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京都コングレスに参加(2)死刑廃止サイドイベント 2021.3.10

2021-03-13 15:55:21 | 社会・経済

コングレスでは、国連による公式な国際会議や委員会だけでなく、世界中から刑事司法関係者が集結する貴重な機会をとらえて、政府やNGO等による多くのサイドイベントや展示が行われます。

 

日弁連では、

①「刑事手続における司法アクセスの在り方-実効的な弁護人による援助とは」

②「死刑廃止に向けて-国際社会における死刑廃止へ向けた取組とアジア・太平洋地域における現状、そしてその課題」

③「法教育により、市民の社会課題解決力の向上と法の支配に対する理解の促進をはかる方法」

④「被害者の刑事手続への参加とリーガルアクセス」

⑤「国際人権基準から見た終身刑および釈放の条件と手続きの在り方」

⑥「弁護士の役割に関する基本原則採択30周年-現在の役割と課題」

という6つのサイドイベントを開催しました。

どのサイドイベントも興味深いテーマでしたが、私はスケジュールの都合で、

死刑廃止(②)と被害者支援(④)、人権擁護局主催の人権擁護委員制度の紹介という3つのサイドイベントに出席してきました。

まず、3月10日に実施された死刑廃止のサイドイベントのレポートです。

正式タイトルは「Towards Abolition of Capital Punishment : Global Efforts to End Capital Punishment and Callenges Confronting Asia-Paciffic Region」

小川原優之弁護士(日弁連死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部事務局長)

Julian McMahon氏(オーストラリア)

Maxime Delhomme氏(フランス)

駐日欧州連合代表部

の4名がスピーカーでした。

小川原弁護士からは、日本の刑場の図が示され、毎年、死刑(絞首刑)が執行されていること、2018年にはオウム真理教事件関係者ら15人もの執行がされたこと、その中には再審請求中の人や心神喪失の疑いのある人もいたこと、死刑執行は執行当日の朝にいきなり本人に知らされ、弁護人や家族には事後にしか知らされないことなど、日本の死刑制度の問題が説明されました。

世界の多くの国が死刑を廃止する中、海外では日本も当然死刑を廃止しているのだろうと思っている人が多いと言われます。

国際会議の場で、日本になお死刑制度が存在し、実際に執行もされていることを伝えたことには大きな意味があったものと思います。

また、2020年はコングレスが予定されており、国際社会からの批判を受けないために死刑執行が0件だったが、京都コングレスが終わればすぐにでも執行がされるのではないかとの危惧も示されました。

さらに袴田事件について、取調べに弁護人が立ち会うことができないという日本の刑事司法の致命的な欠陥によるえん罪事件だと紹介され、このような日本の刑事司法は国際社会には受け入れられないと訴えられました。

最後に、国際社会が、日本の死刑に注意と関心を持ってくれることを期待している、それが、日本の死刑につながると締めくくられました。

Julian McMahon氏は、オーストラリアの法廷弁護士(バリスター)です。

オーストラリアでは、最後に死刑が執行されたのは1967年のことであり、2010年には連邦議会がどの州にも死刑制度が導入できないようにする法律が制定されました。

完全な死刑廃止国です。

しかし、オーストラリア人が海外で死刑になる例があり、McMahon氏は、シンガポール、インドネシアで死刑判決を受けたオーストラリア人の弁護をしたが、執行されてしまったということでした。

オーストラリアは、海外での自国民の死刑実行に反対する中で、それだけでは足りず、現代世界には死刑制度が存在できる場所はないと宣言し、世界的な死刑廃止のために積極的に活動することを約束したということです。

死刑は、国境を超えて取り組まれるべき問題であり、アジア各地の学者弁護士、英国や米国の大学・NGOもアジアのために活動している、これによりアジアにおける死刑廃止の取り組みは前向きなものになると締めくくられました。

 

Maxime Delhomme氏は、フランスでの死刑廃止までの流れ、ロベール・バダンテ―ル司法大臣(弁護士)、ミッテラン大統領による死刑制度の廃止が紹介され、死刑廃止には政治家の強いリーダシップが必要であると語られました。

その後、会場参加者(スペイン大使館)やオンライン参加者との質疑応答があり、死刑廃止について活発な議論が行われました。


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