今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

小川山

2006年02月17日 | 山登りの記録 2003
平成15年10月16日(木)

 先週の土曜日に、子供たちと谷川岳に行ってからまだ5日しか経っていない。
 小川山は昔から登りたいと思っていた憧れの山だ、奥秩父の寂峰といえば和名倉山(白石山)が筆頭だが、それと並んで主稜線から外れて全山黒木に覆われた展望も乏しい渋い山・玄人受けのする山として、静かな山を好む人たちには気になる一峰だろう。
 金峰山や奥秩父の主稜線から見ると、ずんぐりとした丸い山容で大きく、そこそこ高いけれど、その隣の瑞牆山の様に人目を引かない。いずれにしても、奥秩父をあらかた登ってしまった人が、次は…と選ぶ山だ。2,418メートルの標高は奥秩父の中でも高い方だが、高山という魅力よりも、未だに昔の奥秩父の面影を保っている山として貴重な存在だろう。

 前夜、川上村の廻目平まで入って車の中で夜を明かす。廻目平には夜中の1時半ごろついた。上空はガスが去来するのか、風が緩く吹いているが、頭上に星空はない。天気予報では微妙な予報をしていた。晴れて欲しいが、冬型になるようなことも言っている。金峰山荘の窓には明りが見え、入り口のゲートは閉まっている。

 廻目平(めぐりめだいら)と言う読み方だった?はずだが、最近のガイドブック等には「まわりめだいら」と仮名が振ってある。金峰(きんぽう)山荘という山小屋(山小屋というよりはロッジ)があって辺りは広いキャンプ場になっている。何よりここが昔と違うのは、フリークライミングの聖地の様になっていて、屋根岩を初めとする奇岩の花崗岩峰を背景に白樺・落葉松のエキゾチックな風景が広がっている人気スポットになっているということ。今では、フリークライマーのみならず、「小川山」は小川山そのものではなくて、その下にある屋根岩岩峰群を含む廻目平周辺を言うらしい。

 携帯のアラームで5時半に目覚めた。外は山の上の方が白く雲を被っているが、晴れている。陽が上ってくるうちには晴れてくるだろう。朝食をとり、仕度をして、6時5分に出発、緩い上りを10分ほどでゲートを過ぎ、金峰山荘の下まで来た。年配のアマチュアカメラマン達が大きな玉を付けたカメラを朝日を浴びた対岸の岩壁に向けている。見事な黄葉だ。中心は落葉松の黄色だが、白樺の黄に少しばかりモミジやナナカマドの赤が混じり、上部の針葉樹林の緑に映えている。なるほど、ここはこういう人たちのスポットらしい。

 金峰山荘前でペットボトルに水を満たして、あらためて上り出す。ところが小川山の登山口が良く分からない。ガイドブックによれば、林道を金峰山方面に少し行くとトイレの上に道がある…、とある、しかしそのとおりの道には「かもしか遊歩道入口・小川山」と看板に書いてある。これをそのまま信じて入れば良かったのだが、ネットの情報から却ってこれを疑って随分先まで行ってロスをしてしまった。結局、本当に登山口に入ったのは6時30分を回っていた。

 林道を戻ってくる?ご年配ハイカー2名とすれ違ったが、後でこの2人も小川山に入る道を間違えたのだと言うことが分かった。とにかく、また少し戻りそれらしい道に入るが、これも沢沿いに途中からハッキリしなくなり、また林道に戻った。
 本当の登山口は、「かもしか…」の看板のある入り口で、先で直ぐ左右に分かれた左が正解だ。ヤマケイのガイドブックにはそんなことは書かれていない。
 何となく、雰囲気から左の道を取った。これで正しい道になったわけだが、出だしからがんがん登りまくる。直ぐに先ほどの2人を追い越し、左手の沢を挟んで紅葉に彩られた花崗岩頭がにょきにょき頭をもたげているのを見ながら、遅れを取り戻すべく登った。

 大きな岩頭のギャップを越えると、展望が広がった。朝霧がだんだん上空に消えていく、青空が広がってくる、金峰山や朝日岳が黒々とした大きな稜線を雲海のようなガスの上に覗かせている。屋根岩の岩峰は雲海の中に浮かび、ここはどこ?というような光景だ、山水画の山のよう(これを撮った写真を人に見せて、中国の奥山だといっても疑わないだろう)。

 登山道は所々ハッキリしなくなる、岩場を越える所には梯子等があるが、補修されずに残骸なので危なっかしい。しかし、ルートは赤いペンキの印があり注意深く進めば特に問題はない。道型ははっきりしているが、シャクナゲが覆いかぶさっている藪道だ。 

 小川山神社の石碑がある岩頭上に出た。上をみると弘法岩と思われる岩峰がすっくと立っている。落葉松の黄にドウダンツツジ等の赤が混じり、一層岩山を盛り上げている。ああ、美しいな。登ってきた下の方は屋根岩がかなり下になり、間違って行き過ぎた林道がもう人の行き来も確認できないほど小さくなった。金峰山を始め奥秩父の高峰は、背後にまだ高く並び競っている。
 肝心の小川山だが、この日初めてここで姿を現した。紅葉に彩られたずんぐりした円頂がすぐそこのように見える、高低差だけを考えれば、たかだかあと500メートルばかりだ。その上には色見本のようなコントラストの強い青空が広がっている。その青さは、しかし間違いなく秋のものだ。朝霧が消えていくと遠近感を過ってしまうほど空気は透明になっていった。

 そこからが、しかしなかなかしぶとかった。弘法岩は登らずに大きく右手に巻いてゆく、薄暗く湿っぽい樹林帯の登りは奥秩父の深い山の中そのもの。小さな岩場が多く結構上ったり下ったり、距離以上の時間がかかる、おまけに時々不明な道を探さなくてはならない、それで思ったより時間がかかるのだ。一般登山道としてはあまり整備されていないのが却って面白い。
 また、尾根すじに戻り展望はこの辺りから全くなくなった。シラビソの樹林帯の上りはかなりきつい、しばらくこの感じで続くが、樹相がシラビソからトウヒになってくると、傾斜もゆるんでいつしかほぼ平坦なはっきりとした道になった。

 頭上は明るく、頂上がもうそれほど遠くないことを伺わせた。樹の間越しに右方に頂上があるように見えた。すぐに八丁タルミからの道と合わさり、右手に少しで樹に囲まれた小川山の山頂に着いた。登り始めから3時間15分を要した。普通に言われているより時間が掛からない様に思う。

 長年の夢小川山の山頂。この山は高校生の頃から知っていた、隣の金峰山や瑞牆山のようなポピュラーな山は直ぐにでも登れるが、アプローチが長い、展望がない、アクセスが悪い等の数々の悪条件が、この山を遠いものにしていた。それでも、奥秩父では和名倉山と並んでこここそは残された数少ない「古き良き奥秩父」なのだ。山頂にあったのは三角点標石と山梨百名山の立派な看板、誰かが作った手作りの小川山の看板だけだった。

 さて、しかし、ことこうして立った山頂自体は、かなりきつい登りの果てにたどり着いたものとしては確かに満足できるものではないかもしれない。眺めは金峰山側と茅が岳方面以外は無かった。雲の向こうに南アルプスの鳳凰三山らしき山並みが見えたが、雲に隠れ気味ではっきりしない。丈の低いシラビソやトウヒの上に出れば、おそらくそこそこの展望はあったろう。西面の眺めのある小さな岩の上で休んで、カップラーメンを食べ、コーヒーを飲んだ。だがこれで充分満足だった。登りもきついが、道を探るような登山は面白い、何より人がイナイ、適当に岩場などがあって変化がある、その上中腹辺りの紅葉の何と美しいこと!年配者2人は30分以上遅れて到着した。そのときは既に下る仕度をしていたときだった。二言三言言葉を交わして山頂を辞した。この山は山頂より途中の方が面白くて展望も良い、あまり長くいても楽しい山頂ではない。

 下りはたんたんと弘法岩まで下った。弘法岩の上は、さぞ眺めがいいだろうから寄っていきたいと思ったが、結局そこには行けなかった。下っているうち、いつのまにかその弘法岩を見上げる所まで来てしまった。下りでは小川神社のあった岩峰も分からなかった。
 ここまで来ると、裏瑞牆は目の前にあった。ここがいつから裏瑞牆と呼ばれているのかは知らないが、その光景は本家の瑞牆山よりズット迫力のあるものだ。 瑞牆山は樹林に覆われた山ににょきにょき岩峰が角を出しているのだが、その岩はここと同じ花崗岩でも滑らかで丸みがある、この裏瑞牆は鋭いカミソリの刃のような鋭角のギザギザとした岩頭を並べている、展望台と書かれたその岩の上に立った。小川山を挟んで深い谷が刻まれている、色とりどりの樹木の山肌は一人占めするにはもったいないような贅沢な景観だった。下を水の流れる音がして、唐澤の滝が紅葉の中に見えていた。この日一番のビューポイントは、しかし足元がすっぱりと切れ落ちて落ち着かない場所だった。去りがたい思いを残し、かもしかコースに下り、唐澤の滝でコーヒーを沸かした。ここで、若い夫婦?に会った。カモシカコースは遊歩道とはとても言えない足場の悪い登山道だった。結局朝から登山道で会ったのは、ご年配2人と若夫婦の全部で4人だけだ。

 廻目平のキャンプ場に下ると、背後には屋根岩が白樺林の上に聳えていた。絵になるロケーション、ここが人気なのも分かるというもの…。平日なのに東京や埼玉ナンバーの車が何台も止まっている。家族でキャンプをしている人も居る。

 川端下の集落を過ぎ、高原野菜の畑を前に高く屋根岩、そしてその上に小川山、奥に金峰山が黒々と見えた。空は澄んで青く、秋の色を反映していた。日本というよりは北米あたりの秋の光景に見えなくも無い、少しばかり日本離れした景色かな?
 帰りに南相木村に出来た日帰り温泉「滝見の湯」によってから帰った。キレイで広い温泉だった。最近はどこに行ってもこんな日帰り温泉がある、山登りには応えられないプレゼントです!その上、大人350円とは驚きだ。

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3 コメント

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Unknown (Toraron)
2006-10-31 21:13:31
こんばんは。
以前お勧めいただいた小川山へ行ってきました。
かもしか遊歩道から登り八丁平経由で下山しましたが、おかげさまで大満足できた一日でした!登りの途中から垣間見える眺めは確かに素晴らしいものでしたし、下山に採ったコースも途中で2箇所ほどとても眺めの良いピークがあり、両神山から北アルプスまで見渡せました。その上このコースは延々と続く苔がとても美しく心洗われました。小川山はとにかく静かで、奥深く奥床しく美しい山でした!
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良かったですね (あさぎまだら)
2006-11-01 00:11:10
そうですか。ぼくも八丁平を回ろうか迷ったんですが…。帰りが遅くなりそうなのであの時はそのまま下りました。
もう時期的に落葉松の黄葉は終わってましたか?あそこの落葉松の黄葉は山が金色に輝いているように素晴らしかったのを憶えています。
静かで味わい深い山ですよね。単独行に向いている山かも知れませんね。
また機会があったら登ってみたいです。
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黄葉は・・・ (Toraron)
2006-11-01 21:18:24
さすがに小川山そのものの黄葉は終わっていました。ただ屋根岩のある尾根はまだ充分に見応えがありましたし、川端下から見上げる長尾の黄葉はまさに見頃で午後の斜光にいっそう美しさが映えていました。
でもやはりこのページトップにある画像のような景観を、やはり自分の目でも是非見たいですね。来年また行こうかな?でもそうすると例の烏帽子が行けなくなるかな。今から来年の秋の日程、迷いますねぇ・・・。
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