登記もろもろ覚え書

司法書士の覚え書き

コンビニ交付証明書と登記申請

2012-11-08 | Weblog

平成24年11月1日から
さいたま市でもコンビニエンスストア(セブンイレブン)において
住民票の写し、及び印鑑証明書等の交付が受けられるようになったらしい。
交付には住基カードが必要になるが
その住基カードも翌3月31日までは無料で交付するようである(通常は500円)。
http://www.city.saitama.jp/www/contents/1344400094007/files/0809gidai1.pdf

コンビニのキオスク端末を通して住民基本台帳カードにより本人確認を行ったうえで
交付手数料を納めると、住民票の写し等の証明書が交付されるということである。
土日休日でも夜間23時まで交付が可能である。

コンビニ交付の証明書は
A4サイズの普通紙(白黒)であり体裁が役所で交付されるものとは異なる。

よってコンビニ交付証明書には、特殊の偽造防止策が施され、
コピーをすると「複写」という文字が浮かび上がる措置がされていることに加え、
裏面に偽造防止検出画像及びスクランブル画像が印刷されている。

コンビニ交付証明書も役所で交付された証明書と同様に
登記や供託の手続きに添付情報として用いることができる。


住基カードが普及すると
これらのコンビニ交付証明書に出会う機会が多くなるかもしれない。
※従前の住基カードのままでは、コンビニ交付サービスは受けられないらしいので要確認。



***

コンビニ交付証明書を提供して不動産登記の申請がなされた場合の
登記官の取り扱いについて通達がでている。
(法務省第二・民商第240号平成22年1月29日)


法務局登記官はコンビニ交付証明書により登記の申請があった場合
おおむね次のように取り扱うことになるようである。


1 証明書の「表面」につき、現在行っている審査と同様の審査をする。
   ↓
2 証明書の「裏面」につき、専用の読み取り機を使用して
偽造防止検出画像の確認をする。

※ 専用の読み取り機が配備されていない場合、
証明書を発行した市区町村に対して偽造の有無を確認する。
確認方法は、あらかじめ市区町村の担当者に連絡をとったうえ
印鑑証明書の原本を持参または送付する方法による。
住民票の写しの場合は、記載事項を電話やFaxで確認できる場合であれば
その方法によってもよい。
   
3 専用の読取機を使用してもなお証明書の真贋に疑義があるときは
上記の方法で市区村長に問い合わせる。
   ↓
4 市区村長に対する確認を行った場合には、当該確認を行った旨を
申請情報または証明書等の適宜の欄に記載するものとする。


http://nnn07.web.fc2.com/n01/20100129hm2_240.pdf


専用の読取機が配備されていれば
証明書等に疑義がある等の特段の事情がない限り
市区村長に問い合わせる必要はない。
  ↓   
専用の読取機が配備されていなければ
必ず市区町村に偽造の有無を確認しなければならない。
印鑑証明書については、持参するか送付しなければならない。
  ↓ 
確認の事実は、申請情報または証明書等に記載しなければならないので
端折ることはできない
  ↓ 
以上より、専用の読取機がない場合には
登記の完了は確実に遅れるものと思われる。





***


司法書士等がコンビニ交付証明書を受け取った場合は
次のような方法で、証明書に記載された内容が
改ざんされていないかを確認することになりそうである。


1 コンビニ交付証明書の裏面全体をスキャナで読み取り
ファイルに保存する。

※現物をいろいろ調査した方の報告によると
・原本のスキャン・・OK
・コピーのスキャン・・OK
・FAXのスキャン・・NG  らしいです。

   ↓

2 問い合わせサイトにアクセスし、保存したファイルデータを送信する。
https://cdid.lg-waps.jp/
   ↓
3 問い合わせサイトから、暗号の解除された画像が送信され、画面に表示される。
   ↓
4 表示された内容と、証明書の表面とを見比べて改ざんされていないかを
確認する。



***


売買等所有権移転同時決済取引の際に
登記義務者たる売主がコンビニ交付の印鑑証明書等を持参してきた場合の方策


証明書の内容が改ざんされていないか、について
チェックができるにもかかわらずそれをしないで受け取った場合、
司法書士に善管注意義務違反が問われることになる。


しかし実際の同時決済取引において
原本を現地で初めて受け取った場合
その場で、そのチェックをすることはできない。
司法書士は、不備の可能性のある書類をもって
取引を継続させることができるのか?



日本司法書士会連合会は、コンビニ交付証明書の取扱いについて、
平成22年2月1日付日司連発第1741号で
「円滑な不動産登記事務を遂行するにあたり,
かなりの困難性が生じる可能性があり,
事務取扱いについては,現在検討中」としているが
未だ具体的な結論は出ていないようである。

結論としては、事前準備が重要となると思われる。(以下は私見)

1 事前に役所で交付された証明書を持参するように促す。
2 コンビニ交付証明書による受任は受けられない旨確認しておく。
3 コンビニ交付証明書を持参されたときは確認作業のための
時間及び(場合によっては)費用を要することを確認しておく。
 


不意に売主がコンビニ交付の印鑑証明書を持参してきた場合の方策


個々の判断によるしかないが
印鑑証明書が本人の意思確認のための手段である以上、
面前での本人確認意思確認が最重要である。
その意味で書面審査しかできない登記官とは異なる。
本人から直接手交される証明書であれば
偽造改ざんされている可能性は限りなく低く
かつ万が一にも書類の不備があった場合にも
損害の発生が回避できる可能性が大きいので
その辺から、証明書を精査したうえで
前向きに判断してもいいのではないだろうか。


一切受任を受けられないという判断も可能だが
その場合には、当該英断をした司法書士が
当事者から融通が利かないなどの批難を受けかねない。
もし、そうした判断が適当だというのであれば
司法書士会連合会か書士会など上位団体から公に向けて
コンビニ交付証明書を登記の申請に用いることを
控えてもらう旨の発信をするとか、
不動産協会(?)のような機関と協議して
一定の取り決めをするなどしてほしいと思う。















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