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令和元年台風19号災害

2019-10-13 16:30:00 | 自然から学ぶ

10月12日積算雨量

 

 昨日からわたしの日記のアクセスに、災害関連の記事が増加した。とりわけ多いのは「昭和58年9月29日、飯山市常盤の千曲川決壊」である。「昭和58年台風10号」関連のひとつの記事である。長野県内で大きな災害といえば、わたしの記憶の中ではこの昭和58年台風10号災害が最大だ。もちろんもう少し年代が上の人たちは、昭和36年の梅雨前線豪雨災害が最大であることは認める。しかし、現代の災害という印象で捉えると、やはり昭和58年の災害は、広範で、長野県人の記憶に大きい。ところが、その災害からすでに36年。わたしが昭和36年災を最も大きなものと認識しないのは、まだわたしにとっては記憶に留められない歳だったからだ。ようは、昭和58年災も、認識にある人は40歳以上あるいは45歳くらいにならないと印象がないだろう。ようは忘れられた災害と言ってしまっても不思議ではない。わが社でも当時の災害を、会社にいて携わった者は数えるほど。

 なぜ冒頭の記事がアクセスされているのか、もちろん台風19号の被害が報じられ始めていたので、千曲川関連の記事にアクセスされるのはわからないでもなかった。

 実は12日の豪雨は、佐久地域に集中していた。冒頭のグラフは、12日に記録されたアメダスの雨量データをまとめたものだ。北相木の400ミリという数字は驚くようなもの。おそらく昭和58年災害時の雨量より多いはずだ。同様に軽井沢や佐久、あるいは鹿数湯といった長野県東信地域の雨量がとくに多いことがわかる。いっぽう松本の雨量は150ミリ以下。けしてすくないわけではないが、昭和58年災害時に比較すると、広域的に捉えると千曲川への流入は広域的ではなかったかもしれない。当時も飯山市常磐で千曲川堤防が決壊したのは、天候が回復した早朝のことだった。飯山でたくさん雨が降ったわけではない。上流で降った雨によって浸水被害を被った。昭和58年だけではない。前年には支流樽川の堤防が決壊して、大きな浸水被害があった。どこかで堤防が切れることで、ほかの地域は「助かった」という言葉をよく耳にした。県境域を前にして、千曲川は蛇行とともに、せき止められるように狭くなる。このことも以前触れた通り、旧豊田村において、明治初期に蛇行していた千曲川をショートカットする大事業が行われている。中野市の延徳といえば水害常習地帯だった。昭和58年災においても、長野市松代など多くの千曲川沿線で水害を招いた。それによって堤防の嵩上げされたところも多い。が、全線に渡って対策が安全な対策が施されたわけではないだろう。長い間千曲川での大きな氾濫は起きなかった。しかし、あの時代の記憶をよみ起こせば、内水氾濫は当たり前の地域。そして堤防に至っても排水不能となれば、どこかで決壊する。昭和58年ころと同じことが、記憶に蘇ってくる。繰り返し日記で触れてきたことは、忘れてはならない記憶だからだ。

 

補足

 昭和57年の台風18号災害と、昭和58年台風10号災害について、当時の新聞をあらためて紐解いてみた。千曲川堤防が決壊した後者の場合、降り始めから9月29日午前零時までの雨量として、飯田275mm、諏訪212mm、松本197mm、上田176mm、軽井沢136mm、長野132mmだったという(信濃毎日新聞S58.9.29朝刊)。同じ地点の雨量を冒頭グラフの数字で比較して見ると、それぞれ48.5、72.0、134.0、143.0、314.5、132.0だった。ただしこれは12日のみの積算雨量であって、降り始めからの雨量ではない。当時の雨量より多かったのは軽井沢と長野のみではあるが、軽井沢の雨量は2倍以上。佐久地域の雨量は他の地域で降った分を補うだけの数値だったと言える。とくに昭和58年の場合は、千曲川に合流する犀川流域の雨量が多かった。しかし、今回の佐久地域での連続的雨量は、明らかに異常値を示すもので、下流域に影響を与えそうなことは容易にわかったはず。

 ちなみに昭和57年の台風18号の際は、今回浸水している豊野で同様の浸水が発生したわけであるが、9月8日から10日の3日間の雨量が軽井沢で106mmだった(信濃毎日新聞S57.9.13朝刊)。その雨量に比較すれば、短時間に比較の対象にならないほどの雨が降っている。あえていえば、当時の雨量と比較してどれほど多いかを伝える報道があって良かったのではないか。

 

参考

ふたたび台風18号

台風18号

小布施町「押切」

「ダムは必要なのか」序章②

 


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