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女子中学生暴行:広がる沖縄の怒り 米軍再編下矛先どこへ

2008-02-13 07:41:52 | 国内政治
女子中学生暴行:広がる沖縄の怒り 米軍再編下矛先どこへ
 
 沖縄県北谷町で起きた米兵による中3女子暴行事件は、米軍再編が続く中で、全国の「反基地感情」を増幅させている。95年9月の少女暴行事件と同様に「県民の怒り」が普天間飛行場移設など基地再編に影響を与える可能性もある。一方で政府は、事件と基地問題を切り離そうとしている。【三森輝久、上野央絵】

 「事件発生が選挙戦中だったら、当然厳しい結果が出ていた」。米空母艦載機の米軍岩国基地移転を容認し、10日の岩国市長選で初当選した福田良彦新市長(37)の陣営幹部は、わずか1782票差の選挙を振り返った。「1日前に起きていたら、結果が逆だった。ぞっとする」とある防衛省幹部も語った。

 2人の言葉は、一つの事件で「民意」が動く可能性をはらむほど「基地の街」にとって、米兵による事件が重大な問題であることを物語っている。

 こうした米兵事件が沖縄に限らないとはいえ、基地が集中する沖縄の現状は依然突出して深刻だ。既に、米兵による事件が繰り返されることへの怒りが広がり始めている。同じ怒りが結集し、普天間飛行場返還をはじめ、基地の整理縮小の呼び水となった95年の少女暴行事件から13年。沖縄の負担軽減を名目の一つとする「米軍再編」が進む当時とは異なる新たな状況の中で「県民の怒り」はどこへ行くのか。

 「あってはならんことがまた、と思った。県民感情に悪影響が出るのは当然だ」。事件が発覚した11日午前、沖縄県庁。仲井真弘多(なかいまひろかず)知事はぶぜんとした表情で語った。ただ、政府と協議中の普天間移設問題への影響については「直接影響はないと思う」と否定した。

 名護市の普天間移設地を巡っては、政府と対立する知事だが、基地の整理縮小につながるとの観点から、在沖米軍再編には賛成している。事件と再編問題は別との認識を示すことで、反基地感情の高まりに機先を制する狙いがあるとみられる。県幹部も「再編に影響しないようにというのが知事の本音だ」と明かした。

 しかし、抗議の火は確実に広がりつつある。那覇市議会は12日、抗議決議を可決した。県議会は14日にも抗議決議を可決する見通しで、各市町村議会もこれに続くとみられる。市民団体や労組も、12日に相次いで抗議声明や集会を開いた。

 県議会革新系会派の平良長政(ちょうせい)県議は「事件への抗議と再編問題への対応を分ければ、議会は超党派でまとまることができる」と県民大会開催の可能性を指摘した。だが、超党派の県民大会実現のかぎを握るのは自民党県連。新垣哲司幹事長は「卑劣な事件であるのは間違いないが、95年の事件とは違う点もある。県民大会の話も出ていない」と首をかしげた。

 琉球大学の島袋純教授(政治学)は「95年当時は大田昌秀知事の革新県政下だった。自民党の支援を受けた仲井真県政とは政治状況が違う。岩国市長選でも移転容認派が当選しており、政府は沖縄の意思とは無関係に米軍再編を推し進めるだろう」とみる。

 ◇県民と米国…政府「二つの顔」使い分け求められ

 政府は、事件発生の翌11日午前には外務省が在日米国大使館に再発防止と綱紀粛正を申し入れ、福田康夫首相も12日の閣僚懇談会で「大変重たい事件だ」と閣僚に対応を指示するなど敏感に反応した。普天間移設を慎重に進めている時だけに、95年の少女暴行事件で県民感情が沸騰したような事態は避けなければならないからだ。

 沖縄県民への同情と対米関係への目配り。政府は「二つの顔」の使い分けを求められている。石破茂防衛相は12日の閣議後会見で「日米同盟の根幹にかかわる」と憤りを強調する一方、普天間移設については「事件とは別問題」と強調した。

 普天間移設を巡って日米両政府は、06年5月の米軍再編最終報告で「2014年までの代替施設完成」で合意。その後、昨年11月の日米首脳会談など折に触れ「合意通りの履行」を確認している。

 石破氏は「基地の負担はいろいろある。(今回の事件で)『早く移転しないといけない』というのは論理として正しくない」と移設前倒しの可能性を否定。高村正彦外相も「普天間移設は飛行機が飛ぶ危険性が一番大きい。決まっている通り早く移設するのが最大の解決策だ」と合意の重要性を説いた。

 95年とは、政府の置かれた環境も違う。当時は自社さ政権で、事件を契機に政府は沖縄米軍基地の整理・縮小を協議するSACO(日米特別行動委員会)を設置。大田昌秀知事(当時)は普天間を含む米軍基地の2015年までの段階的全面返還を要求した。沖縄問題は政権の最大の課題となり、96年4月の橋本龍太郎首相・モンデール駐日米大使(共に当時)による普天間返還合意につながった。

 これに対し現在は、町村信孝官房長官が「知事は『普天間問題に直接の影響はない』と述べた」と指摘したように、県側の協力姿勢が政府にとっての「追い風」だ。民主党も米軍再編に反対ではなく、沖縄問題が政局の争点にはなりそうもない。同党の小沢一郎代表は12日、「(米軍再編は)米側と対等に話がなされていないのではないか。日米同盟の現実が問われる」と指摘するにとどまった。

 ◇日米地位協定 身柄の拘束、今回は実現

 在日米軍兵士が容疑者となる事件で、日本側の捜査に大きな壁となることが多い「日米地位協定」。今回は容疑者が基地の外に住んでいたことなどで、日本側の身柄拘束が可能になった。

 地位協定は、日本に駐留する米軍の法的地位を定めた日米両政府間の協定。米兵が事件を起こした場合、現行犯など犯罪事実が明白なケースを除いて、米側が身柄を拘束するとの規定がある。

 日米両政府は02年、従来の殺人や強姦(ごうかん)に加えて、すべての犯罪で身柄を引き渡すとする運用改善に合意したが、身柄引き渡しの裁量は依然米側に残されており、米軍基地がある地域では、地位協定自体の改定を求める声が出ている。

(出所:毎日新聞 2008年2月13日 2時09分)
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