「米軍基地を押しつけられて」伊波洋一著 創史社
本書は「沖縄からの告発文」である。誰が誰を「告発」しているか。それは、米軍、日本政府、世界中の人々へ悲鳴に近いものを訴えている。
まず、冒頭の地図に驚かされる。「沖縄に基地があるのではない。基地の中に沖縄がある」と言った若者がいたが、それが実感される。沖縄本島の一等地はほとんど米軍基地によって占有されている。
次に、本書の内容。1995年9月4日に起こった、3人の米海兵隊による小学生少女暴行事件。「長期駐留する米軍と広大な沖縄米軍基地の実態と後米安保体制への疑問を全国民に問いかけるものとなった」と、著者は述べる。
その1995年から2000年までの、沖縄の米軍基地をめぐる諸問題が、本書のテーマである。目次で一目瞭然だ。
沖縄に集中する米軍基地ー基地被害を放置する国・本土
1995ー2000沖縄レポート
米軍基地で女性に被害ー少女レイプ事件がつきつけたもの
県民の土地を奪う国・本土
米軍基地問う県民投票実施ー投票者の90パーセントが基地「ノー」を表明
多発する米軍の事件・事故ー環境汚染、墜落事故、山火事などで危険
米軍演習で県民を侵害ー米軍部隊配備で実弾砲撃演習
「変換合意」された普天間基地ー許されない名護海上ヘリポート基地
日米防衛協力と沖縄基地ー新ガイドラインで戦争をする国へ
知事交代とそしてサミットー太田知事から稲峰知事へ、県政180度転換
沖縄から本土への訴えー基地のない沖縄へ
最終章から以下の抜粋をする。
「沖縄線で亡くなった戦没者総数は20万人を超え、一般住民の戦没者も約10万人にもなる。」
「沖縄戦で捕虜にされた沖縄住民が沖縄本島数十ヶ所の収容所に入れられている間に米軍が将来の米軍基地のために接収した土地は、本島の52ヵ字(=集落)に及び、今日の米軍基地の大半を構成し、戦後の強制接収は、伊江島や宜野湾伊佐ヶ浜などの6ヵ字である。」
「ベルリンの壁が崩壊して10年を経過した今日の世界で、第二次世界大戦の名残が残っているのは沖縄の米軍基地だけではないか。人権外交を標榜する米国は、自らの国益を最優先する沖縄において人権を語る資格はない。」
「米軍基地が沖縄県民を守っていると考える県民はほとんどいない。本土の人々は米軍によって守られていると感じているのだろうか。」
「沖縄では県民一人一人が米軍基地について考えているが、本土の多くの人々の多くは、日本の繁栄は日米安保によって支えられていると漠然と考えているのではなかろうか。」
巻末の年表によれば、小学生少女レイプ事件の起こった1995年には、米軍兵による事件、事故が8件も起きている。この年本土では「日米地位協定」の問題(犯人を日本側にすみやかに引き渡す)と考えられた。沖縄の米軍基地を縮小する問題とはならなかった。
そういう面でも、沖縄の現状を知るうえで価値のある一冊である。