今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・笠取山、燕山、古礼山、水晶山

2007年11月21日 | 山登りの記録 2007
平成19年11月17日(土)
笠取山1,953m 燕山2,004m 古礼山2,112.1m 水晶山2,158m

 奥秩父の主稜線で、登っていない山も大分少なくなった。
 ぼくの場合、登る山の山域とか標高とか「何とか○○名山」とか、特別こだわりが無いので、その時に思いついた山に登っている。とは言っても、名前が気に入って登ってみたい山とか、ある山の頂上から見た姿が素敵だったから登ってみたくなった山とか、そういう山は沢山あって、そんな山を季節や気分でランダムに選んで登っている、というのが本当のところだ。だから、特定の山域を限定したり、標高や「なんとか名山」や三角点の種類とかでボーダーした山を、シラミ潰しに登っていくという趣向とは随分離れている。「静かなる山」とか「秘峰」とかには目が無いけれど…。まあ、ポリシー?といえば、毎回本当に「自分が登りたい山」に登る。そういうことです。

 奥秩父の山も、特に全山踏破とかを考えて居るわけじゃなくて、そういえばもう未登も少なくなったなあ、というくらいのところです。今回は、登っていない笠取山(何となく人が多そう…)はオマケで、人も少なそうな?雁峠と雁坂峠間の3山(燕山・古礼山・水晶山)がメインだ。

 金曜の夜に家を出る。走り慣れた秩父までの道、秩父の夜間営業のスーパーで食料を調達し、雁坂トンネルを抜けて、今回の登山口「道の駅みとみ」に車を停めた。一応、本当の登山口の広瀬まで行って、林道入口を確認してからシュラフに潜った。今夜はこの秋一番の冷え込みだそうで、外気温は既に1℃だった。満天の星空で気分も良い。道の駅の駐車場には数台車が停まっていたが、全てが山に登る人と言う訳では無いのだろう。車の外にテントを張っているものもあった。アラームは5時半にして、駐車場の一番奥で仮眠した。

 目が覚めた時はまだ暗かった。寒いので、またシュラフに潜ってもう一眠り。結局6時過ぎにシュラフから出た。もうすっかり明るくなり、車の外に出ると木賊山に朝陽が当たって、快晴の青空。車を国道側に停め直し、パンを食べ、トイレを済ませて支度をする。次々に、駐車場には新しい車が入ってくるが、それも全てが登山者ではない。観光でやってきて、宿を節約している様な人も多いようだった。

 6時50分に駐車場を後に、広瀬集落まで国道を下っていく。国道に出て直ぐにキャンプ場脇から入る林道があり、200m程奥に旧村営の釣り堀があるが、そこが雁坂峠への登山口だ。今回、ぼくは雁峠に登って、そこから笠取を往復してから雁坂峠まで縦走し、雁坂トンネル下の「道の駅みとみ」に周回するコースを辿ることにしている。広瀬集落まで2㌔ちょっとの国道歩き、途中の道路の真ん中に轢かれたてのタヌキの死骸が横たわっていた。タヌキの場合、こういう事故死が多い。俊敏ではないタヌキは、残念ながら速度を出して通過する車に反応して逃げることができないようだ。自信過剰のイエネコは、車が来る前に通過できると、むしろ車に突っ込んでくる事故が多いのとは対照的だ。

 広瀬ダム湖が見えて、しばらくてくてく下っていくと、民宿が点在する広瀬の集落に着いた。ここは高校の頃、塩山からバスでやってきて、雁坂峠まで登った想い出の場所だ。あの頃は、広瀬ダムも、もちろん雁坂トンネルもない、山奥のバス終点の集落だった。見上げる木賊山はあの頃の記憶のまま、そのままの形で朝日を浴びている。

 広瀬集落から「雁峠登山口」の小さな看板を見て、林道に入る。ここは私設林道で、入口から1㌔ちょっとの所にフェンスがあり、一般車は進入禁止になっている。「私有地につき立入り禁止、亀田林業」と書かれた大きな看板が付いていた。林道は少し先で2分する。右に分かれた道は広瀬に下る道。作業小屋の前を過ぎて、左手の林道を奥に進む。さすがに今日は冷え込んでいて寒いが、歩いているから露出した顔以外は温まってくる。

 舗装された林道は間もなく未舗装になるが、まだ幅広の林道はずっと先に向かっている。木造の古い作業小屋を左手に見て、間もなく山砂の道は再び2分し、標識もないが、右側の沢を向こうに渡る道を進んだ。左手に分かれた道は、沢の対岸にしばらくあったようだが、間もなく消えた。1時間程林道を上ると、道は大分荒れてきて最早車が進めるような道ではなくなった。周囲は散り残りの落葉松林で、黄金色が木々のあちこちに残っている。背後を振り返ると、落葉松の前山の奥に、黒金山が大きく望まれた。

 林道はいつのまにか登山道になり、相変わらず沢沿いを進むが、かなり荒れてきた。道が水に流されて無くなっている所もある。この道は、最近あまり登山者に利用されなくなってしまったのか?新しい標識も余りなかったし、道が補修されて居る様子もない。どちらかというと、昔に比べて雁峠も雁坂峠も、奥秩父の主要登山口では無くなっているようだった。これも、マイカー登山が増えたせいだろうか?電車やバスではアプローチできなかった、もっと主稜線まで短時間で達せるコースの方に人が集まるのだろう。

 8時半に「熊出没注意」と書かれた黄色い看板を見て、完全に沢を離れて笹の切り開きの登山道になった。行く手には雁峠付近?と思われる笹の斜面が見えてくる。間もなく、笹からカヤトの眺めの開けた緩斜面になって、沢の水流は消失する。湧き水が流れ出す水場で、ちょっと水汲み休憩。おかきをポリポリ食べて空を見上げる。青空は鈍色の薄雲がベールのように重なる、寒そうな色合い。カヤトの原が上に広がり、直ぐそこが雁峠のようだ。カヤトは霜で白くお化粧している。

 9時17分に人の気配もない、大きな説明看板とベンチがある雁峠に着いた。看板とかベンチは雁坂峠と同じ様だが、ここの方が雁坂峠より広々している。直ぐ北は燕山に続くカヤトの急斜面に道が一筋、南には菅笠のような笠取山が間近だ。埼玉側の方が青空が広がり、和名倉山が大きかった。風が吹き抜けて寒い所だから、休むのもままならないので、そのまま笠取山に向かう。カヤトの原を進んで、やや起伏がある小山を西に回り込む。埼玉側の樹林の中に廃屋のような雁峠山荘の屋根が見えた。

 小山の上に立つと、燕山・古礼山の山並みが姿を現した。遙か向こうに木賊山が青く聳える。小山付近は踏み跡が錯綜しているが、笠取山に向かう小径を辿ると「小さな分水嶺」の看板と標石が立つ小ピークに出る。ここは埼玉と山梨の県境だが、東京都の水源になっているので、説明看板は東京都水道局のものだ。真ん中にある三角柱の石標は三面に「富士川」「多摩川」「荒川」と刻まれていた。小さな分水嶺とはかわいらしい名前だ。普通、分水嶺というと、大きく水系を分けて太平洋と日本海に注ぐ川の源流に当たる山を思い浮かべるが(大分水嶺)、ここは小分水嶺と言うところだろうか。

 行く手の笠取山は直ぐ近くで、真ん中に一筋道が登っている。幅広に刈った防火帯になっているが、本来の笠取山は樹林に覆われている山だろう。その急な一筋道を登っている10人くらいのパーティーが見える。今までの静寂な登りから、ここはメジャーな奥秩父のピークだから、当然休日は多くの人がこの山を目当てに登って来る。

 小さな分水嶺を下ると、一ノ瀬方面から登ってきている林道に出て、笠取山に取り付く。滑りやすい急な登りをあえいで9時56分に頂上に着いた。先着の10人ほどの人たちで狭い山頂には休む場所もない。見下ろすと、後から後から人が急斜面に取り付いて、ここを目指して登ってくる。まるで、『蜘蛛の糸』のカンダタの気分…。山梨百名山の看板が立つここよりも、直ぐ先の樹林のピークの方が少し高そうだ。どっちにしても、長居は無用と言った感じだった。山梨側は雲の帳が景色を覆っているし、期待した眺めは得られなかったから、そのまま笠取山を下った。何人もの登ってくる人たちとすれ違う。

 雁峠まで引き返し、廃墟のような雁峠山荘に立ち寄る。この山小屋は既に営業していない。入る事もためらうくらい、2階建ての小さな小屋は老朽化して傾いている。入口に「建物が老朽化しています、緊急避難以外は使用しないで下さい。埼玉森林管理事務所」と書かれた貼り紙がしてあった。つっかえ棒を外して中にはいると、ガラスは破れ、建物は傾いていた。山小屋というより、飯場小屋といった雰囲気だが、かつては管理人がいるれっきとした山小屋だったようだ。食堂らしい広間の窓際に、昔入口に掛けられていたらしい、管理人名が書かれた「雁峠山荘」の看板が立てかけられていた。2階に上がると使えそうな毛布が3枚ばかり、意外にきれいで充分寝泊まりできそうだった。

 階下に降りて、食堂のベンチに座り紅茶を飲んで一休み。2階に上るはしご段の所に面白い貼り紙がある。「この小屋には現在管理人は不在ですが、管理人になりすました男が出没することがあるので注意して下さい」というもの。その「なりすまし男」の特徴は、頭が禿げているということで、漫画の似顔絵まで描いてあるから、思わず笑ってしまった。しかし、本当になりすまし男がいたら、真っ先にこんな貼り紙は撤去してしまうだろうから、それをここに貼った人の行為も?この話本当だろうか…。いたずらかな。

 10時41分。なんだか、キツネにつままれた様な雁峠山荘を後に燕山に向かう。笠取山の賑やかさが嘘のように、この先は誰にも会わなかった。

 急な登りを220㍍ばかり稼いで、主稜線からちょっと外れた燕山に11時17分着。コメツガやシャクナゲに覆われて展望はない。いかにも奥秩父らしい山頂。三角点は無いが、木の幹に古びて消えかかった「燕山2004m」のプレートがあった。

 燕山から雁坂峠まで続く稜線は雲が被りがちで、ほとんどは霧の中を進む。時折カヤトの原があって霧が切れると広瀬ダム湖や周辺の山が見えるが、あまり眺めは無かった。起伏の少ない稜線歩きは、のんびりと歩けるが、陽が当たらないから空気は冷たい。埼玉側はコメツガがびっしり生えた樹林が深く、山梨側はカヤトや笹の原が広がっている。5月に歩いた将監峠から竜喰山辺りの稜線に似ている。振り返ると、燕山はラクダの背のようなコブが目立つ姿で、遠くなった。

 2,044m峰は埼玉側を巻いて、相変わらず緩い稜線が、古礼山に差し掛かると登りになった。この付近は、コメツガやダケカンバの巨樹がどっしりとして深山の趣がある所。

 古礼山の山頂は主脈縦走路から少し離れている。縦走路の分岐から緩く登るとカヤトの原が開け、ベンチが2つあった。さらに進んだ、枯れたコメツガが目立つ疎林の中が古礼山の山頂だった。12時23分古礼山頂着。霧で見通しも利かないが、晴れていても展望は無い。山頂は道の途中と言った雰囲気の所だが、二等三角点と環境庁(当時)と埼玉県連名の立派な木製の山名標柱があった。これは雁坂嶺や破風山にあるのと同じモノ。

 静かで人の気配もない山頂でしばし憩う。ぼくのお気に入りの時間。少しのんびりペースで歩いているので、予定した時間より若干遅れ気味だが、別に急ぐこともないだろう。

 12時34分に古礼山頂から鬱蒼とした倒木が目立つコメツガの森を、主脈縦走路に下る。大きく下って急な登りを登り返し、13時1分に水晶山に着いた。またここにも古礼山と同じ山名標柱が立っていた。ここが今回の最高地点。水晶山の山頂も古礼山と同じように樹林の中で展望はない。ベンチが3つあって、ここもまた道の途中と言った様な所だ。カップラーメンを作ってお腹一杯。

 13時30分に水晶山を下る。水晶山を下りきったら、そのまま歩きやすい巻き道を辿ってしまった。ここは雁坂小屋に向かう巻き道で、巻かずに行った方が雁坂峠へは近道だったはずだが…。黒岩尾根と、雁坂小屋の青いトタン屋根が見えてきてから気付いたからもう遅かった。雁坂小屋のテント場には黄緑色のテントが一張り見えた。13時57分雁坂小屋着。2年前に雁坂嶺と破風山に登った時以来。相変わらず、風格のある昔風の山小屋は健在だった。小屋には寄らずにそのまま雁坂峠に上る。

 雁坂峠に登っていく笹の斜面で、シカの警戒音が山に響く。そういえば、2年前に来た時も、ここで大きな雄ジカが同じように警戒音を発していた。同じシカかなあ?まだ同じ雄ジカがテリトリーにしているのかなあ。

 14時17分に雁坂峠に到着。前回と同じ様にガスが去来し、冷たい風が吹き付けている。寒くてとても休めるような所ではない。そのまま広瀬に向けてころげるような急坂を下った。稜線には低くガスが垂れ込め、少し陰鬱な雰囲気。どんどん下り、久渡沢に降り立つ。沢を何度か渡渉し、沢沿いにやや不明な道を辿る。さすがに、この時期この時間では、少し沢の中は薄暗くなってきた。結構長い沢沿いの道が終わると、ナメラ沢分岐に出て、しばらくで林道に降りた。ここも亀田林業の看板がある。舗装された林道をたんたんと辿り、雁坂トンネル料金所の上に出た。雁坂トンネル道を迂回するように林道を下って、旧村営の釣り堀がある雁坂峠登山口に着いた。

 200㍍程で「道の駅みとみ」に16時40分到着。随分のんびり歩きだったせいか、予定していた時間を大幅にオーバーしたが、何とか暗くなる前に到着できた。
 道の駅には観光客がまだかなりいる。

 帰りは雁坂トンネルを抜け、この方面の定番になった大滝温泉「湯遊館」で汗を流し、秩父市内で夕食を食べて帰途についた。渋くて静かな奥秩父は、やっぱりぼくの趣向に合っている事を再認した今回の山行だった。

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2 コメント

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同じ様に考える山男 (み~たろう)
2012-07-30 14:18:24
山の楽しみ方、似てます。
同じように、私も登りたいと思った山や、形が気になった山、誰かが登ってきて良かったと言った山など、季節や場所なども含めランダムに登って楽しんでいます。
私の場合 山行は、予定期間の後に2日ほど取って最長で1週間ほどの期間を作って登ります。
もちろん、装備も予定期間プラス2日は用意します。
なので、毎回10kg前後は背負っています。
水場が無さそうな山の場合は水だけで10ℓ背負っていたりします。
今年は予定が多く取れそうですので奥多摩~雲取~笠取~大菩薩の縦走を計画してます。
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うらやましい (あさぎまだら)
2012-07-31 00:50:50
みーたろうさん初めまして。
山行というより放浪?漂泊?といった感じですね。
1週間も縦走できるなんてうらやましいです。
一口に「山登り」といっても、色んなスタイルがあります。ナントカ名山巡りの人や、特定の山域をしらみつぶしに登る人など…。ぼくの場合はおっしゃるとおりランダムですかね。ヒトケの無いトコロが好きなのは、ランダムでは無いかもしれません。モチロン有名山も登ってますから、やっぱりランダムなのかなあ?
予定されているのは大縦走ですね。
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