おかげ参りに出かける。内宮と外宮に通じる古市参道。そこにあるのが古市の街だ。そこはもう、「都おどり」のもとになったというような、芝居小屋やら茶屋やらを思わせるものは何にも残っておらず、近所の婆さまが語らい、通園鞄を提げた子が母に手を引かれる、昼下がりの住宅街の細い道となっている。
古市に江戸の賑わいを残しているは、この坂と一軒の旅館だけだ。

「手振り坂」
誰が振る手か。誰に振る手か。その昔、男が通り、女が通った坂。その坂に向かって振った手は、両側に建つ「麻吉」の中の人。
「麻吉」は坂を挟んで両側に今もある。東海道中膝栗毛にも出てくる建物だ。坂の上を「麻吉」の廊下が渡る。
伊勢古市はぽってりと八重桜の咲く。
電話のお姐さん伊勢言葉。「まあねえさん、ええやない」と少しおまけをしてもらって、一泊朝食つきをお願いする。
今日は他に客はいないと見た。
入り口からまっすぐの部屋に通される。15畳の部屋は前面に朝熊山、右はやはり桜咲く野。開け放たれた障子からの眺めはお江戸のおかげ参りに連れて行ってくれそうだ。思わず、ため息が出てしまった。
往時の什器を飾る蔵は坂に沿って4階層になっている。もう自分がどこにいるのかわからない。考えれば考えるほど、階段の魔にはまり込んでいってしまいそうだ。

ええじゃないかの旅なら、そうして、好事の方のご宿泊はどうぞ、「麻吉旅館」へ。ネット予約なら一泊二食10500円よりにて、登録有形文化財、木造六階建てにお泊りなんて、素敵すぎるでしょ。
コメント (10)
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