岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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短歌総合誌8月号を読む『短歌』『短歌研究』『歌壇』2016年

2016年09月02日 15時09分59秒 | 総合誌・雑誌の記事や特集から
『短歌』 2016年8月号 「特集:戦後71年・うたびとの証言」

 ここでは55人の歌人が戦争体験を語っている。なかでも注目したのは、岩田正、秋葉貴子、橋本喜典、石橋妙子、百々登美子、青田伸夫、勝井かな子、木村草弥、水野昌雄。現代と重ね合わせて語っている。


 特に岩田正は「過ちはくりかえすのか」と題して書いている。これは読みごたえがある。


 「残すべき戦争詠」は昨日の記事にした。


『歌壇』 2016年8月号 「特集:短歌が語る敗戦・終戦」


 ここでは昭和20年代の歌集を通して1945年8月15日前後が短歌でどう表現されているかがまとめられている。

 対象になった歌集は7冊。『埃吹く街』近藤芳美著、『幸木』半田良平著、『山西省』宮柊二著、『小園』斉藤茂吉著、『薔薇祭』大野誠夫著、『冬木原』窪田空穂著、『帰潮』佐藤佐太郎著。


 なかで注目したのは、近藤芳美、宮柊二、斉藤茂吉、大野誠夫、佐藤佐太郎の4人だった。


 近藤芳美と宮柊二は「戦後リアリズム」と言えるような内容。近藤芳美は戦後社会をリアルに表現し、宮柊二は兵士としての戦争体験を加害者としての自分をも表現している。


 斉藤茂吉は1845年の8月15日まで敗戦を疑わなかったというから深い悲嘆の念を表現している。大野誠夫は歌集のタイトルが示すように戦後の希望を表現している。佐藤佐太郎は戦後の貧しさのなかで社会を切り取り、生活の悲しさを主情的に表現している。

 この特集は面白かった。これらの歌集を読もうという読書意欲が刺激される。


『短歌研究』2016年8月号 「特集:71年目の8月」


 ここでは27人の歌人が執筆している。

 冒頭は篠弘の論考。タイトルは「表現の危機を怖れる」。見開き4ページで内容が充実している。現代の視点にたっての論考だ。内容にはやや不満に感じるところがある。歌人の戦争責任を曖昧にしているところだ。


 続いて12人の歌人が戦争体験を語っている。続けて戦後世代の歌人が先人の戦争詠を3首ずつ引用し、鑑賞ののち自作の短歌を返歌としている。編集に工夫がみられる。


 これらは今からでも手に入る。戦争と短歌を考えるかたに一読を勧めたい。




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