JR福知山線脱線事故
(Yahoo!ニュースより)
えらいことになってしまったものだ。今まで交通業界は大事故が起こるたびに、それに対する策が講じられ、安全性は昔に比べたら飛躍的に向上してきたはずだ。それでも、またこうして多数の死傷者が出てしまった。こういう事故が起こるたびに「何とかならなかったものか」と考えるが、結局は空しくなるだけだ。人間、生きている以上アクシデントはつきものだが、それにしても痛ましい。かつて公共交通機関(バス会社)に勤務していた人間だからか、事故の重大さは人一倍心に響き、胸がつぶれそうになる。
亡くなられた方々のご冥福と、負傷された方々の一日も早い回復を祈る次第である。
特に、運転士に何が起こったのかを知りたい。まだ運転歴が浅く、過去にオーバーランで処分を受けていたと聞く。事故直前にも伊丹駅でオーバーランをしていたそうだ。勤務状況に問題はなかったか、健康状態は良好だったか。ついこの前も、鉄道事故を起こした運転士が睡眠時無呼吸症候群(SAS)だったということで話題になった。それとも、ひょっとして焦りやすい性格で何かミスを起こしてしまったのか。
私がバス会社にいた時、自分のいた営業所で死亡事故が起こってしまったことがある。自転車乗りのお年寄りが車体に接触して転倒したところを、後輪で巻き込んでしまったのだ。事故を起こした運転士は若く、勤務態度は非常に真面目で増務の要請にもいつも快く応じてくれる人だった。事故を起こしたその日も実は公休出勤(公出)で、しかもダイヤを2本こなしている途中だった。
ここで、バス運転士の乗務スタイルについて説明させていただきたい。運転士は基本的に1日2回乗務する。早朝から昼までの「早番」。午前9:00~11:00あたりから午後6:00~7:00あたりまでの「中番」。昼から夜までの「遅番」。朝1回夕方1回、午前中1回夜1回など、中休時間が長い「長中」。夕方から深夜まで3回乗務し、翌日がオフになる「深夜」。夕方から深夜まで2回、翌朝1回乗務の「泊まり」。早番+午後の増務1回、あるいは遅番+午前の増務1回の「ダイヤ付き(コブ付き)」。これが私のいた会社の基本的スタイルで、運転士は隔週で早番中心、遅番中心のローテーションで乗務していく。
で、ダイヤの数と比べて運転士の数が少ないため、どうしても運転士に公出や、早番+遅番の2ダイヤ増務を頼まねばならなかった。私のいた時は運転士が極端に足りない状況で、よく欠番が出なかったものだと、今でも密かに誇りに思っているぐらいだ。
運転士にも、増務や公出を積極的にやって稼ぐ人、自分からはあまり言わないけれど頼まれれば公出や増務をしてくれる人、自分の充てられたダイヤしかやらない人、変番を駆使して、ひたすら遅番など自分の好きなダイヤだけやる人、などなど色々なタイプがいたが、全体的には運転士も事務員もかなり過酷な勤務状況であった。事実、辞めて5年になるが、面識のある人だけでも10人は亡くなっている。しかも、現役のまま亡くなった人が圧倒的に多い。ちなみに私が辞めたのも、ある運転士の急逝が引き金となってうつになったのが原因である。そのことはまた別の機会に。
話を戻すと、件の運転士は本来なら中番ダイヤに乗務する予定だったのが、急に欠員が出たため、変番して早長中+遅長中の2本乗ってもらうことになったのだった。普段は公出はしても2本は乗らない人だったのだが、この日に限っては珍しく事務員の要請を引き受けてくれたのだ。そんな時に限って、事故は起こってしまった。一応、運転士は月80時間以上の増務はしてはならない事になっている。しかしぶっちゃけた話、それをバカ正直に遵守していたら交番表が組めないのが現実であり、あの手この手を使ってごまかしていた。その人も、実際には80時間オーバーなんてしょっちゅうで、この事故で労働基準監督署からガサ入れが来たのも、当然の話であった。
ちなみに、その運転士はダイヤを外れて車庫誘導員としてしばらく営業所にいたが、遺族側との話し合いが比較的スムーズに進み、問題解決後に全く畑違いの仕事へ転職していった。
この日の交番表を組んだのは私だ。私がその人を公出させなければもしかしてこんなことには…。もっとも、向こうが公出希望を前もって出していたので(ノートに書き付ける方式になっている)、それに則ってダイヤを割り振ったまでだが(変番は別の事務員が頼んだ)、後味の悪さは残った。これも後々うつに至る一つの伏線になっている。
本来なら、会社側が運転士の数を増やせば話は済むだろう。しかし、バス業界はどこも厳しい財政難である。事務員も運転士も大半は、その仕事量と比べて収入が釣り合っているとは言いがたい。中には「ただでさえ苦しいのに、やたらに運転士の数を増やされて仕事が減ったら生活ができない」と訴える運転士もいたりする。事はそう簡単ではない。
諸般の事情でダイヤを減らせば減らしたで「不便になった」と文句を言われ、さらに乗客が減る悪循環。ちょっとでも遅れれば営業所に電話が入って「間引きしているんだろう!?」などと罵声を浴びる。夜中2時にクレーマー女に電話で絡まれたこともある。カードが故障したというので調べたら異常がないのでそう告げると「あんたカードすり替えたんでしょ。このドロボー!」と因縁をつけられ、クビになってもいいから張り倒してやろうかと思ったこともあった。こうなると「何がお客様のためだ!?客だからってどいつもこいつも図に乗りやがって、ふざけんなー!!!!」とやさぐれたくもなる。もう最後の方は何を信じて働けばいいのかわからない状態だった。
公共交通機関であるからには、何よりも先に守られるべきは安全である。しかし、現実にはこうしたひずんだ世界が展開されているわけで、もし、JR西日本も同じような状態であったならば、この事故は起こるべくして起こってしまったのかも知れない。そうでなかったとしても、重大な事故であることには変わりはない。原因の早期究明を望む。
(Yahoo!ニュースより)
えらいことになってしまったものだ。今まで交通業界は大事故が起こるたびに、それに対する策が講じられ、安全性は昔に比べたら飛躍的に向上してきたはずだ。それでも、またこうして多数の死傷者が出てしまった。こういう事故が起こるたびに「何とかならなかったものか」と考えるが、結局は空しくなるだけだ。人間、生きている以上アクシデントはつきものだが、それにしても痛ましい。かつて公共交通機関(バス会社)に勤務していた人間だからか、事故の重大さは人一倍心に響き、胸がつぶれそうになる。
亡くなられた方々のご冥福と、負傷された方々の一日も早い回復を祈る次第である。
特に、運転士に何が起こったのかを知りたい。まだ運転歴が浅く、過去にオーバーランで処分を受けていたと聞く。事故直前にも伊丹駅でオーバーランをしていたそうだ。勤務状況に問題はなかったか、健康状態は良好だったか。ついこの前も、鉄道事故を起こした運転士が睡眠時無呼吸症候群(SAS)だったということで話題になった。それとも、ひょっとして焦りやすい性格で何かミスを起こしてしまったのか。
私がバス会社にいた時、自分のいた営業所で死亡事故が起こってしまったことがある。自転車乗りのお年寄りが車体に接触して転倒したところを、後輪で巻き込んでしまったのだ。事故を起こした運転士は若く、勤務態度は非常に真面目で増務の要請にもいつも快く応じてくれる人だった。事故を起こしたその日も実は公休出勤(公出)で、しかもダイヤを2本こなしている途中だった。
ここで、バス運転士の乗務スタイルについて説明させていただきたい。運転士は基本的に1日2回乗務する。早朝から昼までの「早番」。午前9:00~11:00あたりから午後6:00~7:00あたりまでの「中番」。昼から夜までの「遅番」。朝1回夕方1回、午前中1回夜1回など、中休時間が長い「長中」。夕方から深夜まで3回乗務し、翌日がオフになる「深夜」。夕方から深夜まで2回、翌朝1回乗務の「泊まり」。早番+午後の増務1回、あるいは遅番+午前の増務1回の「ダイヤ付き(コブ付き)」。これが私のいた会社の基本的スタイルで、運転士は隔週で早番中心、遅番中心のローテーションで乗務していく。
で、ダイヤの数と比べて運転士の数が少ないため、どうしても運転士に公出や、早番+遅番の2ダイヤ増務を頼まねばならなかった。私のいた時は運転士が極端に足りない状況で、よく欠番が出なかったものだと、今でも密かに誇りに思っているぐらいだ。
運転士にも、増務や公出を積極的にやって稼ぐ人、自分からはあまり言わないけれど頼まれれば公出や増務をしてくれる人、自分の充てられたダイヤしかやらない人、変番を駆使して、ひたすら遅番など自分の好きなダイヤだけやる人、などなど色々なタイプがいたが、全体的には運転士も事務員もかなり過酷な勤務状況であった。事実、辞めて5年になるが、面識のある人だけでも10人は亡くなっている。しかも、現役のまま亡くなった人が圧倒的に多い。ちなみに私が辞めたのも、ある運転士の急逝が引き金となってうつになったのが原因である。そのことはまた別の機会に。
話を戻すと、件の運転士は本来なら中番ダイヤに乗務する予定だったのが、急に欠員が出たため、変番して早長中+遅長中の2本乗ってもらうことになったのだった。普段は公出はしても2本は乗らない人だったのだが、この日に限っては珍しく事務員の要請を引き受けてくれたのだ。そんな時に限って、事故は起こってしまった。一応、運転士は月80時間以上の増務はしてはならない事になっている。しかしぶっちゃけた話、それをバカ正直に遵守していたら交番表が組めないのが現実であり、あの手この手を使ってごまかしていた。その人も、実際には80時間オーバーなんてしょっちゅうで、この事故で労働基準監督署からガサ入れが来たのも、当然の話であった。
ちなみに、その運転士はダイヤを外れて車庫誘導員としてしばらく営業所にいたが、遺族側との話し合いが比較的スムーズに進み、問題解決後に全く畑違いの仕事へ転職していった。
この日の交番表を組んだのは私だ。私がその人を公出させなければもしかしてこんなことには…。もっとも、向こうが公出希望を前もって出していたので(ノートに書き付ける方式になっている)、それに則ってダイヤを割り振ったまでだが(変番は別の事務員が頼んだ)、後味の悪さは残った。これも後々うつに至る一つの伏線になっている。
本来なら、会社側が運転士の数を増やせば話は済むだろう。しかし、バス業界はどこも厳しい財政難である。事務員も運転士も大半は、その仕事量と比べて収入が釣り合っているとは言いがたい。中には「ただでさえ苦しいのに、やたらに運転士の数を増やされて仕事が減ったら生活ができない」と訴える運転士もいたりする。事はそう簡単ではない。
諸般の事情でダイヤを減らせば減らしたで「不便になった」と文句を言われ、さらに乗客が減る悪循環。ちょっとでも遅れれば営業所に電話が入って「間引きしているんだろう!?」などと罵声を浴びる。夜中2時にクレーマー女に電話で絡まれたこともある。カードが故障したというので調べたら異常がないのでそう告げると「あんたカードすり替えたんでしょ。このドロボー!」と因縁をつけられ、クビになってもいいから張り倒してやろうかと思ったこともあった。こうなると「何がお客様のためだ!?客だからってどいつもこいつも図に乗りやがって、ふざけんなー!!!!」とやさぐれたくもなる。もう最後の方は何を信じて働けばいいのかわからない状態だった。
公共交通機関であるからには、何よりも先に守られるべきは安全である。しかし、現実にはこうしたひずんだ世界が展開されているわけで、もし、JR西日本も同じような状態であったならば、この事故は起こるべくして起こってしまったのかも知れない。そうでなかったとしても、重大な事故であることには変わりはない。原因の早期究明を望む。
あんな車両がめちゃくちゃになってるなかに人がいるなんて信じられませんし、あまりの出来事で、本当に日本で起こった出来事なのかさえも信じられませんでした。。まだ、生存者がいるみたいなので、せめてその方達が助かって欲しいと思うばかりです。
うえぽんさんは、バス会社にお勤めだったんですね。
バス会社の内情全く知らなかったので、ここまで過酷なお仕事だとは思いもしませんでした。。
今回の事故がどうして起きたのか、うえぽんさんのバス会社のような過酷な状態だったのか、というのはしっかり調べる必要がありますよね。
やはり、罪のない人が死ぬのが一番辛いです。
結局、ひずみの割を食うのは事故に巻き込まれてしまった罪のない人々であり、事故を起こしてしまった運転士もまた、事と次第によっては被害者と言えるかも知れません。本当に心が痛みます。
その信じがたい状況に眼を疑いました。
こういう事故は、ほんとうにその大きさではなく、やりきれない思いがします。
命を預かる仕事。何があったのかを、きちんと教えてもらいたい、と切に思います。(憶測や推測ではない、きちんとしたもので・・・)
痛ましい事故や災害のニュースを聞くと、いつもやるせない思いにかられるんですが、今回の事故は本当に堪えました。それこそブログに書いたように過去がフラッシュバックして、まるで親類がこの事故に巻き込まれたかのように凹んでいます。
今回の事故に巻き込まれた方々のためにも、きちんと原因を追及して、二度とこのような悲しい事故が起こらないように願うばかりです。
重大な事故を起こした責任は問われて然るべきですが、「はたしてJRだけが悪者なのか」と考えると、ちょっと違うのではないか、というような気もしています。
これ以上細かく書くとそのままネタになってしまうので、ここではこの辺で。
TBありがとうございます。こちらからも張らせていただきました。
そりゃJRだけを悪者にしておけば大概の世の人は納得してしまうでしょう。でも、ちょっと待ってくれと。スピード優先の世の中にしてきたのは一体誰なんだ?ということも、マスコミはきちんと報じる必要があるように思います。さっき、ワイド番組の最後で少しそのことに触れたキャスターがいましたが、そこ!そこを少しじゃなくてもっとドカーンと言ってやってちょうだいよ!