循環型社会って何!

国の廃棄物政策やごみ処理新技術の危うさを考えるブログ-津川敬

この先どうなる

2008年04月20日 | 廃棄物政策
 生鮮食料品をはじめ、じわじわと物価が上がっています。しかしそれ以上に上がっているのがここ10年で全国各地に新しくできた大型焼却炉・溶融炉の維持管理コストです。それをコークスに絞って前2回にわたり検討してきましたが、むろん灯油、都市ガスなどの燃料も軒並み高騰しています。

◆計算に抜かり
 1997年からはじまったダイオキシン対策とやらで国(旧厚生省)が国庫補助金の大盤振る舞いをやり、「条件が有利なうちにできるだけデカい施設をつくったほうがトク」とばかり全国の自治体(広域組合)が競って建設に走ったのです。たとえば千葉県の習志野市では99年12月の市議会で「122億円の大型プラントがわずか27億円の負担(市の支出額)でつくれる」といった質疑応答が交わされたほどです。しかしそこにはごく単純な計算上の抜かりがありました。火災・爆発を含む事故のリスクと維持管理コストの高騰です。
 むろん瑕疵担保期間があってその間の補修は建設運転を請負ったメーカー等業者が行なうことになっていますが、その交渉が各地で揉めています。つまり「搬入されるごみ質が最初の約束と違う」と業者がクレームをつけるのです。

◆コンサバティブな企業 
 施設建設時に「ともかく安い買い物をした」というのは自治体側の錯覚で、いまどこの自治体も維持管理コストの異常な高騰に頭を抱えています。その実態を「自治体が直面する三重苦」というタイトルでこのブログに書きましたが、その傾向は年々強まっているのです。そのひとつがコークスの急騰で、これについては前回、前々回でとりあげたとおりです。ではコークス以外の維持管理費(施設や機器の補修費など)はどうなっているのでしょうか。
 新日鉄はつねづね「うちのようなコンサバティブ(伝統を重んじる保守的な)企業は危険とわかったら手を出さないものだ」と公言しているように簡単にボロは出しません。何しろこの分野(溶融技術)では業界随一を標榜しながら、「豊島のごみ」にはついぞ手を出さなかったほどですから。
 これまで他のガス化溶融炉メーカーからは大小様々な火災・爆発を含む事故やトラブルのニュース(ネガティブ情報)が漏れてきましたが、コンサバティブな新日鉄からは何の情報も出てきません。ただひとつの汚点は2002年1月28日に起こした愛知県東海市の灰溶融炉(クリーンメルター)爆発事故(10人が重軽傷)です。

◆補修費はウナギ昇り
しかしある新日鉄溶融炉周辺の住民が根気よく自治体から情報開示を求めたところ、2003年から06年までの4年間で維持管理コストが4倍以上になっている実体が浮かび上がってきました。それが冒頭の「保守費用年度別集計グラフ」です。むろん個別の補修個所や契約企業、金額、工事期間など詳細なデータを入手しているのですが、今後の運動を考え、ここでは掲載を控えます。場所も九州のある小都市とだけ紹介しておきます。その上に今後いつ止むとも知れぬコークスの異常高騰が待ち構えているのです。
全国でいま24ヶ所が動いている新日鉄(エンジニアリング)のプラントでも事情はまったく同じはずです。しかもあと数年で6つのプラントが立ち上がることになっていて、まさに新日鉄一人勝ちの様相を呈しています(他のメーカーはせいぜい10ヶ所どまり)。
 財政危機がこれから本格化する自治体は向こう10何年か、徳川家康なみの重き荷を背負って歩くことになるのです。もっとも自治体の経営者(市長、助役、市議会議員も含め)は何も責任をとりませんから、この点でもババを引くのは納税者ということになります。

◆コークストンあたり10万円!
 にも関わらず「環境という名のハコもの行政」はとどまることがありません。国庫補助制度が小泉の鶴の一声で終ったと思ったら次期首相を狙う当時の環境大臣小池百合子さまが循環型社会形成推進交付金制度を導入されたのです。5年間といわれるその申請期限が切れそうだというのでいま建設適齢期の自治体や広域組合の頭にあるのは環境問題でも廃棄物減量でもなく「交付金獲得」だけなのです。
 何回か前にこのブログで紹介した沖縄座間味島(村)の宮里議員から「このままゆくとコークス価格はトンあたり10万円になるのではないか」(5年前は2万円台で推移)という悲鳴に近いメールが入ってきました。いま全国の自治体はとても後期高齢者の泣き言なんぞ聞いていられる状況ではないようです。 

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