今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・西岳、編笠山

2007年07月05日 | 山登りの記録 2007
平成19年7月1日(日)
西岳2,398m 編笠山2,524m

 八ヶ岳は何回登ったか分からない。八ヶ岳は山塊(火山群)の総称であろうし、南と北に分けたりするが、一応蓼科山を除く北辺から編笠山までがエリアということになるのだろう。あまたのピークで未登なのは西岳、美濃戸中山とか立場岳とか、稲子岳とか、八柱山あたりか…名の知れた峰々は、どこも数回は登っている。しばらく行ってないと、突然また登りたくなるのが八ヶ岳(北八ッも含め)。気軽に登れる高山で、展望も景観もいいし、花や池なども楽しめるのが魅力だろう。ゆえに人も多いと言うことだけがやや難点かもしれない。

 今回は久しぶりに次男と、登り残している西岳に編笠山を加えた周回コースを辿ることにした。天気予報は、週末の予報より微妙に悪い方にシフトしているのがやや懸念材料ではあるが、前夜発で登山口の富士見高原に向かった。
八ヶ岳の周囲をぐるっと回って、長野から山梨に入り、また長野に戻ってスキー場とゴルフ場がある富士見高原リゾートに着く。ゴルフ場の駐車場に車を停めて仮眠した。

 5時にアラームで目覚めるが、濃い霧に覆われているから、もう少し眠った。5時半に起きる。やはり霧に巻かれているが、向かいの入笠山方面は山が見えている。そのうち段々霧も晴れて良くなっていくだろう?という希望的観測で支度をする。しかし、向かう八ヶ岳の峰方面は黒っぽい雲が霧の帳の上に広がってあまり愉快でない雰囲気だ。次男は朝が苦手で、「眠い眠い」を連発。いつもの事ながら、早起きしたときは何も口に出来ない状態。でも結構元気で、登る気は充分な様だった。
 ゴルフ場の駐車場には、まだ早いのに職員らしい人が次々と出勤してくるが、山登りの支度をしているぼく達には全く興味が無い様子。駐車をとがめられることは無いようだった。

 6時10分に「登山口」の看板があるゴルフ練習場のレストハウス脇から、打ちっ放しのコースの縁を通って山道に入る。薮がちで朝露にズボンも少し濡れ気味。このコースを辿る人は余り多くないようで、道型はしっかりしているが、八ヶ岳の登山道にしては少しローカルな雰囲気だ。日曜なのにぼく達しか登っている人もいないし…。草深い緩い登りをしばらくで林道に出る。葉がまばらに白くなったマタタビが目を惹く。
 林道の指道標に従って直進する編笠山への道を後に(帰りはこっちに降りてくる)林道を西に進むと不動清水に出た。この湧き水は一度「水天明王」と書かれた石碑が立った貯水漕に溜めたものを塩ビパイプで流しているが、水量が少なくてちょろちょろだった。飲んでみると大変旨い水で、家から持ってきていたペットボトルの水を全部空けて、次男と2人で持っているペットボトルに水を満たした。
付近は落葉松の植林だが、松の巨木もあって何となくうっそうとした湿度に満ちた森だ。

 ここから少しずつ傾斜が増してきて、2回林道を横切り、次第にぐんぐん登るようになってきた。最後の林道を越えた付近はレンゲツツジの群落で、やや花期も終わりに近いが、なかなか見事だった。花なんか見ても一向に興味を持たない次男が珍しく「オレンジの花がキレイだね…」と言っていた。

 霧が立ちこめ幻想的になった森は、いつしか樹相もコメツガに変わり、足元にはゴゼンタチバナやコケモモの可憐な花が見られるようになった。樹床はびっしりと苔に覆われ、典型的な八ヶ岳の針葉樹林帯の景観が続く。残念ながら、上空は明るいが、この霧は晴れそうもない。おそらく展望は望めないだろう。折角登っても、眺めが無いんじゃイマイチだね、と言ったら、「こういう森の中を歩くだけでもいいじゃない、イイにおいがするし…」と次男は言う。イイにおいとは、針葉樹の、特にシラビソの樹脂の臭いのことだった。彼はこのにおいがとっても好きなのだ。ずっと小さいときから山に登っているが、小学校の低学年の頃から「山に行くとイイにおいがする」といつも言っていたっけ。景色にも花にもあまり興味を示さない彼は、不思議な形をした木や岩や、樹脂の匂いに山登りの魅力を感じるらしかった。

 益々きつくなってきた登りにあえいでいたら、ガレ場に出た。もう西岳の頂上は間近。再び丈の低くなった樹林に入り、ハイマツを見ると南側が大きくガレになっている西岳の山頂に丁度9時に着いた。コースタイムより随分早い到着だ。
この山頂にも長野県の山で良く見る、丸太を輪切りにして「串に刺したおでん」みたいな山名標柱が立っていた。予想したとおりのガスで、全く展望は無い。ひとけも無い西岳山頂は次男と2人占めだった。おむすびやお菓子を食べて休憩し、9時27分に西岳を後に青年小屋に向かう。

 西岳から一旦鞍部に下り、倒木も多いシラビソ林を抜けて緩く巻くように登っていくと、水の音が聞こえてきた。沢の源流で「金命水」と名付けられた水場だが、何故か青年小屋では「乙女の水」という名称を付けている。「青年」といい「乙女」といい、そんなものはこの付近には見あたらないブラックユーモアの様な名称には苦笑しました。

 水場のすぐ先が青年小屋だった。朝から誰にも会わなかったが、ここに着いたら人が沢山いた。10時23分に青年小屋着。

 矢張り日曜日、でも「青年」も「乙女」も、もちろんそこには居ないのだった。青年小屋に泊まったらしい人たちが、支度をしていた。霧が少し晴れて、丸い編笠山が見上げられる。大きな岩がごろごろした斜面が上に続いて、そこをまた何人もの人が降りてくるのが見えた。錆の目立つトタン張りの青年小屋はその様子も「青年」らしくないのでした。

 次男はおみやげにバッジを買った。本当は絵はがきを買おうとしたのだが、残念なことに売り切れだ。小屋のおじさんが、すまなそうに「売り切れちゃいました」と言った。ぼくと次男が外に出て、小屋の直ぐ前のベンチに座っていたら、早速おじさんは見本の絵はがきに、「品切れ中です」の貼り紙をしていたので、次男と顔を見合わせた。

 青年小屋の前にクロユリが咲いていた。クロユリは高山植物の中でも人気がある花だが、名前と実際の花にはギャップがある。真性のユリではないし、その臭いには閉口。おととし、蝶が岳で見たコバイケイソウの大群落を思い出した。コバイケイソウもその臭いにはびっくりした。生ゴミ(クロユリ)と公衆便所(コバイケイソウ)の違いはあるけれど、印象を悪くするのでどっちも臭いはかがないのが賢明だろう。ザゼンソウもそういうカテゴリーの花かなあ…。

 小休止の後、10時45分に鬼押し出しみたいな大きなゴロ岩が広がった編笠山の登りにかかる。上から降りてくる人も結構多い。大岩の間にはイワカガミが沢山咲いている、珍しくもない花だけど可憐な形や色合いは、やはり主演女優級の華やかさがあって人気者だ。株によってピンクが濃いものと薄いものがあるが、土壌や日照条件の違いからくるものだろうか?濃い目の株の方がやっぱり人目を惹くので、行き交う人々も、そういう株のあるところでは立ち止まって写真を撮ったり、大げさに感嘆して仲間に告げるのだった。

 ゴロ岩が終わると再びハイマツにもぐり、湿っぽい樹間をしばらくあえいで山頂に出た。編笠山を登っている時にほんの少し青空が出たが、残念ながら山頂はガスが去来するばかりだった。11時15分に編笠山頂着。比較的広い山頂には沢山の人が居たが、分散しているのであまり気にはならなかった。北よりの斜面に良い場所を見つけて休憩した。展望はほとんど無かったが、次男はもとより景色には余り興味が無いので、気にしていなかった。
 風の当たらない岩陰で湯を沸かし、早速カップラーメンを作って2人でまったりする。一度だけほんの少し霧が晴れて、西岳の姿と登り口のゴルフ場が見えたが、眺めはそれだけだった。後から後から登ってくる人や下っていく人がいるが、100%観音平コースの様だった。

 12時23分に下り始める。ガスに巻かれて降り口が分からなくて少しまごついたが、明瞭な標識と黄ペンに導かれて信濃境口コースを下った。このコースを降りる人も登ってくる人も他には全く居なかった。だからぼく達は、行きも帰りも2人きりの静かな山だった。青年小屋と編笠山の所だけが人気の八ヶ岳らしい賑わいで、こういう人気の山もコースを選べば静かな山行ができるという事だろう。

 編笠山の下りもゴロ岩がしばらくあり、こういう所の通過が苦手な次男は少し遅れ気味。樹林帯に入ると、また苔むした幽玄な原生林を楽しむのだった。うるさい程ある標識だけど、肝心の降り口付近のものは訳の分からない「頑張って」だの「もうそこだ!」だの情報の役に立たない不要なものばかりで不快だった。書かれてあるコースタイムも?と思うような、却ってハイカーを混乱させるような時間で、つくづくこういった標識類は設置の有無も含め、慎重さと熟慮・配慮が必要だと感じた。

 結構長い下りだね、と語りながら次男と坦々と下り、3時ちょっと前にゴルフ場に戻ってきた。ゴルフ場の駐車場はほぼ満車の盛況だった。
降りたら入ろうと思っていた、ゴルフ場隣接の「八峯苑鹿の湯」は残念な事に改装中とかで休業だ。仕方なく、予定していた往路を引き返す計画を止め、蓼科方面に向かって、この方面で定番にしている「縄文の湯」に入った。
麦草峠を越えて帰路についた。蓼科からは小雨になったから、山で降られなかっただけマシだったろうか。

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2 コメント

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八ヶ岳 (重鎮)
2007-07-06 21:45:20
こんにちは、
八ヶ岳はもう登り尽くしたのでしょうか?
私はまだまだです。
阿弥陀岳もまだなんですよ。
お子さんとの楽しい山歩き、羨ましいかぎりです。
梅雨明けが待ち遠しいですね。

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ここに書いてあるとおりです (あさぎまだら)
2007-07-06 23:26:11
長男はもう一緒に登りません。次男もいつまで登ってくれるか?
八ヶ岳はここに書いてあるとおりです。そんなピークあったっけ?というような山だけいくつか登り残しています。そのうち、そんな幾つかをつぶして全部登りましょう。特にその辺は意識もしていないんですが…。人が多いのを除けばとても好きな山域です。
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