今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・雨ん坊主、中垣岩

2008年12月30日 | 山登りの記録 2008
平成20年12月28日(日)
雨ん坊主1,295.0m 中垣岩1,098m 大峯983m
 
 今年も間もなく終わろうとしている。年末寒波か?かなりの寒波がやって来たようで、週末から寒さが厳しい。冬型の時は、関東の平野部は晴天だからどこでも良い訳だが、冬型が強すぎると、山を越えて雪が群馬県の真ん中くらいまでやって来てしまう。さて、じゃあ何処に行こうか?今年の最後の山だ。

 昨年の初冬に登った角落山塊(浅間隠・鼻曲山周辺)の竜ヶ岳と笹塒山から、正面に見えた雨ん坊主と中垣岩は、あの時予備に考えていた山だが、まだ登っていない。浅間隠の付近にも未登の山が幾つかあるが、今回はこの雨ん坊主と中垣岩に登ることにした。

 雨ん坊主は雨坊主山とかドドメキの頭とかの別名もあるが、普通は『雨ん坊主』と山の字が付かない呼称が定着している。この山を知ったのは、実はもう20年以上昔になる。当時の新ハイキングにリポートが載っていたので変な名前の山だなあとは思ったが、この山塊の角落山や剣の峰以上には登高欲が湧かなかった。中垣岩は『私が登った群馬300山』で知った。今回は、『…300山』に出ている逆コースを辿って雨ん坊主と中垣岩を登ってから、二度上峠付近の浅間隠前衛の山や鷹繋山をハシゴしようと考えていたが、午前中吹雪の様な天候で、雨ん坊主と中垣岩で時間が一杯になってしまった。

 土曜の夜に家を出て、旧倉渕村(現高崎市)に向かう。『…300山』にある三沢林道というのを見つけるのに道を間違え、随分余計に走ってしまった。倉渕の権田交差点の先、三沢橋の百庚申の所を左折して、道なりに走るとまた元に戻ってしまった?再び引き返し、林道と思われた道は延々と走って相間川まで出てしまった。キツネにつままれた感じ…。三度目の正直で、「道なりで無い」「真っ直ぐ繋がらない」最も、らしくない道の入口が実は三沢林道の入口だった。

 『…300山』の頃と少し道が変わっているのか?この本に書いてある様には簡単に三沢林道には入れない。県道から入ってしばらく集落を走り、人家が無くなった辺りから左に下り気味に行く道は相間川方面に向かう林道の入口で、これは×。そのまま舗装路を進みカーブで少し上っていく道はUターンしてまた元に戻ってしまう道で、これも×。正しくは、舗装路のカーブを上がった所から左に細く入るような未舗装路が三沢林道の入口だ。折角の詳細なガイドも、この辺の記載がないと使えない。

 時間ロスで午前0時を回ってしまった。三沢林道が大日影支線と分岐する橋の手前に駐車スペースがあり、ここに車を停めてシュラフに潜った。一応アラームは6時半にしたが…結局まだ薄暗かったから起きたのは7時頃だった。

 目が覚めた時は晴れているようだった。杉林の中の林道だから広く空を見ることはできないが…。時折雲のベールが覆ってちらちら雪が落ちてくるが、次第に青空が広がりそうな気配だった。ラジオの天気予報では、午前中雪が残る山沿いも、昼過ぎから晴れてくると言っている。ラジオがいう「山沿い」とは、日本海側との境のことだろうから、ここは問題なく晴れるだろう。昨日までの寒さに比べれば、それ程寒くないはという感じ。

 クリームパンを食べて、本日からは冬山装備(低山用です)、ゴアの上下にゴアのスパッツ、帽子も手袋も冬用のモノにした。見たところ、周辺は雪もないからストック一本持って、6本爪アイゼンは持たないで、7時26分に出発。

 三沢林道を上っていくと、入口から100㍍ほどの所に施錠された遮断機が下りていた。ここは完全に営林署の専用林道のようで、解放はしていないようだ。山腹沿いに付けられた未舗装路を進む。日影にはさっと蒔いた程度の雪があるが、これはいわゆる風花の降り積もったものだろう。冬型が強すぎると、雪の盾になっている高い山を乗り越えてきた雪雲が、乾雪を吹き散らしていく。群馬ではおなじみのもの。乾いた雪だから、気温が低いと融けずに次第に積もっていく。

 高圧鉄塔が見える。林道の上を高圧線が横切っている。高圧線からは、地下鉄のホームで聞く列車の音と間違えそうなゴーゴーとうなる風音が異様だ。分かっては居ても、いつも何の音だろうと周囲を見回してしまう。その、高圧線が限る空は、北側から薄墨色の雲のベールが広がってきている。風花とも言えない雪が舞ってきた。

 林道の崩落止めコンクリート法面の横に、何か黒いモノが動いた。人の気配を感じてのろのろと逃げていく太ったカモシカだった。この後に入った山の斜面には糞が沢山散らばっていた。この辺りは、シカではなくてカモシカが多いようだ。カモシカは後ろを振り向いた姿勢のまま、ぼくがずっと先のカーブを曲がるまで、じっとこちらを見ていた。

 GPSで確認して、雨ん坊主と中垣岩の鞍部に繋がる尾根の取り付き地点を探す。丁度、林道の道が尾根を大きく迂回する地点が、その取り付き点らしい。見ると、そこに青いビニール紐が杉の枝にぶら下がっていた。8時25分に、そこから尾根に取り付く。今回、当初はここから鞍部に上って、中垣岩と雨ん坊主をピストンして戻ろうと思っていた。その後に幾つかの山をハシゴする予定だったから、最短ルートで2山を狙おうと思った訳だ。

 杉の植林帯を急登し、尾根に乗る。尾根は次第に痩せてきて、露岩が現れ、行く手の中垣岩のピークらしい山が見えてくる。雪が激しくなり、吹き付けてくる。完全に吹雪の山になってしまった。中垣岩は南側から見ると、杉と雑木の何の変哲もない薮山だ。その向こう、北側に壮絶な岩壁が連なる山には見えない。でも、それを伺わせるような岩が尾根の所々に出てくる。その岩は妙義の岩と同じ角れき凝灰岩で、こぶし大の岩を黒いセメントを流して固めたようなものだ。妙義は固い火山質の安山岩と、この凝灰岩が組み合わさってその独特の岩峰を形作っているが、妙義からさほど離れていないこの山も、古い妙義荒船火山の一部なのだろう。雨ん坊主に登る北斜面から見下ろす中垣岩は、規模こそ小さいが裏妙義北篭沢の岩峰群(いわゆる御殿)の様だった。

 ひょろひょろとしたナラが目立つ雑木の尾根になり、平坦な鞍部に8時51分に着いた。『…300山』によれば、ここに小石祠があると言うことだが?確認できなかった。そのまま、まずは中垣岩に向かう。
 広く平らな鞍部から、直ぐに薄い笹の下生えがある痩せた稜線を伝う。吹き付ける雪が地面を真っ白に変えている。すっかり冬山の様子になってしまった。吹き付ける風は冷たく痛いくらいに感じる。

 稜線は複雑に交差し、岩場に出た。あの妙義と同じ様な岩がここから岩稜になって続いている。北面はこの岩稜が一気に60~70㍍切れて下の薮山と段差を作っていた。中垣岩と言っても、実際は一つの岩ではなく、コの字型に60~70㍍の高さの10以上の岩塔が繋がってできた断崖が薮山の北側にあるという様なものだった。どこが一番高いのか良くわからないが、岩稜をそのまま進むと、へつるようになり一気に切れた岩になって進めなくなった。吹き付ける雪混じりの風で吹き飛ばされそうだ。

 南に薮を少し下り、ここに赤テープがあったので大きく湾曲するように回り込んで、一旦杉林の斜面を登り、真下にV字キレットみたいな岩の割れ目を覗いて、高く見える南に突き出した岩頭へ向かう踏跡を辿った。薮に囲まれて眺めも良くない高まりに、最近よく見かける例の塩ビ製の小さな『中垣岩』のプレートが付いた地点が山頂だった。9時23分中垣岩着。

 直ぐ先に、ここよりは低いが、薮が多少付いているとは言え、両側が気持ちが良いほど切れたナイフリッジの先に岩頭があり、そこまで行けば眺めは最高だろう。でも、今日のこの強く吹き付ける雪と、ナイフリッジも雪が凍り付いていたから、とてもそこまで行く気にはならなかった。残念ながら、吹雪いているから景色も少し朦朧としている。

 立ったまま、寒い薮の山頂で熱い紅茶を飲む。薮を透かして見える中垣岩の東側一番端は一枚岩の衝立みたいな岩に、突き立った槍のような岩峰が繋がって、折しも吹き付ける雪で凄絶な眺めだ。いずれも目算で70㍍くらいはありそう。そこを登るのは完全にクライミングの領域だろう。しかし、向こうからこっちを見れば矢張り同じように見えるのだろうか?

 9時39分に中垣岩のピークから引き返す。途中の岩稜伝いは、かじかむ手で危なっかしいへつりを越え、強風で飛ばされそうだ。その岩稜からは、雨ん坊主とその奥に角落山・鼻曲山が雪のベールの向こうに寒々と見えた。浅間隠も浅間山も、向かいの竜ヶ岳と笹塒山も雪雲に隠れて今は見えない。

 10時16分に鞍部に戻ってくると、雨ん坊主寄りの南端に本当に小さな石祠があった。これが『…300山』に書かれていた小石祠だろう。やけに頭でっかちで、高さが40㌢くらいしかない。そのまま雨ん坊主に向かう。

 中垣岩へ向かうルートより明瞭な踏跡があり、赤テープも大分多い。一面の雪の斜面から雨ん坊主に繋がる稜線は細くなり、北面の急な斜面を絡むように登っている。雪もなければどうということも無いだろうが、凍り付いた急斜面はかなり斜度もあり、掴む薮なども無い。吹き付ける風も強いから、滑落に気を遣いながらの登高になる。最後の頂上に繋がる斜めの登り部分はアイゼンが欲しいくらいの所だった。ここから小妙義山の様な中垣岩が下に見下ろせる。

 北面の登りから、東に回り込んで広くて平らな雨ん坊主の山頂部に出た。上り着いた東の端に二等三角点が石に囲まれていた。山頂はそこから100㍍ばかり先の西端の高まりだった。高いナラの木に囲まれた雨ん坊主山頂に11時9分着。石祠がぽつんとある山頂は余り眺めも良くない。ここにきてやっと晴れ間が見えてきた。角落山や鼻曲山は見えていたが、ここで今日初めて浅間隠と浅間山が姿を現した。浅間山は砂糖菓子の様!

 風は相変わらず強いが、青空が上空に広がり、陽が差してきた分だけ暖かく感じる。ナラの木にMHCの山名板があるが、他は見あたらない。思いの外ここまでで時間が掛かった。先程の北面をまた引き返すのは危なそうなのと、この後予定していたハシゴの山は大分時間的に難しそうだったから、帰りは東尾根を下ってその代わり大峯経由で戻ることにして、山頂で休憩とした。

 11時46分に雨ん坊主を下る。すっかり晴れ渡った青空に雪がまぶしい。東尾根はなだらかで気持ちの良い雪尾根のプロムナード。数カ所岩場もあるが問題ない。12時33分に送電鉄塔に着き。そこからは浅間隠や竜ヶ岳・笹塒山の大展望。そのまま、巡視路を下って林道に降りた。降りた林道を上に向かうと大峯に続く尾根に乗り、次の送電鉄塔から薮道を辿る。ここから大峯までは所々ルートが不明になるが、尾根通しに行く。スズタケの薮が結構うるさい。

 大峯手前で伐採地があり、ここでも展望があった。その先で薮にルートを失って少しタイムロスする。大峯の登りに差し掛かる辺りはナラの巨木があり、そこにも石祠があった。大峯へは急な登りを少しで着いた。14時14分大峯着。大きな擬宝珠を持つ石祠がある山頂は、岩場のあちこちから素晴らしい眺めがあった。『大峯』という名前といい、祠が榛名山を向いているところからも、この山は熊野信仰の山だったのだろうか?この付近では、唯一地形図に記名のある山だ。

 東に榛名山や高崎の市街も良く見え、西北は雨ん坊主や浅間隠・竜ヶ岳・笹塒山の大展望で、南には妙義や西上州の山並みの上に奥秩父の連山が霞んでいた。ここが今日一番の展望スポットだった。14時38分に大峯を下る。

 大峯の下りは痩せた岩混じりの尾根を下って気が抜けない。その下から、林道に繋がる尾根へのルートで迷ってしまった。一つ隣の尾根をしばらく下ってから、馬鹿に薮がちなのと、そういえば随分頻繁に見た赤テープを見なくなったなあ、と思って引き返した。えぐれたような沢の源頭部から尾根が2つ下に広がっていたのだ。正規のルートの方が尾根も緩くそのままなだらかに林道に下っていた。途中で引き返した尾根は、下部で岩場こそ無いが、急峻なまま林道へは降りずに奥の沢に下っていた。このルートの下りは侮れない。上りなら間違えることも無いだろう。

 15時18分に林道に降り立つ。降りた三沢林道日影沢支線をしばらく辿って、駐車地点の分岐に15時32分に戻った。結局一日たっぷりの周回になってしまった。

 帰りは亀沢温泉に寄って汗を流した。広くて清潔な温泉で、露天風呂も申し分ない。誰も居なくなった温泉をしばらく独り占めしていたが、後から3人の子供がぎゃーぎゃー大騒ぎして入ってきて台無しになった。ヤレヤレ。保護者もいない子供達は傍若無人…。

 すっかり薄暗くなった倉渕を後に家路についた。今年最後の山は、正にシブーイ山でした。

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2 コメント

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寒そう (重鎮)
2008-12-30 06:24:44
ホントに寒そうな画像ですね。
大峯を除いて私は未登ですので、興味深く読みました。
三沢林道は入り口が分かりにくそうですが、昔は養魚場の脇を抜けて奥に進んだ記憶があります。
まあ、夜中にあのあたりで林道を探すのは至難のワザかと思います。
大峯の下降が分かり難い様ですが、コースは逆の方が良いのでしょうか。

この付近は熊が多いと聞きます。
この時期がやっぱ良いのでしょうね。

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クマの気配濃厚…。 (あさぎまだら)
2008-12-30 14:20:11
林道は何も考えなければ案外すっと入れるんでしょう。養魚場は目安になります。ただし、明るいときでなければ目安になりませんよね。

大峯の入口が少し判りにくいですが(林道が古い作業道を分断しているから)尾根が張り出したカーブの所を上に上がります。青いビニール紐が付いています。確かに、逆コースの方がイイでしょうね。ただ、雨ん坊主から中垣岩に向かう場合、下りは北面の急傾斜地で、凍っているときは結構危ないですね。

この辺り、カモシカの密度が高いようですし、クマも多そうです。糞を沢山見ました。熊棚もいっぱいあります。大きめの音がする熊ベルは必携でしょうか。
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