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毎日新聞・記者の目:社会不安や引きこもり問題と派遣切り社会は連関している

2009-02-25 03:34:30 | 国内労働
 銃刀法違反:「派遣切りで強盗しようと」包丁隠し持ち逮捕

 3日午前9時半ごろ、北九州市小倉南区の公衆電話から男の声で「派遣切りに遭い、強盗しようと思ったが怖くなって通報した。包丁を持っている」と110番があった。福岡県警小倉南署員が駆けつけ、着衣に包丁(刃渡り約16センチ)を隠し持っていた住所不定、無職の自称、白樫信之容疑者(35)を銃刀法違反容疑で現行犯逮捕した。

 逮捕容疑は同日午前9時45分ごろ、同区若園3の路上で正当な理由もないのに包丁を持っていたとしている。

 同署によると、白樫容疑者は昨年3月から三重県内の大手精密機械製造会社で派遣社員として勤務したと供述。派遣期間は昨年12月末までだったが、10月末に契約を解除されたという。福岡県内に実家があり、その後、フェリーで北九州市に渡った。JR小倉駅周辺で路上生活し、おにぎりやパン1個で一日の飢えをしのいだこともあったという。派遣切りされた際、所持金は7万円あったが、窃盗の被害に遭ったといい、逮捕時は10円玉と1円玉の計11円だった。

 調べに「包丁はJR門司駅近くのごみ集積所で拾った。警察に捕まれば食事や寝場所、入浴に困らないだろうと思った」と供述しているという。【太田誠一】

(出所:毎日新聞 2009年2月3日 22時48分)

放火容疑:「派遣切られむしゃくしゃ」26歳男逮捕 埼玉

 埼玉県警川越署は3日、住所不定、元派遣社員、鈴木定徳容疑者(26)を非現住建造物等放火容疑で逮捕した。同署によると、鈴木容疑者は「派遣切りされて住むところもなく、むしゃくしゃしていた」と供述しているという。

 容疑は、3日午前4時10分ごろ、同県川越市菅原町の菅原神社の拝殿にライターで火をつけ、拝殿約25平方メートルを全焼させ、隣接する本殿の柱や屋根を焦がしたとされる。

 同署によると、鈴木容疑者は午前6時20分ごろ、JR川越駅構内の公衆電話から川越署に「神社に火をつけた」と通報した。「昨年12月ごろ、働いていた川越市内の自動車工場から派遣切りされ、1月中旬に寮を追い出された。拝殿で寝ようとしたが、鍵がかかっていて入れず、腹が立って火をつけた」と供述しているという。

 市内のネットカフェで2日午後8時から3日午前3時まで過ごし、所持金が20円となった。放火後、10円玉で通報し、逮捕の際は5円硬貨2枚しか持っていなかった。「悪いことをしてしまったし、逃げられないと思った」と供述しているという。【飼手勇介】

(出所:毎日新聞 2009年2月3日 21時14分(最終更新 2月3日 21時57分) 

強盗:容疑で派遣社員の男逮捕「来月切られ、生活費ほしくて」--愛知・春日井の路上

 愛知県警春日井署は25日、同県春日井市鳥居松町1、派遣社員、比嘉信二容疑者(29)を強盗容疑で逮捕した。調べでは、比嘉容疑者は同日午後0時50分ごろ、自宅近くの路上で、歩いていた同市内の派遣社員の男性(51)に包丁を突きつけ「金を出せ」と脅し、現金約1万5000円を奪った疑い。

 近くに止めていた車で逃走したが、男性が車のナンバーを覚えていたため、県警パトカーが約1時間後、名古屋市内で運転中の比嘉容疑者を発見した。比嘉容疑者は同市内の電気製品製造会社で働いているが、「来月で派遣を切られるので生活費がほしかった」と話しているという。【花井武人】

(出所:毎日新聞 2008年12月26日 中部朝刊)

 記者の目:引きこもり問題と派遣切り社会は連関 市川明代

 「引きこもりがまた増えるんじゃないかな」。大みそかから連載した企画「孤独の岸辺」のため、引きこもりの若者たちを取材していた昨年末、何度もこの言葉を聞いた。ちょうど「派遣切り」のニュースが大きくなり始めたころだ。取材を通じ、人を物のように切り捨てるこの国の有りようと引きこもりの問題は、無関係ではないと感じた。

 引きこもりは民間推計で100万人規模。最近は長期化や高年齢化が問題になっている。神経症や精神疾患を伴うこともあり、将来を悲観した自殺や心中も後を絶たない。72年生まれの私は、引きこもりの長期化に苦しむ同世代が多いことにショックを受け、同世代に絞って取材を進めた。

 企画では、社会との接点を持とうと苦悩する男性や、引きこもりの長男を支える父親の思いを描いた。読者の反響は大きかった。ある母親は「33歳の長男は同じ屋根の下で全く会話がなく、夜半に食べるものがないと暴れています。夫も病気で、少しの蓄えがなくなれば……」と悲痛な声をファクスで寄せた。父の年金に生計を頼る東京都内の女性(35)は「父が死んだらどうすればよいのでしょう」とはがきに記した。

 原因はそれぞれだ。家庭内不和やコンプレックス、就職の失敗や職場での挫折がきっかけになった人もいた。小中学校でいじめに耐え、高校に進学したものの精根尽き果てて、または大学になじめず中退し、引きこもった人も多かった。東京都の昨年度の実態調査によれば、引きこもりの人々はそうでない人々と比べ▽自己愛が低い▽自己決定に不安がある▽対人スキル(コミュニケーション能力など)が苦手▽罪悪感がある--などの傾向が強い。

 いったん引きこもるとなかなか社会に戻れないという構図は共通している。大学を休学した後に中退し、一時家から出られなくなった千葉県の男性(36)は「レールを外れた時点で僕の人生は終わったと思った」と打ち明けた。埼玉県の男性(36)は「35歳を境に就職も結婚もあきらめた」と言った。あまりにも早い見切りに思えるが、この男性には社会の壁が、それほど高く見えるということだ。

 厚生労働省は新年度、全国にひきこもり地域支援センター(仮称)を設置する。本人が外に出られない場合、第三者が家へ出向いて状態を把握する必要があるが、民間の訪問カウンセリングは割高で、経済的余裕のない家庭には利用しにくかった。支援センターの新事業では家庭訪問なども検討されており、関係者の期待は高まっている。

 だが、難しいのは、一歩外に出られるようになってからだ。自由に過ごせる「フリースペース」なども各地に作られているが、やっとの思いで参加しても、居心地の悪さを感じたりして足が遠のく人もいる。ニート支援策として、3カ月の合宿で就労意欲を身につける厚労省の「若者自立塾」は全国に約30カ所あるが、利用者は定員の4割に満たず、徐々に規模を縮小。同じく就労支援施設の「若者サポートステーション」は就労・進学率が25%程度にとどまる。ある担当者は「成功率は、引きこもり期間が長く高年齢なほど低くなる」と打ち明ける。

 1月、京都に誕生したばかりの引きこもりの支援グループ「京都ARU」を訪ねた。引きこもり経験のある梅林秀行・代表理事(35)を中心に、地元企業と連携し、フリースペースに来られるようになった人々を短時間就労からフルタイム就労へとつなげている。

 事業所の一部をARUに間貸しする板金加工製品製造業「タナカテック」は、引きこもり経験がある20~30代の2人を正社員で、1人をアルバイトで雇っている。「忍耐強く長い目で見守っていれば、必ず能力を発揮してくれると分かってきた。国際競争力を付けようと躍起の大企業には、無理ですよ」と田中稔社長は言う。地元経営者らの温かいまなざしを見ていると、地域のつながりの大切さを感じる。同様の取り組みは各地にあり、さらに広がってほしいと思う。

 だが、釈然としない。数年前、千葉県内で精神・知的障害者の就労を取材し、障害者を数多く受け入れている地元中小企業がいくつも倒産している実態に直面した。大手企業が派遣労働者を増やし空前の利益を上げる間も、こうした企業は「人を育てよう」と頑張ってきた。それがこの不況下で、深刻な苦境に追い込まれている。善意に頼るだけでは限界がある。

 引きこもりは若者を鍛えるだけでは解決しない。雇用制度や企業のあり方を見つめ直し、若者へのセーフティーネットを充実させることが、結果的に「安心して出てこられる社会」を作ることにつながるはずだ。(東京社会部)

(出所:毎日新聞 2009年2月20日 0時33分)
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8 コメント

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たまには宣伝を… (仮)山田二郎)
2009-02-26 16:30:17
本日の赤旗で面白い事が書いてあるね。

「派遣法はこう定めています。派遣元は制限期間が迫ると派遣先に対して「派遣制限期間がきます」「これ以上は派遣しません」と通知しなければなりません。派遣先は通知を受けた上で、さらに使い続ける場合、雇い入れ義務が生じます。…以後略」

これって、派遣労働者を後ろから撃つ行為にしかならんわな。
まあ、赤旗や共産党の裏切り行為は、今に始まった事じゃないが…

本日の赤旗は、橋下憎しの大阪ローカルネタや「君が代強制」ネタと言い、飛ばしまくりだよん。
皆も買って楽しみましょう。
返信する
自立のためなら何でも (30才)
2009-04-10 23:37:21
僕も以前はひきこもりでした。
ある時期から、犯罪や違法な仕事で恐ろしいほどの金額を稼ぎ、
一部だけ口座を作り、「ちゃんと働いた証拠」として親に通帳を見せて、安心させました。

親を温泉旅行に連れて行った金も、人を傷付け踏みにじって得たものです。

ひきこもっていた頃の惨めな思いはもうしたくありません。
何もせず家に引きこもって親に「恥ずかしい。どんな仕事でもいいから働け」と毎日言われて、情けない思いをするくらいなら、
どんなことでもやります。犯罪でも。
就職して働いてもタカが知れてます。
だったら、違法だろうが何だろうが、その世界のプロになって家族を食わせます。金に汚いもキレイも無いです。
刑務所に数年入っても、事前に大金を稼いでいれば割に合います。海外の口座に入れるかしておけばいいんです。
両親にバレて問いつめられても、迷うことなく、そう言えます。
ニートや引きこもりになってバカにされるくらいなら、殺人でも強盗でもやって余りある金を奪って甘い汁を吸うほうがマシです。
悪魔と言われても何とも思いません。
返信する
30才さんへ。 (東西南北)
2009-04-11 01:16:52
 はじめまして。

 確かに、真面目に勤労してみても不安定雇用、低賃金の労働条件です。他方で、大企業は利益を大量に溜め込んでいます。大資産家も同様です。真面目に勤労する人々が惨めな思いをさせられているわけです。大部分の人間は、このような賃金労働者です。しかし、冷静になって考えてみると、非正規雇用、低賃金労働者の勤労のおかげで人間の消費生活が成り立っているのではないでしょうか?日常必需品は、すべて人間の労働力が作り出したものです。ですから、どんな勤労であっても、真面目に勤労するということは人類社会への貢献になっているし、それが虐げられている人間の小さな誇りではないでしょうか?どんな大資産家でも、どんな大企業でも非正規雇用、低賃金の労働者がストライキでもしたら、生産できなくなるし、生活もできません。人類が人類である限り、真面目に勤労しないで生きていくことはできないわけです。

 どんなに見下されても、自分が真面目に勤労していることを冷静に見つめ直して、自分が生きてきた過去を振り返って、自分の健康と生命に対して、どれだけの人間の労働力が注ぎ込まれてきたのか、ということを静かに胸に問い直してみることも必要です。涙が出てくるのではないでしょうか?

 このように人間が生きていくには、人間の労働力、共に生きていく人類の生き方が欠かせません。にもかかわらず、職業選択の自由はおろか、雇用もないし、不安定で低賃金、あげくに真面目に勤労している人々への感謝、連帯の感情が弱められています。そして、犯罪者、不法行為者への排除、憎悪、厳罰化の感情はすさまじく強烈にあります。

 人間は1人では生きていくことができません。一人だと自殺に追い込まれたり、犯罪への道へ追い込まれたりします。

 人類、人間を貶める勢力とは、暴力ではなく言論と政治運動、労働運動の力で団結し、連帯して闘うしか道はありません。今の日本には、一人でも入れる労働組合もありますし、日本共産党もあります。

 犯罪や違法行為による金儲けではなく、人間の労働力と生活に対する信頼を取り戻すような「自立」の道を探ってみませんか?人間を苦しめている悩みの原因、根源に何があるのか?それをどうやって変えていくのか?人類社会を当たり前の姿へ変えていくことは可能です。団結・連帯しながら、人類の遺産である書籍から人類社会の仕組みを学習し、どうすれば人類社会を進歩させることができるのか?どんな生き方をすれば自分らしくまともに生きることができるのか?

 真面目に勤労し、生きていこうとしている人間に対して、雇用先を紹介しないようなハローワークだったり、生活保護も受けさせない行政であったり、真面目に勤労し、みんなの労働条件を改善しようとがんばる労働組合員への差別、不法行為であったり、前途は多難ですが、何度も原点に立ち返り、共に勤労し、共に生き、共に闘い、共に学習し、本当の意味で高めあっていける人間関係を自分から積極的に築き上げていく生き方そのものに深い感動があるんだと思います。

 スタートは、非正規雇用で低賃金かもしれません。でも、労働組合を結成し、労働条件を高めていくことは可能です。不当な差別には共に闘う人々も存在しています。間違っていないのであれば、頭を下げる必要はありません。正面を見据えて正々堂々と主張してください。全力投球で闘うことは格好いいですよ。人間として。

 日本共産党:http://www.jcp.or.jp/jcp/address/index.html

 全労連・労働相談ホットライン:http://www.zenroren.gr.jp/jp/index.html
返信する
参考です。 (東西南北)
2009-04-11 02:24:19
2007年9月5日(水)「しんぶん赤旗」

“働かんなら死ね”
生活保護行政 北九州市の自殺事件
「もう犠牲者出さないで」
声上げる遺族ら

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 いったい北九州市の生活保護行政は何人の命を奪うのでしょうか。

 同市小倉北区で生活保護が打ち切られた男性(52)が七月十日、変わり果てた姿で発見された事件は、市民らによって福祉事務所長の告発にまで発展しています。

 ところが、その一カ月前の六月十日早朝、同じ区内で別の男性(61)が自ら命を絶っているのが発見されました。所持金はわずか千円。五日前には、生活保護の申請を拒否されていました。男性はケースワーカーから「働かんなら、死ね」といわれたと友人に話していました。

餓死男性と同じ

 男性には三人の息子がいます。長男(37)の家には、父親の遺影が掲げられ、仏壇には三男の結婚式での笑顔の写真が飾られていました。

 「親父も餓死したあの男性と同じじゃないか。もう、犠牲者はださんでほしい」。長男は切々と訴えます。

 これまで生活保護を受けられず命を失った人の家族や関係者は言葉すくなでした。しかし、保護行政のあまりのひどさに遺族らが憤りの声を上げ始めました。

 自殺した男性は市内の目ぬき通りに土地を持つ企業家でした。バブルがはじけ家族や財産を失い、知人宅を転々とする生活になります。

 息子たちは自らの生活を支えるのに手いっぱいで父親を援助する余裕はありません。男性も息子らの世話を受けるのを拒みます。

 それでも、長男、二男が別々に福祉事務所を訪ねて父親の保護を求めます。ところが窓口の担当者は「親族が支援できないのですか」と冷たくあしらいます。「困っているから相談に来たのに…」と返す言葉もなく、生活保護行政に「ものすごく疑問を持った」と長男は話します。

病気おし日雇い

 男性は命を絶つ前日、アパートに住む隣人(57)と初めて碁を打ちます。「礼儀正しくもの静かでいい方だなーと思った」と隣人はいいます。

 男性は昨年三月には慢性肝硬変に肺炎を併発し二カ月入院。その後も脳出血、胆のうを患うなどで別の病院に入院します。退院後、病気をおして地元の金属関係会社で一日六千円の日雇い仕事をして日銭を稼ぎ命をつないでいました。

 男性をよく知る八十代の女性は、男性が働ける体でないのにケースワーカーが「仕事をしろ」と責めたて、男性に「もう死ぬよりほかない」という言葉を投げつけたと証言します。

 保護費は四月二日に十万円が支払われますが、その後、生活保護が打ち切られたと思われます。それ以後、四月二十五日には九万円、五月二十五日には十一万四千円の収入があったと思われますが、病気がひどくなり仕事もできなくなり失業します。

 男性が住んでいたアパートの大家は「月三万三千円の家賃を二カ月分いただきました。きちょうめんで手先が器用な人でした」といいます。

 亡くなる五日前、生活保護の再申請を求めて福祉事務所を訪れた男性に対応した面接主査は、声を荒らげてこういいます。「五月末の金は何に使ったんですか。職を探して来てください」

 男性はいいます。「とりあえず(生活保護の)申請書を書く、大変なときに受理してほしい」

 主査は「申請書を出してもいいが、預かることはできない。仕事を探す努力をして、本当にこれだけ努力したとなれば考える。二週間後に来てほしい」と申請書を渡しませんでした。

 門司区で保護の申請を計三度拒否され昨年五月餓死状態で発見された男性(56)にも、小倉北区で辞退届を書いた男性にも、「困ったときに相談に来てください」といって援助したと市の担当者は口をそろえていいました。しかし、“生活に困ったから”と相談にいったこの男性の再申請を市は受け付けませんでした。

市は取材受けず

 この事件について市は記者会見をしませんでした。取材の申し入れに「福祉事務所内で相談して、取材は受けないことになった」と答えています。事件を闇に葬ろうとするのでしょうか。

 男性が亡くなった後、日本共産党の大石正信市議が市の責任をただすと驚く答えが返ってきました。「二週間働く努力をして、その後に来てくださいといっているので市の落ち度はない」(小倉北区第二保護課長)、「表彰されていいくらい丁寧にやっている」(面接主査)と開きなおりました。

 予算の枠内に保護人数をおさえる数値目標、申請書をなかなか渡さず申請権を侵害、稼働年齢の人に働けと迫って自ら保護を辞退させる―“違法”といえる保護行政が同市では今も続けられています。

 「生活保護を受けられず食べるものもなく命を落としたり、自ら命を絶つ痛ましい事件があいついでいることに心が痛みます」と大石議員。

 「このような事件をもう二度と起こしてはなりません。市民の命を守ることを最優先する市政に変えなくては」。大石議員は決意を語りました。(矢藤 実)

2007年7月14日(土)「しんぶん赤旗」

事件リポート
北九州市 孤独死事件
“行政の責任”
生活保護打ち切り 就労状況も把握せず

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 「行政に見殺しにされたようなものだ」―。北九州市小倉北区の男性(52)が生活保護を打ち切られ、自宅で孤独死した事件に、市民の間から衝撃が広がっています。(佐藤高志)

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 JR小倉駅からほど近い住宅街にある、男性の自宅。外壁には穴があき、屋根の一部は崩れ落ちています。電気、水道、ガスはすべて止められていました。

 「夜中に心配になり、真っ暗な部屋の奥で横になっている男性の様子を、たびたび見守ってきた」という近所に住む女性は、「土気色でやせこけ、目はドロッとしており、とても働けるような状態ではなかった」といいます。

 近隣の住民の話を総合すると、亡くなった男性の健康状態は悪く、当面の生活資金もライフラインもまったく改善しないままでした。男性の保護の開始要件とされた「窮迫」性は解消されているとはいえない状況で生活保護廃止決定がされた、といえます。

就労指導

 北九州市は、今回の保護廃止の決定について、「男性本人が働いて自立したいとの申し出があった」「男性が保護の辞退届を提出した」としています。日本共産党北九州市議団の調査などによると…。

 昨年12月6日 勤めていたタクシー会社を病気でやめた男性が小倉北区福祉事務所を訪問。

 同月7日 保護申請。

 同月26日 保護開始。緊急に開始されたのは、市立医療センターの診察で、糖尿病、高血圧、アルコール性肝障害と診断され、電気、水道、ガスが止まり所持金もなく「窮迫」と判断したため。

 ことし1月 保護開始とともに、就労指導があり、「求職活動」の報告書を出すよう指導。

 3月終わり 通院しながらも、求職活動するよう指導。

 4月2日 保護費支給日に男性から「働いて自立したい」と申し出があり、保護課の助言で「保護の辞退届」を提出させる。

 4月10日 保護廃止。

 7月10日 死後約1カ月とみられる遺体で発見。

 なお、日記には「働けないのに働けといわれた」とあり、死の直前と思われる六月上旬には「おにぎりが食べたい」と書かれていたといいます。

 近隣住民は、「生活保護を廃止すれば、どうなるかは誰でもわかる。行政に見殺しにされたようなものだ」と怒りを隠しませんでした。

申し入れ
 男性の孤独死は氷山の一角ではないか―。同市を歩くと、生活保護受給者に「辞退届け」を書くよう職員に迫られて困った人もいました。

 福祉事務所のやり方を手紙で市に告発した戸畑区に住む四十代の女性には、中学三年生の娘がいます。この女性は福祉事務所から、わずか三カ月の間に四十回近くの訪問指導を受け、精神的に追い詰められ、「自立を妨害された」と訴えました。

 手紙によると、事前の連絡もなく突然訪問され、「親として何をやっている!」と面と向かってののしられるなどの侮辱を受けたといいます。体重は二カ月で七キロも減り、うつ病にまでなったといいます。

 日本共産党の柳井誠市議は、「今回の事件は、過度な就労指導を通じて保護を廃止する『切り捨て作戦』の一端ではないのかと指摘せざるをえない」と話します。

 事態を重視した日本共産党市議団は十三日、北橋健治市長に対し、緊急の申し入れをおこないました。申し入れ書は、就労指導が過度にならないよう改善する、自立支援という観点から保護打ち切り後もサポートできる体制をつくることなどを要請しています。

 対応した石神勉秘書室長は、「要請項目は、市長に必ず伝える」と述べました。

もやいが緊急声明
市・厚労省に送付

 北九州市で生活保護を打ち切られた男性が孤独死した事件で、NPO法人自立生活サポートセンター・もやいは十三日、緊急声明を発表し、同市と厚生労働省に送付しました。

 声明は、辞退届提出が男性の真意に基づくものだったのかなど五つの疑問を投げかけ、同市が説明責任を果たすべきだと指摘。「自立」の美名のもと、生活保護から半強制的に追い出される人が全国に多数いるとのべ、同市による事件の検証、全国の福祉事務所による不適切な指示書の乱発や辞退届強要、違法な職権廃止の中止、政府の「自立支援」の見直しを求めています。

 生活保護問題対策全国会議:http://seihokaigi.com/seihosoudan.aspx
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Unknown (すまり)
2009-04-11 09:01:39
昔からありましたよね。
何か問題が発生すると、何かをいけにえにして責任をかぶせて安心したくなることって。
たとえば、ドリフターズなんてその格好の対象でしたよね。

派遣切りを今回はいけにえにしているだけ。

これが
「正社員になったが、責任が増えたことに耐えられず、むしゃくしゃして犯罪を犯した」
だったら、今度は、正社員に責任を持たせることをいけにえですか?

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Unknown (すまり)
2009-04-11 10:06:25
>職業選択の自由はおろか、

他の場所でも書きましたが
「あなたのいう職業選択の自由」とは、具体的にどのようなことをさして自由である。現状はそれと比べてどこが不自由であるか、具体的に説明していただけないでしょうか?

あなたの論調を見ていると、まさかとは思いますが
「だれでも望んだ職業につける自由」
じゃありませんよね?
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Unknown (todo)
2009-04-11 14:08:00
>「だれでも望んだ職業につける自由」

マルクス主義では働く動機が「生活物資を手に入れる為」ではなくなるわけでイメージとすれば、全部オートメーションでやるから人間は働かないでも食えると。これで職業観が全く変わるはずだった。
ただ、GDPの7割、労働人口の8割がサービス業といった国の場合どう説明するんでしょうか。
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Unknown (すまり)
2009-04-11 16:44:44
極端に言えば、自動車整備工の希望者が多いとして、すべてをその職業につかせたら、たとえば車10台に1人の整備士がいるなんてことにもなりかねない。
整備士の給料が社会保障などすべて含めて500万と考えても、1台の車から年間50万の収益をあげなきゃならないから、結局車にかける規制を多くして、年間多額のお金を「法律に沿った点検整備のために」使わせるようなことをしなきゃならない。

そういう事態の解決法すら提示していない。
第一「職業選択の自由が現在奪われている」と言っているが、具体的にどのように奪われているか知りたいものだ。

それとも、労働者はすべて自分の望んだ職業につく権利があり、資本家や企業はそれを受け入れる義務があるとでも言うのだろうか?
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