urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

森絵都『つきのふね』角川文庫

2006年01月19日 | reading
ネタバレ一応注意。

《「たとえほんとに一九九九年で人類が滅びるとしても、そんなの言うだけヤボじゃんね。救えないなら予言なんかすんな、胸にしまってだまって死ねよ、って感じ」「おやじって、慎みないからね」》(10p)

『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で俄かにお気に入り作家の仲間入りを果たした森絵都の文庫落ち二作目。
なんて言うのでしょう、「常道」を感じさせました。プロットの立て方、話の進め方。悪く言ってしまえばベタ。そういったところにこの作品がヤングアダルトを志向して書かれたものだということも影響していると思います。しかし智さんの「宇宙船」とかのモチーフは新鮮だし、やはりなんつっても小説が抜群にうまいので、そういった部分で救われているとは思いますね。勝田くんのキャラがすごくいいです(《「ああ、言われなくたって分かってるよ。どうせオレはおせっかいだよ。人のことばっか気にしすぎてんだよ。でもな、オレから見りゃおまえたちみんな、自分のことばっか気にしすぎてんだよ」》(185-186p))。
で、そんなことを言いつつもこの作品の最大の見所はラストの手紙。これはもう、奇跡としか言いようのない輝きを放つフレーズです。ラスト二行で涙腺が決壊しました。

作品の評価はB。

つきのふねつきのふね
森 絵都

角川書店 2005-11-25
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