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自殺実態白書:自殺に地域性あり 高リスク地を一覧に 山梨・富士吉田署管内が最多

2008-07-07 06:49:28 | 国内社会
自殺実態白書:自殺に地域性あり 高リスク地を一覧に 山梨・富士吉田署管内が最多

 ◇東京・千代田区は40代男性被雇用者
 警察庁のデータを基に、学識者らが自殺者の特徴を市区町村単位で整理した「自殺実態白書」がまとまった。原因や動機、職業などについて自殺者数が多い順に示し、地域の特徴を浮き彫りにした。市区町村や警察署単位で自殺の実態が全国規模で判明したのは初めて。また自殺の理由は一つではなく、平均で四つの「危機要因」を抱えていることも分かった。関係者は行政などの自殺防止対策の推進につながると期待している。【玉木達也、清水健二】

 学識者と弁護士、NPO法人代表らで作るプロジェクトチームが、04~06年の自殺者計9万7032人を分析。各警察署で起きた自殺データを、市区町村単位に再集計した。メンバーが4日、自殺問題を担当する岸田文雄・内閣府特命担当相に白書を提出し、対策の充実を求める。NPO法人「ライフリンク」(清水康之代表)がホームページに4日、公開する予定だ。

 ●職業でも傾向

 全体では遺書のあった人の動機は(1)経済・生活問題(2)病苦など(3)家庭問題の順に多かった。職業別では(1)無職(2)被雇用者(3)自営業者。警察署単位では(1)山梨県警富士吉田署(2)福岡県警早良署(3)青森県警青森署の順だった。各署ごとの傾向は、全体では6位の愛知県警豊田署(豊田市など)は被雇用者では1位。17位の北海道警旭川東署(旭川市など)は「病苦など」が1位だった。自治体別では、東京都千代田区では40代の被雇用者の男性、大阪市西区は40代の自営業者の男性、熊本県合志市では40代の無職の男性が最も多いなど、地域により自殺者の傾向に違いがあった。

 清水代表は「市町村関係者から、自殺の実態が分からないから具体的な対策ができないという声がある。白書を自殺対策に生かしてほしい」と話している。

 ●危機要因四つ

 自殺の理由は一つではなく、平均で四つの「危機要因」を抱えていることが分かった。

 自殺した305人の遺族や知人から聞き取り、背景事情として家庭や健康、経済問題などにかかわる68項目を「危機要因」ととらえて調査。その結果、自殺時に危機要因が一つしかなかった人は4%だけで、平均で四つの危機要因があった。

 危機要因は(1)うつ病(2)家族の不和(3)負債(4)身体疾患(5)生活苦(6)職場の人間関係(7)職場環境の変化(8)失業(9)事業不振(10)過労--の順に多く、上位10項目で全体の約7割を占める。それぞれの要因は互いにつながっており、会社員なら「配置転換↓過労や職場の人間関係悪化↓うつ病」、経営者なら「事業不振↓生活苦↓多重債務↓うつ病」といった経路が典型的だった。失業といじめ、アルコール問題と家族の死亡など、因果関係がはっきりしない要因が連鎖しているケースもあった。

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 ■解説

 ◇自治体対策、後押し
 白書は自殺の発生が多い警察署の上位を「自殺のハイリスク地」として一覧にした。住所地ではなく発生地の統計で、関係者からは誤解や偏見を生むと慎重な声もあった。だがチームは、ハイリスク地は自殺対策を行うための「絶好の介入ポイント」と判断し、あえて明らかにした。背景には98年以降、自殺者が10年連続で3万人を超え具体的な対策が「待ったなし」となっている状況がある。

 自殺対策基本法が06年10月に施行され、国や自治体は自殺対策の責務を課せられた。ただ、多くの自治体は啓発活動が中心で、自殺に追い込まれる人々を救う動きが十分に取れていない。全国や都道府県単位の傾向が分かっても、市町村単位で自殺者の顔が見えないことが大きな理由だ。

 白書はその壁を破る第一歩になる。富士吉田署は自殺志願者が集まる青木ケ原樹海を管内に持ち、千代田区にはオフィス街があり被雇用者が多いなど、地域的特性がある。一方で、なぜ自殺が多いのかはっきりしない地域も多い。白書をきっかけに各地域で原因を掘り下げ対策に動けば、自殺者を減少させる流れを作れそうだ。【玉木達也】

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 <管内の自殺者が多かった警察署>

 (1)山梨・富士吉田署(富士吉田市、南都留郡)389人

 (2)福岡・早良署(福岡市)         330人

 (3)青森・青森署(青森市、平内町)     291人

 (4)福岡・筑紫野署(筑紫野市、太宰府市など)280人

 (5)茨城・水戸署(水戸市、大洗町、茨城町) 277人

 (6)愛知・豊田署(豊田市、三好町)     269人

 (7)北海道・札幌北署(札幌市、石狩市など) 264人

 (8)青森・八戸署(八戸市、階上町)     261人

 (9)北海道・函館中央署(函館市、北斗市など)260人

(10)大阪・枚方署(枚方市、交野市)     259人

 ※カッコ内は管轄地域、人数は04~06年の合計

(出所:毎日新聞 2008年7月4日 東京朝刊)

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