循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

コークスの急騰

2008年04月26日 | 廃棄物政策
◆コークスの急騰
 5年前、トンあたり2万3,000円だったコークスが今年度、つまり4月に入って60,000円台になってしまいました。それはまだいい方で、自治体によっては70,000円台という業者側の言い値を泣く泣く呑んだケースもありました。
 小生が個別に問い合わせたところ、いくつかが内緒だといって教えてくれました。ただし自治体名は信義上イニシアルにします。①秋田県A市[半年契約で7万2,975円]。②岩手県T村[運転・保守契約の中で単価も決めている。現在7万3,500円という金額が出ているが、予算オーバーで未決定]、③新潟県N市[事前見積もり4~6月6万3,000円]、④岐阜県N組合[6万6,150円(半年契約)]、⑤三重県K市[6万3,000円]、⑥福岡県I市[6万9,000円]、⑦静岡県S広域[3ヶ月契約6万6,000円]、⑧愛知県T市[半年契約6万7,515円、⑨福岡県I広域[3ヶ月契約6万7,700円]、⑩千葉県かずさクリーンシステム(新日鉄ほか2社及び君津、木更津、富津、袖ヶ浦の4市によるPFI事業)「組織が入り組んでいますから、単価の公表は勘弁してください。でも6万円より安いとはいっておきます」、⑪茨城県エコフロンティアかさまJFEコークスベッド・PFI)「ストックが十分あったので、粘った結果、よそさまより2万円は安くなったと思います」。

◆新日鉄の一人勝ち
 2003年ごろまでコークスは前記2万円前後で推移していましたが、04年から中国の石炭、それも山西省あたりの市況が急騰、その時点でトンあたり3万5,000円から4万円になったのです。
 原料炭の生産地はオーストラリアと中国ですが、特に中国の場合、自国での需要を優先して輸出を抑えていますから、日本全体が石炭不足に陥っているのです。コークスは石炭を蒸し焼きにしてカロリーを高めたものですから当然コークス不足ということになります。国内サプライヤー(生産財、部品、サービス等を提供する取引企業)との関係も複雑ですが、ともかくどんなに高くても売り手のいいなりで契約を余儀なくされるわけです。 現在新日鉄のシャフト炉を導入している自治体や広域組合は全国で20。さらに建設中が6ヶ所です。これと別に新日鉄はすでに韓国で2件の受注を取り付けています。同社が技術供与したPOSCOによるプロジェクトで、1ヶ所(慶尚南道梁山市・200トン)は昨年11月、もう1ヶ所(京義道高陽市・300トン)は来年4月に竣工予定となっています。

◆先手を打ったコークス対策
先日、千葉県習志野市の芝園清掃工場を5年ぶりで訪ねてみました。規模は70トン3炉、計210トンです。
訪問した理由は2年前、コークスの値上がりを見越して炉の羽口(酸素を吹き込む口)に都市ガスのパイプを取り付けたことです。それによってコークス使用量を削減するという一種の離れ業で、その実態が見たかったのです。結論からいえばごみ1トンあたりコークス50キログラムが通常の使用量のところ、40キロ程度に下がったといいます。
 習志野の例はまずはハッピーといえるのでしょうが、もうひとつの問題で、かなり深刻な事例が生じているケースがあります。ほかならぬ「何でも溶かせる」という新日鉄シャフト炉の特性と、循環型社会形成という新たな国策が生み出した矛盾です。

◆財政負担ズシリと 
 大分県大分市は新日鉄のシャフト炉(129トン3炉)を2003年から稼動させていますが、昨年(07年)4月から市民も参加して分別の種類を8から12に増やしました。その結果、可燃ごみに大量に入っていた資源プラや紙ごみが激減。水分の多い生ごみの比率が増えたため、コークスの使用量がグンと上がってしまったのです。加えて焼却量そのものが減ってしまったため、ごみ発電による売電収入も大幅に減ってしまいました。つまり「分別不要」を看板に普及させた溶融炉の自己矛盾としかいいようがありません。
「だから分別なんて最初から反対だったんだ」という職員がいたかどうかは不明ですが、そんな本音が出ても不思議ではない事態になったということです。
 コークス使用量もごみ1トンあたり45~50キロで収まっていたいたものが、昨年12月現在で80~90キロになったというのです。そこへ「コークス価格2.6~3倍」の追い討ちです。
 もうひとつ沖縄県の離島・座間味村(ざまみそん)では数年前、還元溶融技術研究所なる企業が開発した「ミニ高炉」を導入しましたが、運賃問題が絡むのでコークス価格交渉がどうなるか、見当もつかないということです。
 以下、4月25日に宮里清之介村議からきたメールの一部を引用します。
「これまではトン当たり6万5,000円、これは現地引渡し価格であり、売るとしたらという条件付きです。現実にはそれで売る気はないようで、博多から沖縄までのフェリー運搬費がトン11,000円。この計算だと現実には先方の想定する7万6,000円にプラス運賃がトン当たりの価格になるでしょう」。

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