日本でムービング系のボールが流行らないのは野球文化の違い

 WBCの準決勝でアメリカ相手に4安打1点に抑えられ1-2で
敗れた日本の敗因は動くボール=ムービングボールを打てなかった
事に尽きるのだが、結局は日本にムービングボールを投げる投手が
いないという事に行き着く。

 ただ4年前のWBCでも台湾戦で王建民のムービングボールに手
こずっていたので本来なら日本の投手達の間で流行るものと思って
いたのだが、4年経って黒田博樹がNYヤンキースから広島に戻っ
てムービングボールが話題にはなっていたものの今ひとつ使いこな
せない投手が多いのはムービングボールが日本の野球文化の価値観
とは正反対のものではないだろうか。

 BS-1でOAされていた球辞苑でスプリットというお題があった
のだが、その中で村田兆治が‘スプリットは落ちないフォークだか
ら自慢できる球ではない'と語っていたのが印象的だった。

 日本の投手の価値観は‘ストレート系なら1㌔でも速く、変化球
系ならば少しでも曲がって空振りが取れる球’というものでバットに
当てさせない球を投げるのが凄い投手という発想があるのに対し、
ムービング系は打ち損じさせる球でバットに当てられるわけだから
バットに当てられる=負けという昔の野球マンガの発想が未だに残
っている日本では‘恥ずかしい球’という事になるだろう。

 日本では野球という競技を投手と打者の一騎打ちという図式が長
らく定着し、ややもすれば巨人の星の原作者である故・梶原一騎な
ど野球のルールもロクに知らずに書けていたというのも主役の星飛
雄馬と花形満や左門豊作らのライバルとの決闘のみに特化していた
という事。

 基本的に昭和の野球マンガの投手が投げる魔球は大リーグボール
1号を除き空振りを取るボールで、バットに当てられると‘負けた’
と悔しがるシーンが多々出てくる。

 つまり日本野球では長らく同じアウトでも三振を取るアウトが素
晴らしい事で、打者のバットに当てられるのも屈辱という価値観が
あった。

 だからラルフ・ブライアントのように年間50本近くホームラン
を打つものの、三振が多い打者に対してネガティブな言い方をする
メディアが多かったわけだ。

 しかしプロの世界では特にWBCが始まってから球数制限が声高
に言われるようになったし、高校野球でも1人の投手が投げる球数
の多さが問題になっているので球数を減らすという事は絶対に必要
な要素だ。

 そうなれば三振を奪うよりも打ち損じさせる方が当然球数を減ら
すには都合がいいわけで、そのためにはムービングボールを操れる
投手を1人でも多く育てる必要があるのではないだろうか。

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