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岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

2019年の作品より五首抄出

2020年02月06日 01時57分53秒 | 岩田亨の作品紹介
2019年の作品より五首。

・金星が輝く夜に思い居りジャンバルジャンも闘いたりき「星座α」

 ジャンバルジャンは「レミゼラブル」の主人公だ。銀の燭台を盗む場面で有名だが、原作はビクトルユーゴー。フランスのロマン主義の大作。フランスの民主主義革命を描くのが主題だ。最終場面では、ジャンバルジャンが、革命軍に身を投じ、敵軍の兵士を標的に銃を発射する。兵士のヘルメットを狙って死なないように。これは案外知られていない。ミュージカル「レミゼラブル」ではそれが描かれている。「民衆の歌」はその挿入歌だ。

・美しき海が埋められゆくことを繰り返さるる悲劇と言わん{星座α」

 沖縄の辺野古を念頭に置いた。沖縄の事はなかなか作品に出来なかった。このブログにも書いたが、沖縄の歴史があまりにも重いからだ。自分のなかで整理することが沢山あった。市民運動に参加し、沖縄問題の学習会に参加して、ようやく心の整理がついた。そこで作品化した。先行する作品としては「辺野古」の地名を入れたものがあるが、何とか地名に頼らない作品を模索して、これに落ち着いた。佐藤佐太郎の「奄美大島の歌」の影響が大きい作品だ。


・折れそうな心かかえて生きているこの日日に平安よあれ「星座」

 2020年の「星座α」の最新号にエッセイを書いたが、僕が短歌を始めたのは、「悲しみに押しつぶされそうな時期に短歌という表現方式があったから」。その悲しみと苦しみは今でも消えない。未だに夢に出てくる。寝込んでしまうことも多々ある。それを作品化した。この痛みはおそらく一生続くと思う。

・標的は誰々誰と思いつつ言葉研ぎたり七月の午後「星座α」

 短歌には特別の思いがある。その一端は、現代歌人協会の会報に書いた。だからこの標的は短歌作家と考えてもらってよい。僕がどういう短歌を目指し、誰を標的にしているかは、このブログの記事を読んでもらえばわかると思う。

・地底より突きあぐるごとのどかわき深夜の部屋に冷茶飲み干す

 「地底」は「ちぞこ」と読みたい。荒木栄という音楽家の「地底の歌」の歌詞に前例がある。ここは僕の語感の問題だが、「ちぞこ」のほうがしっくりくる。悲しみゆえに、苦しさゆえに深夜に目をさますことが多い。冷茶も飲むが、酒を飲むことも多い。こういう題材はおそらく繰り返し詠むことになろう。




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