「ことば」でいくら説明しても、わかりにくいことがあります。
法廷の証人尋問は質問と答えという「ことば」で進んでいきますが、やはり、
「ことば」だけでは聞いていてわかりにくいことがあります。
そこで、そんなときのために、刑事訴訟法規則では、
「訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。」(第199条の10)
と定めています。
ビジュアルを使うのです!
たとえば、こんな感じです。
弁護人: 「あなたが日本刀で斬りつけられた場所はどこですか?」
鬼 塚: 「役場の前の土間のところです。」
弁護人: 「あなたを斬りつけてきた男は、どのあたりにいましたか?」
鬼 塚: 「土間から見て右にあるかえでの木のあたりです。」
弁護人: 「男は、誰かと一緒でしたか?」
鬼 塚: 「はい、手下を3人連れていました。」
弁護人: 「3人の手下はどこにいましたか。」
鬼 塚: 「まず、犬は、私から見て男の右側にいました。猿は倉庫の前にいて、
雉は階段を上がったクスノキのあたりにいました。」
さて、これだけだと、何のことだかよくわからないですね。
そこで、次のように続けます。
弁護人: 「裁判長、ただいまの証人の供述を明確にするために必要がありますので、
検甲第3号証の実況見分調書添付の現場見取り図を利用して尋問すること
を許可願います。」
裁判長: 「許可します。」
弁護人: 「それでは、この図面で、あなたが斬りつけられた場所に×印を書いてくださ
い。」
弁護人: 「次に、あなたを斬りつけてきた男のいた場所に①と書いてください。」
「手下の犬がいた位置に②と書いてください。」
「手下の猿がいた位置に③、雉がいた位置に④と書いてください。」
こうして、図面ができあがります。
どうですか、「ことば」だけではわからないことも、図面を見れば一目瞭然ですよね。
「ことば」で一生懸命に説明しても伝わらないときは、ビジュアルを利用して説明してみましょう。