新たなオプションが装備された井上尚弥

 先日ラスベガスでジェイソン・マロニーと対戦し7RでKO勝ち
したWBA&IBFバンタム級王者・井上尚弥の評価が上がっている
のだが、個人的に評価したいのは井上のクレバーな戦い方で前半
から鋭いジャブなどで相手を徐々に削っていき6Rに左フックを7R
には右ストレートをカウンターで打ち込んで倒したという展開。

 これは昭和の時代にWBA:Jフライ級タイトルを13回防衛した
具志堅用高が得意としたパターンで、前半はボディを中心に打ち
込んで相手のガードを下げていき7R前後に倒すという戦い方を思
い出す事ができる。

 井上尚弥の試合といえば14年12月にSフライ級王者オマール・
ナルバエスを2Rで倒した試合や、バンタムに上げてジェイミー・
マクドネルやWBSS初戦のファン・カルロス・パヤノを1Rで倒した
試合のイメージが強い。

 日本のファンは早いラウンドで試合が終わると圧勝など大いに
評価するケースが見られるし実際に全盛時のマイク・タイソンの
評価が高いのも早いラウンドで仕留めるケースが多いし、日本で
も1RKOでタイトルを奪取した海老原博幸や浜田剛史に平仲明信
らが挙げられる。

 しかし早いラウンドでばかり倒していると長引いた時にどうか?
という不安もついて回るわけで、実際にジョージ・フォアマンなど
モハメド・アリのロープ・ア・ドープ戦法に空転させられていたし
タイソンなども然り。

 そんな中で早いラウンドで仕留め続けていた井上が昨年11月の
WBSS決勝でノニト・ドネア相手に苦戦の末に判定勝ちした試合は
‘モンスターのメッキが剥がれた’という声も一部ではあったが、初
めて目じりをカットするなどの逆境に見舞われながらも粘り強く
戦い11Rにはダウンまで奪って勝った試合は むしろ評価を上げて
いる。

 思えば昭和の大横綱の1人・千代の富士は横綱への昇進前後は立
ち合いに前みつを掴んで一気に寄り切る速攻相撲を得意としていた
が、途中からは左上手投げを得意とする四つ相撲で優勝回数を増や
していった。

 井上の大先輩であるファイティング原田もフライ級時代は豊富な
スタミナにものを言わせたラッシュ戦法のイメージが強いが、バン
タムに上げてジョー・メデルのカウンターに沈んでからは足を使っ
て動き回り高速ジャブの連打で相手を追い詰めラッシュはチャンス
の時のみというメリハリをつけたスタイルにフェザーに上げてから
は強打を打ち込む戦い方に変えていた。

 やはり早いラウンドで仕留めるのは派手ではあるものの下手する
と前半で倒せなければ負け的なタイプになりかねないし、年を追う
ごとに戦い方も変わるので新たなオプションが装備されたのは喜ば
しいと思うのだ。

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