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富士見町御射山神戸の双体道祖神

2018-05-10 23:07:42 | 民俗学

“どんど火”より

 平出一治氏は、平成4年10月1日発行の『遙北通信』124号に、富士見町御射山神戸の双体道祖神について報告をされた。これまで諏訪地域の昭和の道祖神を平出氏報告から扱ってみたが、諏訪地域特有の新しい道祖神の建立のあり方のようなものがうかがえる。昭和の道祖神というものの、昭和は64年まで続いた。この道祖神が59年建立と言うから、すでに30年以上前の建立。いわゆる道祖神信仰という捉え方でいうのなら、戦前の信仰を捉えがちであるが、戦後のこうした新たに建てられた道祖神は、もちろん信仰を有しながらも、多様な建立意識が根底に見え興味深い。

 

富士見町御射山神戸の双体道祖神(その2) (『遙北通信』124号 平成4年10月1日発行) 平出一冶

 諏訪郡富士見町御射山神戸は、古村でこれまでにも双体道祖神2基(「昭和の道祖神2 富士見町御射山神戸の双体像」『遙北通信』58号を含む)・石祠道祖神5基・道祖神文字碑1基が祀られていたが、森田養鱒場の庭に双体道祖神が新たに祀られた。

 富士見町境池袋の平出征夫氏が刻んだもので、以前に紹介した富士見町歴史民俗資料館の双体像(『遙北通信』72号)が、やはり平出征夫氏の手によるものであるが、本資料の方が彫りは深い。自然石に円形区画を施し、その中に2神をレリーフした造形は、基本的には同じであるし、面長な作りは特徴的でもある。

 男神は右で盃を持ち、女神は左で瓢箪を持っている添立の祝言像である。男神は正面を、女神は斜め前方を見ている。

 台石の上に鎮座しているが、大きさは高さ80cm、幅85cm、厚さ40cm、像高は足の位置(高さ)が若干違っているが男神が大きく56cm、女神は54cmを計る。台石の高さは51cmである。

  銘文 (碑面) 森田屋
            水房会講中
      (碑陰) 昭和五十九子年十一月吉日建之

 なお、建立した水房溝は、有志が集まったもので「水房」の名は、森田養鱒場の庭にある樹木から取ったとのことである。水神さまも祀っているとのことで、講(お祭り)は年2回行ない、1回目は水神、2回目は道祖神のお祭りとしているとのことであった。


 文中にある平出氏報告「昭和の道祖神2 富士見町御射山神戸の双体像」は下記のようなものだった。

昭和の道祖神2
富士見町御射山神戸の双体像 (『遙北通信』58号 昭和63年4月3日発行) 平出一冶

 諏訪郡富士見町の御射山神戸は古村で、これまでにも双体像1・石祠5・文字碑1の道祖神が祀られていたが、JR中央東線すずらんの里駅近くの三差路に、双体像が新たに祀られた。安山岩の自然石の2神をレリーブしたもので、同質の台石の上に鎮座している。それは「二十三夜」の文字碑・万延元年と昭和55年建立の「庚申」文字碑と並んでいる。

 大きさは高さ47cm、幅35cm、厚さ25cmとそれほど大きくない。像高は男神が19cm、女神が18cmである。台石の高さは30cmを計る。

 碑文(裏面) 昭和五十六年十月吉日


 同じく文中にある富士見町歴史民俗資料館の双体像の紹介文は、下記のようなものだった。

昭和の道祖神10
富士見町歴史民族資料館の道祖神場 (『遙北通信』72号 昭和63年11月27日発行) 平出一冶

 諏訪郡富士見町の歴史民俗資料館が、井戸尻考古館に隣接して建設され、昭和61年7月に開館された。庭に、、富士見町堺池袋の平出征夫氏が刻んだ道祖神双体像が祀られた。その後、武藤雄六・樋口誠司両氏によって高さ165cmの男根も作られ、自然石の女陰、男根、丸石、コンホータ石が一緒に祀られたことにより、立派な道祖神場が誕生した。

 その御魂入れ祭が、昭和63年1月16日の夜中に、富士修行道の行者富行哲心の手で厳かの中にも力強く執行された。1時から3時は緒天善神降臨の時(しょてんぜんじんこうりんのとき)で、魔の神が不在である。零士30分に準備を始め、50分からは塩水で双体像・男根等を藁タワシで洗いきよめた。1時10分に神事が始められ2時5分に終了した。

 道祖神は安山岩の自然石に2神をレリーフしたもので、同質の台石の上に鎮座している。大きさは高さ85cm、幅115cm、厚さ27cm。像高は男神が41cm、女神が41.5cmで、やや大きい。台石の高さは53cmを計る。

銘文(左側面) 昭和六十一丙寅年水無月吉日

 

 ※「遙北石造文化同好会」のこと 後編に触れた通り、「平出一治氏のこと」について回想録として掲載している。

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