urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

古川日出男『ルート350』講談社

2006年04月29日 | reading
ネタバレ一応注意。

《教訓だらけの映画だった。生きろ、はめろ、疾走しろ。それから氷山に衝突して沈没。セリーヌでディオーンだ。》(「ストーリーライター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター」、78p)

古川日出男の短編集。
「はじめての純粋な短編集」とのこと。『gift』なんかは連作と捉えるべきなのか。初出はそのほとんどが「小説現代」。「群像」の方がしっくりくる感じだが、そのチープさがかっこいいですね。
物語は、ここ最近の彼の主題である「都市」…特に「東京現代史」の下に、相変わらずのとんでもない奇想を、饒舌に疾走する文体で描く。
閉ざされた一軒家で繰り広げられるハムスターの世界彷徨(「お前のことは忘れていないよバッハ」)、東京の空に放たれる一千羽のインコに受け継がれる音楽(「物語卵」)、墓石の迷路を抜けた先で、夜を徹して行われるレイヴ(「一九九一年、埋め立て地がお台場になる前」)。短編に盛り込まれたアイデアはどれもこれも魅力的で、長編を支えるだけのインパクトと強度を持っていて、非常に贅沢。物語のアイデアと語りの両方に示す圧倒的な才。最も天才の名に近い小説家だと思います。
特に気に入ったのは感動的な「お前のことは忘れていないよバッハ」と、魅力的な青春×都市小説「ストーリーライター、ストーリーダンサー、ストーリーファイター」、エンタテインメントとして優れる「メロウ」あたり。「飲み物はいるかい」も、飯田橋~神楽坂が舞台だったので興味深く読みました。

《そろそろ僕たちは殺される側じゃないほうに回ろう。/僕たちはゲームをしてるわけじゃないんだぜ。/ここに難問があり、それは僕たちに解かれる。》(「メロウ」、223p)

作品の評価はAマイナス。

ルート350ルート350
古川 日出男

講談社 2006-04-18
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (しょ)
2006-04-30 09:46:20
ボクはストリートファイターも気に入ってるんだな。
返信する
コ、 (urt)
2006-04-30 22:13:42
コメントはどんな形であれ嬉しいものですね、はい。
返信する