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書評「憲法は誰のものか」伊藤真著

2018年02月14日 00時14分23秒 | 書評(政治経済、歴史、自然科学)
「憲法は誰のものか」伊藤真著 (岩波ブクレット)


 立憲主義が注目されている。本書は立憲主義を分かり易く叙述した一冊だ。副題が「自民党改憲案の検証」。


 だが逐条的な叙述ではなく、立憲主義の核心の部分に焦点を絞った著作だ。ここでは自民党改憲案をもとに立憲主義が説かれる。


 ・憲法は一般の法律とどこが違うか。「法律は国家が制定し、国民が守らねばならないもの」。「憲法は国民が制定し国家が守らねばならないもの」。ここが立憲主義の核心だ。


 だから「伝統を重んじ」「家族の在り方」など個人の価値観に及ぶものは憲法に書き込むべきではない。納得できる論だ。また特に九条改憲に焦点をあてている。


・立憲主義、平和主義が日本の歴史に適合したものであること。立憲主義、人権思想が西洋の文化であるという自民党改憲案の批判。


・集団的自衛権の意味、国防軍は自衛隊の名称変更ではない、国土領土を確保する方法、国家緊急権の危険性。これが「平和主義から『戦争のできる国へ』」というキーワードで論じられる。


 また自民党改憲案の問題点を「人権の縮小、義務の拡大」という視点から論じられる。「憲法は国家権力を縛るものであって、義務は最小限の規定にすべきだ。」日本国憲法は権利ばかり書いてあって、義務があまり書かれていない。」とする俗説への明解な見解だ。


 最後に憲法の改正手続きについて。ドイツの基本法は行政手続きを書いてあろので頻繁に改正された。アメリカは国家の権限をより強く規制するために「大統領の三選を禁止した」。だから自民党改憲案のように国家への縛りを緩める改憲はそもそも立憲主義に反する。


 著者は司法試験の指導をしている。それだけに憲法問題を専門外の人にも理解しやすいように叙述している。これが本書の一番の特徴だろう。




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