今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・南アルプス、アサヨ峰

2007年08月14日 | 山登りの記録 2007
平成19年8月11日(土)
栗沢山2,714m アサヨ峰2,799.1m

 梅雨明けが8月になり、明けたとたん連日35℃を越すような猛暑が続いている。残念ながら仕事の都合で随分山に行けない。夏山の予定も立てられず、去年と同じでこの分だと夏山は行けずじまいになりそうだった。
 泊まりは無理だけど、日帰りなら何とか行けそうなので、アルプス日帰りをする事にした。あまりに暑くて低い山には登る気がしない。

 日帰りできるアルプスの山というと、一部のアプローチが長い山を除けばあらかたは可能であると思う。しかし、入山に公共交通機関を使わなくてはならない場合は制約があって難しいかもしれない。残念ながらアルプスの主要入山口はマイカーでは入れないものが多いから、実際には日帰りできる所は限られてしまう。

 南アルプスの場合、北部以外は日帰りは相当困難だ。ということで、まだ登り残していたアサヨ峰に登ることにした。ここなら北沢峠までバスで上がってそこから標高差800㍍をピストンするだけだから、軽いハイキングエリア。こんなに簡単にアルプス日帰りが出来て、しかも人も多くなさそうな所はあまり無いだろう。なにしろお盆休みに入っているからどこもかしこも人で一杯だ。南アルプス北部ではこのアサヨ峰と小太郎山と鋸岳が未登で残っていた。

 金曜の夜に家を出た。南や中央アルプス方面に行く時のいつもの定番コースを行く。内山・麦草・杖突と順調に峠を越え、伊那市になった高遠から旧長谷村に入る。3年前に甲斐駒・仙丈に登るため子供と来た仙流荘の無料駐車場に1時過ぎに着いた。上の駐車場はほぼ満車だが、下の駐車場は疎らで、意外に人が少ない。北沢峠行きのバスは6時05分発ということなので、充分に仮眠時間はあった。ハズだった…。

 暑いからシュラフを敷いて車の中で横になった。時々駐車場に入ってくる車の音はするが、少し眠った。3時過ぎに騒がしくなって目が覚めた。始発バスの前に臨時のバスが出ると言うことらしかったが、ねぼけ頭でしばらく理解できなかった。

 4時前にバス停に人が集まってバスが1台出て行った。遅ればせながら、おっとり刀でバス駅まで行って様子を伺うと、今日は混雑が予想されるので、まだこの後も人が集まり次第臨時便が出ると言うことだった。切符を買って車に戻った。今日はホンの小さいザックなのに、窓口のおばちゃんは半強制的に荷物料金も上乗せした。こんな小さな荷物ででかいザックと一緒かよ…やはり伊那市になったからか、長谷村の頃より「がめつく」なった様だった。バスも新しくしたようなので、その分お客から金を取るように、という至上命令か?そこに見本の「これより大きなリュックは荷物料金…」とあったが、ぼくのはこの見本とほぼ同じなのにな。ぼくの主張もおばちゃんは聞く耳を持たない様だった。

 車に帰って支度をし、再びバス駅に来ると、直ぐにも1台出ると言うことだ。4時10分に補助イスまで使ってすし詰めのバスは仙流荘を後に薄暗い舗装林道を上っていく。3年前に来たときはみんなおじいちゃんだった運転手も若い人に変わった。ガイドをしながら「渓流下りの船頭さん」みたいなバスだったが、普通のバスになってしまったようだ。
 時間が早かったから、乗った人はみんな眠っていた。やはり若い人はほとんど見ない。かなりの年配者が大きなザックにテントまで担いでアルプス登山というのが、最近では普通になっている。夏のアルプスも高齢化といったところでしょうか…。

 戸台川が恐ろしいほど下を流れている山の中腹を横切る南アルプス林道を、マイクロバスはぐんぐん上っていく。帰りのバスの運転手に因れば、戸台川まで400㍍程あるということだ。もし、間違って落ちたら…絶壁の様な所もあってそんな事を思った。戸台川を挟んだ向かいは鋸岳がシルエットになって聳えている。近いうちに登ろうと予定している山だから、急峻な山容を念入りに目で追った。その稜線続きの右手高みには駒津峰と双児山、その上に白っぽい甲斐駒が姿を現した。大平小屋を過ぎると鬱蒼とした森林に入り、間もなく北沢峠に着いた。

 思いがけなく早い到着で、まだ5時ちょっと過ぎ。予定では6時05分発のバスに乗って、7時頃に北沢峠到着だから2時間早く登山口に着いたことになった。当然この時期は、昼を過ぎればアルプスの稜線は雲に巻かれて展望が無くなることを考えれば少しでも早い登り出しは有利だ。さすがに半袖では肌寒い北沢峠を後に、栗沢山の登り口がある北沢長衛小屋に向かう。記憶も新しいテン場には色とりどりのテントが、しかしこの時期にしては少し少ない数だった。
 北沢長衛小屋は北沢駒仙小屋という名前に変わっていた。竹沢長衛氏後裔の経営から南アルプス市営に変わって名前も変わった様だが、馴染まない名前には少し違和感がある。

 小屋で水を汲んで、朝食のパンを食べ、5時32分に小屋前の橋を渡って直ぐ二分する「至栗沢山」と書かれた右の道に入った。シラビソの樹林をいきなりの急登で汗をかく。ともかく、一直線の登りでその分高度はぐんぐん稼ぐのだった。

 向かいの双児山と同じくらいの高さになって一段落。先行していた人を続けて2人抜いて、いくらか緩くなってきた登りを尚も上っていく。樹林の間から北岳が見えているが、もう頂上付近には雲が湧き出している。振り返る背後には大きく根張りした仙丈ヶ岳が一片の雲も無くすっきりと姿を現した。南アルプスでも最も巨大な山だろう。何度もその頂に立ったが、重厚で膨大な山容は頂上付近のカールも特徴的で、対峙した甲斐駒とは対照的だ。その甲斐駒はまだここからは見えない。

 シラビソの樹林も疎らになり、登りだして1時間半で尾根状になり、所々から甲斐駒が姿を見せるようになった。花崗岩の白っぽいいかつい山容は、この方面からだと右手に摩利支天のコブを付けてますますゴツイ握りこぶしみたいな山だ。何度も登ったが、頂上から展望があったためしがない。今のところ雲一つ無く全容を現している。

 間もなくハイマツが現れ、バームクーヘンの様な層ができた砂岩がごろごろしてくると、目の前に栗沢山の頂上部が見えた。7時23分に栗沢山頂着。頂上には3人の先客がいたが、3人とも仙水小屋に泊まって登ってきたという。もうこの時間で既に北岳方面は完全に頂上部が雲の中。甲斐駒にも雲が絡みだしているし、これから向かうアサヨ峰方面にも甲府盆地側から雲が押し寄せ、鳳凰三山は雲に見え隠れ。仙丈だけがかろうじて頂上が見えていた。頂上部には雲がくっついているけど、全体としては夏の青空が広がり、遠くの中央アルプスや八ヶ岳はすっきり見えているし、南アルプスも塩見岳とか荒川岳方面はくっきり晴れていた。

 登りだして1時間50分で頂上に立って、これじゃアルプスも三文安かなあ。でも、「森林の南アルプス」はこうして見渡しても樹林に覆われ、重厚でシブイ山塊で垢抜けた北アルプスとはまた違った重々しい奥深さが堪らないと、ぼくは思うのだった。おむすびを食べ、写真を撮って一休み。

 7時43分に栗沢山からアサヨ峰に向かう。アサヨ峰という名前は余りぱっとしないが、朝与嶺というのが元々の名前らしい。甲府盆地側から朝日がこの山の頂にまず当たって朝が来るからというのが由来とのこと。名前が地味でちょっと変わっているせいか、この山を目的に登りに来る人はあまりいない様だ。昔から気になっていたが、そういうぼくも、随分この山は後回しになっていた。そのアサヨ峰は砂岩とハイマツの稜線続きで、直ぐそこにドーム状に見えていた。頂上の多分標識?と思われる突起物が間近に見えるから、直ぐに着いてしまいそう。まだ時間は8時にもなっていないので、この分だと北沢峠に昼少し過ぎには下ってしまう。予定の時間より随分早いので、帰りは4時のバスとしていたものが、1時のバスでも乗れてしまいそうな気配だった。ちょっと複雑な気持ちもある…。

 アサヨ峰まではあまり大きなアップダウンは無い。もう花の時期はほぼ終わって、咲き残りのハクサンシャクナゲとゴゼンタチバナ、岩陰にトウヤクリンドウがあるくらいだった。のんびり稜線を歩いているが、風もなく強い陽射しで、アルプスの稜線も暑く感じた。下界はまた灼熱の暑さだろうな…。

 背後の甲斐駒も向かいの仙丈も雲がまとわりついて、頂上は隠れ気味。でも夏型が安定しているのか、雷雲になるような様子は無かった。8時38分にアサヨ峰着。着いた時は誰も居なかったが、早川尾根を縦走してきた数人の人たちと栗沢山を経てやってきた人が3人、相次いで間もなく山頂に到着したが、至って静かな山頂だった。

 バスが早出した関係でほとんど寝ていなかったぼくは、岩の上に横になってしばし仮眠。陽射しが暑いけど、イイ気分だ。

 9時26分にアサヨ峰を下る。大分雲の去来が多くなった稜線を戻り、栗沢山に10時17分に戻ってくる。栗沢山の頂上は結構人が沢山居た。
 この分だと余裕で1時のバスに乗れそうだ。稜線も暑いので、このまま休まずに下ることにした。シラビソの急斜面をずんずん下って。11時29分に北沢駒仙小屋に下り着く。やはりここも暑い感じ。何となく昼のけだるい雰囲気がテント場に漂っている。テントの数もホントニ少ない。

 北沢峠のバス停に11時48分着。1時のハズがここもまた臨時便が出て、それに乗り込み、結局12時10分に北沢峠を後にした。バスが発車する間際、ぼくの座席の窓にアサギマダラがひらひら飛んできて山のお別れをしてくれた。アサギマダラに会ったのは実は久しぶりだった。何時見てもこの蝶は優雅で素敵だなあ。

 ひやひやする絶壁の道をまたバスは結構飛ばして、景色が白く見える程灼熱の仙流荘バス停に1時20分到着。やはり下界(ここはまだ標高は高いが)の暑さは半端じゃない、駐車場に停めてあった車の中は乾燥機の中みたいだった。

 帰りは、この方面での定番になった高遠温泉「さくらの湯」でさっぱりと汗を流して帰路についた。アルプス日帰りで、正味帯山時間は6時間程度のミニハイキング?だったが、されどアルプス。ぼくは結構満足でした。それにしても、稜線も暑かったです。

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