登記もろもろ覚え書

司法書士の覚え書き

原本還付請求について

2013-03-13 | Weblog

登記を申請する際には、
いろいろな書類を添付情報として添付する必要がありますが、
代表者事項証明書や履歴事項証明書、
登記原因証書たる契約書や各種証明書等のように
当事者が原本を保管する必要があるものや、それを欲するものについては
原本の還付(返還)を請求することができます。

※登記義務者の印鑑証明書や、当該登記申請のためのみに作成された書面は
原本還付を請求することができません。


その手続きは、次のようになります。

1 必要となる書類のコピーを作成
2 コピーに「原本と相違ありません」旨記載
3 申請書に押印した人が記名押印及び割印
4 当該コピーを原本とともに提出

※さいたま地方法務局管内では
商業登記においては申請受付時に、
不動産登記においては登記完了時に還付されます。


* * *

ところで、原本を還付したい書類によっては
その枚数がかなり多くなることがあります。

当事務所では、通常は原本全部をコピーしているのですが
今回取り扱った件では、
抵当権移転登記の合併を証する履歴事項証明書が20枚もあったので
さすがに登記所に相談してみたところ
合併を証明できる部分だけで良いということでしたので
商号区と会社履歴区及び登記官の認証の部分だけをコピーして
「原本の一部と相違ない」旨の奥書をし、登記を完了しました。

つまり、
添付情報として登記所に提示する書類は
当然原本全部でなければならないが、
その原本の完全性をを登記所において確認できれば
実際に添付するのは、証明したい部分を含む一部分でも足りる、
ということでしょうか。


・・・と、勝手に理解していたら
不動産登記規則55条2項に
「原本と相違ない旨を記載した謄本を提出しなければならない」
という規定を見つけてしまいました・・・。


現在、原本の一部の写しでも良い、みたいな先例をさがしています。




* * *

とりあえず商業登記に関して次のような先例があったようです。

昭和52年11月4日民事4第5546号民事局第4課長回答
商業法人登記申請書に添付すべき議事録と相違がない旨を記載した謄本に代え、
当該登記申請に不必要な部分の謄写を省略した議事録の抄本を添付した場合でも、
便宜原本還付の取扱をして差し支えない。

http://www.geocities.jp/teio_n1976/hanrei/sho_toki/007.html
上記参考にさせて頂きました。

この先例は、商業法人登記の議事録に関するものですが

「添付書類の要求される趣旨、すなわち登記諸事項が事実と符合
することを担保する目的からすれば、申請事項の審査に際しては、議事録の記載内
容のうち当該申請書の記載事項に照応する部分についての確認・照合が必要なので
あって、当該登記申請に直接関係しない部分を不必要として省略した「抄本」であっ
ても、登記事項が事実に符合することの確認が十分出来る限り、議事録はその添付
書類としての機能、役割を十分果たしていると見ることができる。そう考えると、
議事録の「抄本」が添付された場合でも、便宜原本還付の取扱いをすることに問題は
ないといえよう。」

と解説されています。
この理は不動産登記においてもあてはまりうるものであって、
少なくとも、
法文に「謄本」とあるからといって必ずしも「抄本」を許さないわけではない、
ということがいえます。