弁護士辻孝司オフィシャルブログ

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周防正行監督、いい人です。

2012-05-27 22:41:46 | 社会・経済

「裁判員制度を考える京都の会」が主催する「~市民はえん罪を見抜く!~冤罪と裁判員制度を

考える市民のつどい」に参加してきました。

ゲストは、映画「Shall we dance?」や「それでもボクはやっていない」の監督の周防正行さんと、

昨年、再審無罪となった布川事件の桜井昌司さん。

お二人から、裁判官裁判の問題や裁判員裁判への期待が語られました。

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周防監督のお話で心にとまったところ、

・ 裁判官はとても頭がいい人。だから最高裁がどういう空気にあるのか、国や社会が何を求めているのかを敏感に察知して、それが裁判に影響を及ぼしている。そして、毎日、有罪の人ばかりを裁き、研修所では有罪起案の練習しかしてこない。
 これに対して、裁判員は、裁くことができるのだろうかと不安を抱きながら、自信なく裁判に臨むことになる。だから、できるだけたくさんの証拠を見て、有罪に間違いないと思って判決をしたいと考える。疑わしきは被告人の利益にという基本原則に忠実に裁判をしなければと考える。そうした点から、裁判員裁判には冤罪が起こりにくくなると期待できる。

・ 裁判官は、無罪判決を書くときにすごく苦労するらしい。高裁で、有罪判決が破棄されて無罪になっても評価はさほど下がらないが、無罪判決が破棄されて有罪になると評価が著しく下がってしまうらしい。だから、無罪判決を書くときは、絶対に破棄されない判決を書こうとする。
 そこまで書けないというときには、とりあえず有罪判決にしておいて、もし無実なら、高裁がちゃんと破棄して無罪にしてくれるだろうという心理が働くのではないか。

・ 「それボク」で主人公に言わせた「裁判は真実を発見する場じゃないんだ」という台詞は、そのとおりだと思っている。
 裁判は真実を明らかにする場ではなくて、証拠によって被告人が有罪といえるかどうかを判断するところまでの場でしかない。ところが、警察も検察も、真相究明に必要だと考えて無茶なことをしてしまう。

・ 刑事司法特別部会に参加していて、検察も可視化はやむなしという雰囲気だが、なるべく狭めたいと考えているのがわかる。
 検察・警察は、全面可視化すると日本の治安が悪くなると脅してくる。取り調べのやり方に自信があるなら、可視化されても問題はないはず。でも、可視化されると、きっと今までの自白さえとればいいという取調べはできなくなる。

・ 証拠開示は、当然にすべての証拠が弁護側も利用できるのだと思っていた。
 今は、少しましになったらしいが、リストも出されず、想像の世界で開示を請求するしかない。
 この状態で裁判員になったら、隠された証拠があるかもわからない状態で判断させられることになり、冤罪の片棒を担がされることになるかもしれない。

・ 評議を検証するすべもないのが問題。守秘義務を緩和しないと、何を改善したらいいのかもわからない。裁判官による基本原則の説明(説示)も、公開の法廷でやるべき。

     

刑事弁護人にとって、周防監督、強力な応援団です。

裁判員裁判の取材をされているとのこと。裁判を取り上げた次回作がある?


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