先週、龍谷大学で開かれた刑事弁護実務研究会に参加してきました。
テーマは東電OL殺人事件で、弁護人を務められた神山啓史弁護士が報告をしてくださいました。
この事件は、1997年3月に発生した強盗殺人事件で、ネパール人のゴビンダ氏が犯人であるとして起訴され、一審では無罪、控訴審で逆転有罪、無期懲役判決となり、上告審も棄却され、有罪判決が確定していました。
ところが、再審請求の中で新たな証拠が明らかになり、6月7日に再審開始決定がなされ、先日、この再審開始決定が確定しました。ゴビンダ氏は、再審開始決定によって、15年ぶりにようやく家族の待つネパールに帰ることができました。
再審開始決定の根拠となった新たな証拠は、被害者の体内に残っていた精液と被害現場に遺留された陰毛のDNA型鑑定の結果。
精液も陰毛も事件直後から発見されていたものであり、捜査機関側は把握していたにもかかわらず、一審や控訴審ではその存在が明らかにされることなく隠され、有罪判決が言い渡されていました。
東電OL殺人事件についてはこちら。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E9%9B%BBOL%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
日本の刑事裁判では、弁護人への証拠開示はいまだ限定的です。
事件が起こると、警察が捜査に乗り出し、ありとあらゆる証拠を根こそぎ収集していきます。
そして、その証拠の中から有罪の立証に役立つ証拠だけが裁判所に提出されます。
今回のように無罪を示す証拠があって、それは握りつぶされ、隠されてしまうのです。
有罪方向の証拠しか裁判所に出ないのだから、有罪判決になるのは当然で、そこに冤罪も生まれてきます。
裁判員裁判が始まって、一部の証拠については弁護側には開示がなされるようになりました。
しかし、未だにすべての証拠を開示することも、証拠リストを見せることもなされていません。
弁護側は、捜査機関に無罪を明らかにする証拠があっても、その証拠にはアクセスできないのです。
東電OL事件は、当初から全面的な証拠開示がされていれば起きなかった冤罪事件です。
再審無罪判決によって一日も早くゴビンダ氏の名誉が回復されるとともに、
二度とこのような冤罪が起きないように、弁護側への全面的証拠開示制度が実現されなければなりません。