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書評:「東京大空襲」早乙女勝元著(岩波新書)

2014年08月17日 23時59分59秒 | 書評(政治経済、歴史、自然科学)
「東京大空襲」早乙女勝元著 (岩波新書)

 本書は1975年7月に第13冊を出版している。第1刷が1971年だから。急速にベストセラーになったことになる。なぜか。それは本書の序章と終章に記載されている。


 (序章より)

「あえていうまでもないことであるが、東京大空襲に関する資料は、8万人からの死者、100万人をこえる罹災者の重苦しい思いにくらべ、あまりにも少ない。・・・個人の単行本が、ほんの二、三冊思いつくていどである。」

 (終章より)

「(早乙女が家永三郎に向かって)『先生、原爆はどうしても教科書に残してほしいと思いますが、残していただきたいものが、実はもう一つあるのです。』私はそれを東京大空襲の無差別攻撃です、といった。『なるほど、3月10日には、8万人もの都民が新でいるのですからね。』『ええ、わずか2時間22分の空襲で、8万8000人。私が調べたところでは、ざっと10万人が死んだのです。』『2時間22分?そんなに短時間にですか。そこまでは知りませんでした。』

 高校生向けの歴史教科書を執筆して、教科書検定に不合格となった、家永三郎が東京大空襲については、よく知らなかったのだ。つまり本書は、日本で初めて書かれた、東京大空襲の本格的記録だと言える。10万人の死者と言えば、広島、長崎の原爆投下に匹敵する。

 本書は、罹災者の証言、アメリカ側の資料によって、構成されている。非戦闘員に対する無座別攻撃。明らかな国際法違反だ。アメリカの戦争責任も本書によって明らかとなるだろう。

 個人的な話になるが、本書に出会ったのは、中学1年生の時だった。

「岩田、すごい本があるぞ。」と同級生から紹介されたのが、本書だった。その日に借りて行った本書を、3時間で読みとおした。衝撃は大きく、頭がくらくらしたのを覚えている。

 散文による戦争の記録の力を感じさせる、一冊である。



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