法廷での反対尋問
敵側の証人 を何とかやりこめてやろうと必死の弁護人。
こんな尋問をしています。
弁護人: 「そのとき、その男は、あなたの方に左手を突き出してきたのですね。」
かずお: 「はい。」
弁護人: 「あなたの顔の前に手を突き出してきたのですね。」
かずお: 「はい、そうです。」
弁護人: 「ゲンコツだったのですか?」
かずお: 「ゲンコツではなくて、変な形に指を折り曲げていました。」
弁護人: 「変な形っていうのは、どんな形ですか。」
かずお: 「指を何本かだけ折り曲げていました。」
弁護人: 「何本折り曲げていたのですか。」
かずお: 「2本か、3本か・・・・、いやぁ・・・」
弁護人: 「2本か3本、どっちなんですか?わからないんですか!」
「じゃあ、どの指だったんですか?」
かずお: 「人差し指と薬指だったか・・・・、いや、中指と小指だったかなぁ・・・・」
弁護人: 「どの指なんですか! 本当に顔の前に手を突き出されたんですか!!」
「ウソを言っているじゃないですか!」
弁護人は敵側の証人をやりこめてとても得意気です。
しかし、こんな尋問をいくらしても、裁判官・裁判員は証人がウソを言っているなんて思ってくれません。
重箱の隅をつつくような無理な質問をして、証人をいくら困らせたとしても、
「そんなの聞いても無理だよなぁ・・」と思われるだけです。
得意気になっている弁護人に反感を抱くだけかもしれません。
でも、実際の法廷ではこういう尋問をして、喜んでいる弁護士がたくさんいます。
尋問の巧みは、揚げ足取りや無理な質問は決してしません。
絶対に間違えるはずがない重要な部分の矛盾をつくのが尋問の鉄則です。
無理を押しつけて困らせても何も得るものはないというのは、どこでも一緒です。
さて、かずおの前に突き出された手の形は本当はこうでした。
正解を見ないで、正確に答えるのは無理ですよね。
グワシ !!
by 楳図かずお