上原正三作品ならではの‘正体不明の敵’

 先日亡くなった脚本家の上原正三氏はウルトラからイナズマンや
戦隊モノをはじめとした東映ヒーローに、北斗の拳などのアニメま
で担当しているミスターヒーロー作品というべき方である。

 氏の功績はあらゆる人々が語っているのだが、第1期のウルトラ
時代の作風の特徴として謎の敵の存在がある。

 そもそも氏のウルトラデビューは宇宙エイ・ボスタングが登場す
る宇宙司令M774だったのだが、このEPには平和を愛するルパーツ
星人と好戦的なキール星人という2種類の宇宙人が登場しキール星
人が送り込んだボスタングの脅威を一条貴世美と名乗り地球人に警
告する。

 この時にルパーツ星人は人間体がある一方で、キール星人の人間
体は登場せず姿は謎のままで終わる。

 ウルトラマンでは2話しか担当してないのだがセブンではメイン
ライターの金城哲夫がマイティジャックの製作に携わる機会が増え
たため、結果的に共作を含めて12話分を担当したのだがユートム
編をはじめ恐竜戦車編にリッガー編やシャドウマン編など4話が実
体のない敵が登場する。

 ユートム編は炭鉱の落盤事故を調べていたウルトラ警備隊が謎の
地底都市を発見しロボットのユートムが動き回っていたのだが、結
果的に地底都市は作った者の正体が分からないままウルトラ警備隊
から爆破されて謎のままで終わる。

 恐竜戦車を操るキル星人も超高性能爆薬・スパイナーの運版を妨
害するのに人間爆弾や地雷などをしかけ、失敗すると恐竜戦車を出
現させるわけだが人間体では登場するものの正体や目的は謎のまま
で全滅している。

 リッガー編ではアステロイドベルトから地球に侵入した惑星時限
爆弾・ディンを送り込んだ宇宙人も謎のままで終わるし、シャドウ
マン編でも謎の宇宙人が死体の霊魂を操って地球防衛軍の世界中の
秘密基地が明記されているマイクロフィルムを盗み出し弾道ミサイ
ルで攻撃しようとするが最後まで正体は分からない。

 当時の円谷は製作費が逼迫しており異形の星人や怪獣を作るため
の工夫に追われており、特に円谷出身の脚本家である上原氏や市川
森一らが担当したEPは異形の敵が決して多くない。

 市川作品でもウィンダムが操られるだけのカナン星人編や弾道ミ
サイルが飛来するだけのマヤ編などが印象的なわけで、こういった
正体不明の敵というのは予算不足ゆえの産物なのかもしれない。

 ただし正体不明というのはそれゆえにミステリアスな雰囲気で、
セブンならではの特徴になるのだから氏のアイデアには脱帽するも
のである。

 

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